2012年6月9日 (土) 掲載

◎大沼の堆積物から火山性物質の層 1640年の大噴火関連と推定

 東アジア地域の気候変動を調査している日本、中国、韓国の研究チームが8日、道教育大学函館校で七飯町の大沼湖底から採取した堆積物を分析し、火山性物質が含まれた厚い層を発見した。この層は地下約2・5b地点から3b地点まで50aほど続き、この時期に大きな火山活動があったと推測される。研究者らは「1640年の大噴火に関連するものに間違いないだろう」としている。

 試料は5、6両日、大沼や小沼の4地点で採取。このうち、3地点では地下3b以上は掘り進むことができず、大沼北岸に近い水深の深いところの1カ所のみ、地下4bまで到達することができた。

 この4メートルまで掘削した試料を調べたところ、地下2.5〜3メートルの部分に火山性の物質が層になって続いている場所が見つかった。白っぽい火山灰の層と黄土色の層が数_単位で繰り返され、間には大沼固有の堆積物が黒い筋となって含まれていた。この層が始まる手前からは、4aほどの火山噴出物(スコリア)が見つかり、「ここが噴火の始まりでは」と研究者らを驚かせた。

 この層の前後には、大沼固有の層が続いていたが、堆積の仕方に違いがあるといい、金沢大学環日本海域環境研究センターの長谷部徳子准教授は「噴火の前後で大沼に環境の変化があった可能性がある」と話す。

 函館校の鴈澤好博教授や紀藤典夫教授は、地表に降り積もり、雨などで湖に流された火山灰が層を形成したとみているが、駒ケ岳の噴火には軽石が多く含まれることから、「軽石の層が出てもいい」と指摘。鴈澤教授は「この層は1640年の大噴火のものと考えてもいいだろう。軽石の層がないことは、1640年の場所に達していないか、さらに古い場所まで掘り抜いたということの2通りが考えられる」と話していた。

 今後、堆積物に含まれるプランクトンや放射性炭素年代測定などで、詳しい分析を行い、気候の変動や大雨などの災害発生の周期などを調べる。 (今井正一)



◎護衛艦「ひゅうが」 巨大艦に市民びっくり

 海上自衛隊の護衛艦「ひゅうが」(1万3950トン)の一般公開が8日、函館市の港町ふ頭で始まった。全長197メートル、幅33メートルの巨大艦の甲板に大勢の市民らが訪れ、搭載ヘリコプターなどの見学を楽しんだ。

 「ひゅうが」は2009年3月の就役で、海上自衛隊がこれまでに保有した護衛艦の中で長さ、排水量とも最大。函館港入港は10年8月以来。ヘリは最大で11機を搭載できる。指揮通信能力に優れ、東日本大震災では被災地に救援物資を輸送した。

 甲板には潜水艦などを探索する哨戒(しょうかい)ヘリコプターなどを展示。ヘリは実際に座席に座ることもでき、列を作り貴重な体験をしていた。また、隅々まで歩き、搭載されている機関砲やレーダーに見入り、装置の役割などを熱心に質問する人も見られた。市内日吉町の自営業、安田昭吉さん(54)は「とても大きく驚いた。隊員の説明が丁寧で頼もしかった」と喜んでいた。

 「ひゅうが」の公開は9日午前9時から午後1時半まで行われる。事前申し込みは不要。  (山崎純一)



◎ふるさと納税増加 昨年度484万

 函館市がまとめた、昨年度の「ふるさと納税制度」の寄付金は54件、484万6000円だった。制度が始まった2008年度から減少が続いていたが、大口の寄付者が増えたことで、前年度から7件、154万円増加している。市財務部は寄付者に対し、協力の継続を呼びかけていく。

 ふるさと納税は地方税法の改正に伴い、08年に制度化。好きな自治体に5000円以上を寄付すると、現在住んでいる市町村の住民税、所得税から寄付額が控除される。

 昨年度贈られた寄付金は、函館市全体を応援する目的で寄せられたのが282万円と、全体の半分以上を占めている。使い道を指定した項目では、観光や商工業の振興に115万円が寄せられ、昨年度から始まった「元気いっぱい商店街等支援事業」の運営経費に活用した。

