2012年8月19日 (日) 掲載

◎魅力たっぷり 国際科学祭開幕

 多彩なイベントや実験などを通して科学の魅力を伝える「はこだて国際科学祭」(サイエンス・サポート函館主催)が18日、五稜郭タワーで開幕した。初日はサイエンスライブや一般参加型の「科学屋台」などが開かれ、多くの市民が楽しみながら科学の魅力に触れた。26日まで。

 五稜郭タワーを中心に市内各所で開催し、今年で4回目。

 科学屋台ではプランクトン作りや大学の先生芸人「黒ラブ教授」のライブが行われ、観客を科学の世界に引き込んだ。プランクトンの一種、カイアシ類について「肉食と草食があり、食べ物の食べ方が違う。頭から左右に長い2本の触角があるのが特徴」と紙芝居で紹介した後、紙粘土を使ってプランクトン作り。実際にプランクトンを目にした子どもたちからは「すごい数だね」と驚きの声が上がっていた。

 黒ラブ教授のプチライブでは物理や分子生物学、恋愛物理学などを題材に、コミカルに授業ネタを展開。身近な言葉を踏まえながら科学について紹介し、観客を楽しませていた。

 サイエンス・サポート函館の美馬のゆり代表は「子どもから大人、素人から専門家まで楽しめるプログラムを用意しています」と来場を呼び掛けている。19日はドライアイスを使った実験のほか、コマや音をテーマにしたサイエンスショー、黒ラブ教授のお笑いライブなどが開かれる。問い合わせはTEL0138・34・6527(事務局)(平尾美陽子)



◎ゆく夏彩る3000発 湯の川温泉花火大会

 函館の夏祭りの最後を飾る「第47回湯の川温泉花火大会」(実行委主催)が18日、函館市湯の川温泉街で開催された。メーンの花火大会をはじめ、源泉をみこしで運び、湯倉神社(湯川町2)に奉納する「献湯行列」や、「灯籠(とうろう)流し」などが行われた。

 祭りは地域を支える源泉を湯倉神社に奉納する献湯行列で開幕。湯元ホテル入川(湯川町3)から同神社まで、約70人の担ぎ手が大きな掛け声で威勢よく練り歩き、沿道に駆け付けた地域住民や観光客から多くの声援を受けた。

 午後6時45分からは松倉川で灯籠流し。約500個の灯籠が松倉川に放たれ、周辺を幻想的な光で彩った。クライマックスの花火大会は同7時45分に開始。おなじみのイカ花火など約3000発が夜空に大輪を咲かせ、詰め掛けた約5万人(主催者発表)の観覧客を魅了した。家族5人で訪れた函館市陣川町の三浦憲子さん(63)は「毎年楽しみにしている。打ち上げの場所が近いので迫力がすごい」と話していた。

 祭りはこれまで「はこだて湯の川温泉いさり火まつり」として行われてきたが、人気の花火大会を前面に出そうと、今年から名称を変更した。(金子真人)



◎企画【JOMON第3部・岩手県平泉を訪ねてD】中尊寺通り 和の風情

 「少し休んでいこうよ」。レンタサイクルに乗ったカップルが足を止め、ベンチに腰掛ける。休み所には水車やあんどんが飾られ、和の風情が漂う。「雰囲気あるよね」。うちわを扇ぎながら、旅話に花を咲かせている。

 観光客らが行き交う「中尊寺通り」。道を少し歩くと、道路で工事が行われていた。「電線を地中に埋めるための調査をしているんです。いつかこの通りが生まれ変わればいいですね」と、中尊寺通りまちなみ整備検討会作業部会座長の小野寺郁夫さん(59)。

 現在、通りの所々に空き店舗があり、寺の境内とうって変わって活気は見られない。かつての「和」にあふれた古都・平泉らしい空間に戻りつつあるものの、「まだ理想には遠い」というのが関係者の見方だ。

 小野寺さんは「通りがよみがえるのはこれから。少しずつ世界遺産の町らしい景観にして、多くの人にここを歩いてほしいですね」と夢を語る。

 町全体に活性化を—。世界遺産と共存するまちづくりに向け、登録後も模索が続いている。

 世界遺産にふさわしい景観にしようと、平泉町は2004年に全国初の町全域を対象とした景観条例を制定。その後、1級建築士の資格を持つ小野寺さんら官民が協力して、中尊寺通りの景観整備に着手した。

 住民は自主的に休憩所をつくり木製のベンチを置いたほか、「中尊寺通り」と書かれたあんどんも設置。自販機を格子で囲む工夫や、景観を損ねる廃屋の解体をボランティアで行った。

 しかし、空き店舗は一向に減らない。金色堂などがある中尊寺には観光バスや車で行くケースが多く、通りが通過点となっているためだ。そのため、歩いても楽しめる魅力的な空間を官民一体でつくることが課題となっている。

 現在は少しでも景観を向上させようと、電線の地中化に向けた発掘調査を実施。調査後は、参道につながる神聖さを醸し出すため、道路をアスファルトから石張りに替える工事に着手する。いずれも5〜6年後に実現する予定という。

 整備を始めた当初、住民からは反対の声も多かった。「アイデアを出したとき、何やってくれんのや、とも言われた」と小野寺さん。しかし08年の登録延期をきっかけに住民の意識に変化が起き、今ではまちづくりに向けた官民の一体感は確実に増している。

 小野寺さんは「今は誰も文句を言う人はいない。今後も行政と良い関係を築きながら通りを復活させ、町全体を活性化させていきたい」と目を輝かす。通りで70年前から営業する老舗菓子店「こがねや」の小野寺潤子さん(60)は「あともうひと息で、通りがきれいになる。できる限り協力したい」と話す。

