2012年7月26日 (木) 掲載

◎イワガキ 奥尻の特産に 若手漁業者 養殖事業に本腰

 【奥尻】奥尻町の若手漁業者が、まちの新しい特産にとイワガキの養殖試験に本腰を入れている。天然のイワガキは南方の暖流を好み、道内での生息は難しいとされていたが、奥尻近海に一定の割合で根付いていることを道総研栽培水産試験場(室蘭)がDNAを調べて突き止めた。養殖事業には奥尻地区水産技術普及指導所や桧山振興局も全面協力しており、漁業者らは「ウニやアワビと肩を並べる日が来ると信じながら、地道に活動を続けたい」と意気込んでいる。

 イワガキは主に本州・日本海側の温暖な海域に生息し、マガキに比べて大ぶりで味も濃厚だという。奥尻では、比較的深い水域に生息し、推定で2〜3万個の天然ものが数カ所に群生しているとみられているが、地元でも流通することのない「幻のカキ」とされている。

 奥尻には少なくとも4種類のカキがいる。見た目で種類を判断するのは難しいため、同試験場が昨秋、DNAを調べてイワガキであることを確認していた。道内で天然のイワガキがまとまって生息しているのが確認されたのは初めて。

 専門機関の“お墨付き”をもらったことで、道内唯一の産地に育てたい考え。ひやま漁協青年部奥尻支部(小浜洋介部長、14人)は昨夏、天然イワガキを採取。同試験場が10月、種苗をホタテ貝に付着させることに成功させた。今年5月には、同青年部が種苗付きのホタテ原盤で試験養殖に入った。本州では3年ほどで出荷となるが、奥尻の水温の低さなどを考慮すると「3年以上の時間が必要になるかもしれない。全てが初尽くしで試行錯誤しながら挑戦していく」(関係者)という。

 桧山振興局水産課によると、国内では1992年から島根県で養殖が始まっているが、流通量は少なく希少性がある。道内では冬場に流通することが多いマガキと違い、イワガキの旬は夏場で「地域振興を盛り上げる最高の存在」(同課)と期待する。今年4月1日には高橋はるみ知事が奥尻を視察した際、青年部メンバーを激励した。

 今月14、15の両日、町内で開かれた室津祭りでは、観光客や町民の声を参考にしようと、蒸しガキ大サイズ120個を販売した。

 今後は、養殖試験を通して得られたデータの収集・分析に入り、一定の道筋を見極めて販路拡大などのPRにも積極的に取り組みたい考え。(田中陽介)



◎預かった通貨や証券「持ち主のもとに」函館税関

 函館税関は、終戦後に海外からの引き揚げ者から預かった通貨や証券などの返還を進めている。終戦から67年が経過し、持ち主がすでに亡くなっている場合が多く、全体の約3割しか返還が進んでいない。同税関では「請求は家族でもできるので、心当たりがあれば問い合わせてほしい」と呼び掛けている。

 返還の呼び掛けは終戦日が近くなる毎年7、8月に行っている。保管しているのは、税関などが樺太や旧満州から引き揚げた人から預かった証券や通貨など。連合国軍総司令部(GHQ)がインフレ防止のために、国内への持ち込みを制限。一定額を超えたものを税関などが預かった。

 同税関には昨年1年間で108人から照会があり、12人に30件を返還した。ただ、現在も1万8916人分、8万3728件の証券や貯金通帳、通貨などの持ち主が見つからないまま。保管状態はいずれも良好だが、「戦後、年月が経っているので、照会者、返還者とも年々減少傾向」(同税関)という。

 返還請求は本人のほか親族もできる。預かり証がない場合でも、名前や上陸港が分かれば、持ち主を特定することが可能。同税関では「資産的な価値はないが、当時苦労して持ち帰ったものでもあり、思い出の品として一人でも多くの人のもとに返したい」と話している。問い合わせは同税関電話0138・40・4244。(松宮一郎)



◎夷酋列像 函館でも公開

 フランス・ブザンソン美術考古学博物館所蔵で、松前藩家老の蠣崎波響がアイヌ民族の指導者を描いた「夷酋(いしゅう)列像」の特別展示が25日、道立函館美術館で始まった。待ちわびた関係者や市民が訪れ、精密に描かれた肖像画に見入った。9月9日まで(月曜休館)。

 函館市では1988年に初の“里帰り”をしており、同館では91年に続いての展示。ブザンソン市のジャン・ルイ・フスレー市長、同博物館のエマニュエル・ギゴン館長らがテープカットをし、公開を祝った。ブサンソンで発見された11枚のほか、函館市中央図書館所蔵の2枚も公開されている。

 来館者は着物の紋様や髪の毛の美しさに「どうやって描いたのだろう」と驚き、「なぜフランスに渡ったかが本当に不思議」などと話していた。市文化団体協議会の宍戸雄一会長は「初めて見ることができた。持っている刀などから、描かれている人物像について想像していた」と話していた。

 問い合わせは同美術館電話0138・56・6311。(山崎純一)


◎五稜郭に「まちづくり会社」設立 「民」主導で活性化策

 函館市の本町・五稜郭地区の活性化に向け、周辺の商店主らでつくる新都心五稜郭協議会は、まちづくり会社「株式会社まちづくり五稜郭」を設立した。市が進める中心市街地の活性化策とも連動し、民間の活力で人が集まる仕掛けづくりや、回遊性を高める取り組みを本格化させる。

 五稜郭地区のまちづくりを考える同協議会の内部組織「やっぱり五稜郭プロジェクト」(小笠原勇人リーダー)が発起人となり、24日付で法人登記。プロジェクトに携わった6個人・企業が資本金500万円を出し、社長には青田基函館アポロ商会社長(49)が就いた。

 同プロジェクトでは昨年秋に市民や学生を加えて、計3回にわたり五稜郭地区の課題や展望を話し合うワークショップを開催。今年1月には工藤寿樹市長に活性化策をまとめた提言書も提出し、「まちづくり会社」の設立を柱の一つに盛り込んでいた。

 新会社は、交通結節点としての五稜郭地区の特性を生かし、若者から高齢者まで集いやすい「回遊性の高いまちづくり」が基本方針。喫緊の課題である旧グルメシティ五稜郭店などの空き店舗の活用をはじめ、周辺地区を巡る循環バスの運行や、市民に生涯学習の場を提供する「はこだて五稜郭大学」の創立などを目指す。

 青田社長は「行政に頼らない『脱補助金』のまちづくりを進め、事業の収益を地域に還元し、人と人とをつなぐプロデュース型の会社を目指したい」と意気込む。市経済部も「官ではできない地域の盛り上げに期待し、市も全面的に協力したい」とし、今後、出資協力する考えも示した。

 市内でのまちづくり会社の設立は、2000年に発足したJR函館駅前・大門地区が主体の第三セクター「はこだてティーエムオー」に次いで2社目。8月中にも設立総会を開く予定。(森健太郎)