 人材育成や生涯学習の推進には16万円が寄付され、若者の技術、技能習得に向けた「ものづくり匠塾」の開催に充てた。このほかでは「すくすく手帳」の発行やフラワーバスケットの設置、地球温暖化対策推進事業などに使われている。  過去3年間の件数と金額は、制度が始まった08年度が90件、517万7000円で最も多かったが、09年度は54件、474万5000円、10年度は47件、330万1100円と減少していた。昨年度は最高額の100万円の寄付が2件あったほか、10万円以上の寄付が前年度比4件増の11件と多かったことが特徴として挙げられる。

 市は寄付者に対し、お礼の文書を送付して寄付継続を呼びかけるほか、記念品を贈呈している。PRパンフレットは市内観光施設のほか、昨年東京にオープンしたアンテナショップでも配布するなどし、観光客らの目に留まりやすい場所に置いていく考え。市財務部は「高校の同窓会の集まりにパンフレットを配るなど、地道な活動を今後も継続していきたい」と話している。 (千葉卓陽)


◎道経営改革案 HAC函館—旭川線休止へ

 北海道エアシステム(HAC)の経営再建問題で、道は8日、収益性の低い函館—旭川線と丘珠—女満別線の2路線を休止する経営改革案を示した。一方、採算性の高い函館—丘珠線は増便も検討。函館—奥尻線など離島路線は維持する。11日に道庁幹部が経過説明や意見聴取のため、函館市など関係自治体を訪れる。 改革案によると、現在の3機以上の増機は難しく、3機体制の機材繰りでは「減便や路線の休止は避けられない」と指摘。旭川線については今年に入り、利用率が20%前後と低迷していることから、「収益上の観点を踏まえ、いったん休止せざるを得ない」と結論付けた。

 函館—旭川線はHACが新体制となった昨年6月から、土日、祝日に1往復運航。HACによると、昨年6月から今年4月までの平均搭乗率は33%で、5割強とされる採算ラインを大きく下回る。今年の利用率は1月23.3%、2月17.7%、3月18.9%と落ち込みが続いている。

 一方、基幹路線として1日5往復している函館—丘珠線については「収益路線であり、増便を検討すべき」と判断。昨年6月から1往復増便され、今年4月までの平均搭乗率は58.2%と好調に推移している。函館—奥尻線は「路線の維持は大変重要。HACによる運航継続が適当」とした。

 函館市港湾空港部は「地域にとって影響は大きいが、市民の利便性や出資自治体としての考え方を整理しなければならない問題で、慎重にならざる得えない」と話す。11日午前にも道建設部の幹部2人が函館市役所を訪れ、片岡格副市長に改革案の概要を説明し、関係自治体として意見を聴いたうえで、13日にも最終報告書をまとめる。

 市は現在、HACに対して5%にあたる約2800万円を出資。今後、HAC路線が消滅する旭川市や女満別空港の周辺4市町が出資から手を引けば、その他の関係自治体の負担が増える可能性もあり、今後も難局が予想される。改革案では外部監査法人の再生計画で示された丘珠—三沢(青森県)線も「就航を検討すべき」と明記した。(森健太郎)


◎航空連合 日本担当者が函館集結 

 世界最大の航空会社の企業連合「スターアライアンス」の日本担当者が集まり、事業戦略などを話し合う「CSCミーティング」が8日、函館市湯川町1のホテル平成館海羊亭で開かれ、函館市の観光担当者が市内の観光名所などを売り込んだ。

 会合は年2回、同航空連合に加盟する各社の日本支社、支店のトップらが事業展開など協議する。今回は全日空函館支店が主管し、道内で初開催。中国やドイツ、シンガポールなど世界各国10社の日本支社・支店長ら17人が参加した。

 会議では布谷朗市観光コンベンション部長がフランスの観光ガイド「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」で函館山の眺望が最高評価の三つ星を獲得したことなどを紹介し、「それぞれの国で四季折々の函館の魅力を発信してほしい」と呼びかけた。

 参加者は西部地区の教会群や港まつり、見晴公園の紅葉など函館の観光PR映像を鑑賞し、箱館五稜郭祭で再現された箱館戦争の戦闘シーンが映ると、欧米出身の参加者から「サムライ!」と歓声も上がった。

 参加したスイス航空の岡部昇日本支社長は「函館は夜景や食など多くの素材があり、どれもクオリティーが高いが、ブランドネームでは札幌に劣る。海外に向けてもっとPRすれば可能性は大きい」と話していた。(森健太郎)