 街並み整備のほか、今後は構成資産の保全も一つの使命となる。世界遺産の意義はそこにある。

 平泉はユネスコ世界遺産委員会での登録決議に当たり、▽金鶏山とほかの仏堂・庭園間の眺望を維持すること—といった要請を受けた。建築物の高さを10メートル以下とする景観条例などを生かし、世界遺産との共存を目指していく。平泉町の菅原正義町長(58)は「世界の遺産ということを胸に後世に引き継いでいきたい。東日本大震災からの復興に寄与することも我々の使命だ」と気を引き締める。

 そして、何よりも必要なのは地元の足固めと、確かな理解だ。

 中尊寺仏教文化研究所所長の佐々木邦世さん(70)は言う。「地元の人々はその遺産の価値を知らなければならないし、行政もオープンにしながら物事を進める必要がある。官民一体となることで、その価値が地域のものとなり、世界のものとなる」(第3部終わり)

 ◆中尊寺通り…中尊寺とJR平泉駅を結ぶ約1・4キロの県道。江戸時代には奥州道中と呼ばれた主要街道で、俳人の松尾芭蕉が「奥の細道」で歩いたとされる。無料の休憩所が数カ所設置されている。


◎新規店舗参入、各種イベント……今夏の大門 活気戻る

 函館市の繁華街、駅前・大門地区は今夏、新規店舗の参入やイベント開催による集客増で、ここ近年にない活気を見せている。昨夏は東日本大震災が影響し、飲食店や宿泊施設で入り込みに苦戦した経緯があるが、今夏はその影響を脱し、例年以上の実績を上げているところも。かつてのにぎわいを取り戻すきっかけとなるのか、地元業者には期待感が芽生えている。

 WAKOビル(若松町20)は、東急ハンズのフランチャイズ(FC)店「トラックマーケット」開店が市民の集客増に貢献している。7月の同ビル来館者は前年比10万人増の約270万人となった。

 また、7月から8月にかけて大門ジャズや大門合同学生祭、港まつりなどイベントが目白押し。ミッキーマウスらディズニーキャラクターが登場した8月2日のワッショイはこだての時はピークに達し、「8月の入館者も昨年より多くなりそうだ」(同ビル)と話す。

 はこだてティーエムオー(TMO)が運営する函館ひかりの屋台「大門横丁」(松風町、26店舗)の7、8月の入り込み客数は「前年並み」で推移。昨年は震災の影響などもあり、7月が前年比6%減、8月が同2%減だった。入り込み数や売上高は月遅れで集計されるため、今年のデータはまだないが「この夏は地元客が増えているようだ」(同社)と手ごたえを感じる。

 お盆休み期間中の10〜16日にグリーンプラザで初開催したビアガーデンが盛況。同社は「ビアガーデン終了後の午後9時以降に横丁に流れた客も相当いたのでは」と分析し、「今夏は雨天が少なく、観光客らが飲食店に繰り出しやすい環境となっている」とし、一層の集客を狙う。

 地区内の宿泊施設も軒並み昨年の実績を上回り、ロワジールホテル函館(若松町14)は今年6〜8月中旬までの宿泊客数、レストラン利用客が昨年同期の約10%増。例年ベースも上回る実績といい、同ホテルは「この時期の観光客の入り込みが復活したのが大きい。このままの状態を維持し、冬の観光シーズンを迎えたい」(企画広報室)としている。

 今年6月に現在地に移転した青果店「箱館夢八商店」(松風町6)は6月と比べ、行事の多い7、8月の売り上げが好調。同店は「常連以外の客が来店している。イベントをきっかけに地域が盛り上がれば」としている。

 一方で、このにぎわいが必ずしも地域に根付いた商店街や小売店の実益につながっているとは言い切れない。8月の売り上げが落ち込んだという老舗店の店主は「現状はシャッターを閉じる店が増える一方。時期やイベントに関係なく人が行き交ってほしい」と、かつての輝きを願う声も聞かれる。(鈴木潤、山崎大和、長内健、柏渕祐二)


◎同志社大 八田学長インタビュー 医学部新設に最大限努力

 学校法人同志社(京都)の理事長で同志社大の八田(はった)英二学長が18日、函館新聞のインタビューに答え、函館市の医学部新設打診について「医学部は新島襄の強い希望でもあり、機会があれば最大限つくる努力をしたい」と意欲を表明した。医師が多い西日本での設置は困難で、東日本の自治体と連携する以外に手立てはないと指摘、函館は「(候補地の)一つとして可能性はある」と述べた。

 八田学長は「第30回函館キャンプ」に参加するため、17日夜に来函した。

 学内での検討状況について八田学長は、「(法人の)理事会主導で情報収集している。いくつかの自治体から問い合わせがあり、函館を含め希望を聞くだけの段階。同志社としてどうこうするということを、まだ検討を始めていない」と述べ、国の設置基準や政治判断などを見極める必要があると強調した。

 工藤寿樹市長が2回、京都を訪れて懇談したことに触れ、「市立函館病院を連携病院とすることや、駐車場の土地提供の用意があるという話は受けている。ただ、このままいけば、同志社が医学部の建物を造ることになるだろう。100億円ぐらいは必要になる」との見方を示した。医師を地元に残すための奨学金制度も必要と指摘した。

 財政問題に関し「(自前の)病院がいらないのならば、かなり負担は楽になる。他の部分でかかる初期投資について、学内のコンセンサスが得られるかどうかだ」と述べた。

 函館市のほか、東日本のある市からオファーが来ていると明かし、誘致には医師会の動きや政治力が鍵を握るとの見方を示した。(山崎大和)