2012年8月14日 (火) 掲載

◎太平洋戦争の記憶伝える産業遺産 アーチ橋「蓬内橋」解体へ

 旧国鉄戸井線の遺構で、函館市の市道として使われていたアーチ橋「蓬内橋」(よもぎないばし)(瀬田来町)が、12月に解体される。老朽化に加え、津波が到達した際の避難路整備の観点から市が解体を決めた。太平洋戦争の記憶を現代に伝える産業遺産として貴重な存在だけに、関係者からは惜しむ声が上がっている。

 蓬内橋はコンクリート製の三連橋。長さ36.8メートル、幅3.1メートルで、戸井地区に4カ所あるアーチ橋のうち、唯一市道として利用されてきた。

 しかし、幅の狭さから消防車など大型自動車が通行できず、近くの高台には瀬田来町会館が存在する。昨年度、国道278号から高台につながる市道が開通した点も踏まえ、町会館への安全な避難路を確保する面から解体し、新しい橋に架け替える。

 蓬内橋はすでに通行止めとしており、市土木部は「建設当時、鉄筋の代わりに竹が使われた可能性もある。旧戸井町時代から不安の声が寄せられており、安全面での不安が大きい」と説明する。

 函館市史などによると、旧戸井線は1937(昭和12)年、津軽海峡防備のため、砲台までの軍需資材や兵員輸送を目的に着工。五稜郭と戸井を結ぶ約29`の単線鉄道として建設が進められたが、43(昭和18)年、戦局悪化で資材不足に陥り工事は中断。戦後も工事は再開されず、一度も使われることがなかったため「幻の鉄道」といわれる。

 市土木部は「解体に際して材質を分析し、今後の参考にしたい」とする一方、元函館産業遺産研究会会長の富岡由夫さん(87)は「費用は掛かると思うが、ほかに道路を作るなどしてできれば残してほしい。仮に解体されても、ほかのアーチ橋は保存を進めてほしい」と話す。 (千葉卓陽、後藤 真)



◎チーム・コンデンサーが初代王者 ジュニアロボコン

 ロボットフェス・インはこだて市民の会(山田俊幸会長)主催の「ジュニアロボットコンテスト2012」は最終日の13日、函館工業高等専門学校(戸倉町)で自作ロボットカーによるレースを行った。市内の小学4〜6年生14人が4チームに分かれて出来栄えを競い、チーム・コンデンサーが初代王者に輝いた。

 子どもにものづくりの魅力を伝えようと初開催、4日間にわたり同校の電気電子工学科と機械工学科の学生が指導した。製作したのは光センサーを搭載、単三乾電池4本で動く高性能ロボット。

 コースは北海道をかたどった1周約2・5b。マシンが黒い線を感知しながら自動走行、チームの中で1周の最も早いタイムを採用した。

 順調に走行したり、途中でコースを外れたりとレースを見守った子どもたちは悲喜こもごもの様子だった。

 優勝したコンデンサーの選手は巌翔真君(道教育大附属函館小6年)、田代壮佑君(湯川小6年)、高村真碧(鍛神小5年)、堀岡璃久君(東山小4年)。決勝でベストラップ23・8秒を出した田代君は「うれしい。調整がうまくいったので、いいタイムが出せたと思う」と話していた。 (山崎大和)



◎サブちゃんお帰り! 知内でイベント芸道50周年祝う

 【知内】14日に知内川河川敷特設会場で開かれる「サマーカーニバルin知内」に出演する町出身の演歌歌手、北島三郎さんの芸道50周年を記念した前夜祭が13日、町内で開かれた。町民ら約1500人がパレードや沿道から歓声を上げ、節目を祝った。

 雨がやまず開催も危ぶまれていたが、町民の祝賀ムードに天候も押され、絶好の祭り日和となった。町元町町内会館から北島さんの実家前まで行われたねぶたパレードには、知内高校野球部などを中心とした200人が跳人(はねと)として参加。ねぶたばやしを先頭に「ラッセーラー」と威勢の良い声を上げながら練り歩き、沿道の町民は芸道50周年を祝う旗や横断幕で喜びを表現した。

 実家前で北島さんやファミリーの小金沢昇司さん、北山たけしさん、大江裕さんらが登場すると、「サブちゃん」と大きな歓声が沸いた。北島さんは「知内の愛と支えを頂きながら50年を迎えることができた。いつも心の中に古里がある」と、感謝の気持ちを伝えた。最後は花火が上がり、熱気は最高潮に達した。

 14日には北島ファミリーらが出演する歌謡ショーが午後7時半ごろから行われる。(小杉貴洋)


◎道南の食 全国、世界へ 元函館市副市長の谷沢さん農水産物流通の財団法人設立

 元函館市副市長の谷沢広さん(63)が、道南の農水産物を全国や海外に流通させる一般財団法人「北海道食品開発流通地興(ちこう)」を立ち上げた。地元企業と提携してすでに業務を開始。「函館や道南で採れた産品を広く紹介し、地元生産者の販売ルート開拓につなげていきたい」と、新たな分野への挑戦に心を躍らせている。

 北ガスの函館支店長を務めていた谷沢さんは2007年、民間から初めて副市長に起用され、主に企業誘致や観光振興などを担当。昨年4月の辞任後は再就職せず、これまでの経験や人脈を生かして企業同士をつなげるボランティア活動を、個人で続けていた。

 副市長在任時から今後の人口減を見据え、「一次産業の生産者が次世代に引き継げるようにならないかと考えていた」(谷沢さん)といい、新たなビジネスパートナー探しに着手。市内でレストランや海産物発送を手掛けるサンフーズ(小林真実社長)と業務先の紹介などに取り組み、周囲からの後押しを受けて今年6月に法人登記を済ませた。

 サンフーズが市場で買い付けした海産物をはじめ、地元産の農産物、畜産物を東京や香港の高級ホテル、大手飲食店に空輸しているほか、地元で流通する鮮魚情報の配信などを展開。また、災害時の非常食の需要に着目し、電気や火がなくても水を注ぐだけで温かいご飯が食べられる商品も今後販売していく。

 市内松陰町に事務所を設置。理事、評議員ら9人体制で業務を始め、谷沢さんは代表理事に就いた。「北海道の食材は安全、安心で評価が高い。地元の生産者が自走できる仕組みを作り、食を通じていずれ観光に来てもらえるように取り組んでいきたい」と話している。  (千葉卓陽)