2012年8月25日 (土) 掲載

◎87歳杉野さん、自転車でイカを売り半世紀

 【江差】江差町姥神町の杉野悦男さん(87)は、今夏も愛用の自転車でスルメイカの行商に精を出している。早朝に「イガ、イガ」と前かごのスピーカーで声を響かせて「朝イカ」を売りさばく。行商の形は半世紀変わらず、「最近は足腰が痛くて自転車が疲れるけど、90歳になるまではやる。毎朝イカを待ってくれている人がいるから」と声に力がこもる。

 杉野さんは江差生まれで、行商は20代後半に両親の水産加工業の足しにと始めた。10年前に73歳で亡くなった妻のサダさんと一緒に生計を立ててきた。現在は本業のすり身づくりの傍らだが「若いころは(サダさんと)二人で朝のイカ売り、昼間にホッケやスケソをリヤカーで売って歩いた。砂利道の中、厚沢部まで行ったこともある。息子3人を育てるために家族みんなで一生懸命だった」と振り返る。

 イカは自宅近くの港で仕入れ、「江差の人は新鮮なイカしか食べない。だから朝イカがなければ、その日の仕事は休み」と妥協を許さない。24日は午前2時に起床し漁船を見て回り、納得のいくイカを見つけたのは同6時だった。

 氷詰めの発泡スチロールにイカを並べ、50年来の自転車の荷台に積んで行商が始まる。JR江差駅前から上野町、本町などを1時間で回る。急な上り坂が続く。全身から汗が吹き出し「あぁ、こえくてゆるぐね(とても疲れる)」と自転車を押す表情がこわばるものの、玄関先から常連の姿がのぞくと「おはよう、いいイガだよ」と笑顔が戻る。

 常連の石川やよさん(84)は「暑い中自転車で頑張っている姿をみると元気をもらえる。今朝のイカも新鮮だった」と満足の様子。

 姥神祭の時期が書き入れ時で、杉野さんは「『父さん元気だったか?朝イカちょうだい』と懐かしい人に声を掛けられるのがうれしくてね」と目を細める。お盆には孫たちにも自慢のイカを振る舞った。「朝イカの刺し身は最高だ。人間は体を動かして汗をたくさんかいて、お腹が減ったらご飯を食べる。これが一番の健康だね」と日焼け顔に輝く汗をぬぐう。杉野さんのイカ行商は10月ごろまで。(田中陽介)



◎函館開建、津波対策で海抜表示シート

 函館開発建設部は24日、管内の沿岸部の国道沿いで海抜を表示するシートの設置を開始した。道が公表した津波浸水予測図の浸水区域内で、同開建管内の約800カ所に整備する。

 東日本大震災を教訓にした津波対策の一つとして、国交省が全国統一の設置方針案を定めた。道開発局や道などで構成する北海道ブロック道路標識適正化委員会で、設置場所を決めた。管内では本年度中に国道5号や228号、278号など9路線に設置する。

 シートは縦30センチ、横50センチで、「ここの地盤は海抜○メートル」と青地に白の文字で書かれ、標識柱などに貼り付ける。初日は、昨年の震災で実際に津波の浸水を受けた函館市若松町から豊川町の国道279号沿い3カ所で作業を実施。降雪の影響を考慮し、地面から1・8メートルの高さに設置した。

 同開建は「歩行者からも車からも見えやすい位置で、普段からどのくらいの高さがあるのかを意識してもらうことで、津波発生時の避難に役立ててもらいたい」としている。(今井正一)



◎市電の未来をデザインしよう、30日に3大学共同でワークショップ

 公立はこだて未来大と東京工業大、多摩美術大の3大学が連携し、函館市電の活性化策を考える「デザインワークショップ(WS)」が27〜30日の4日間、函館市地域交流まちづくりセンター(末広町)など会場に行われる。学生や教授らが函館でフィールドワークを実践し、市民や事業者も参画しながら路面電車の新たな可能性を提案する。

 テーマは「移動の未来」。デザインを専門とする3大学の学生や教授ら約30人が函館に集結し、実際に函館の歴史や文化、街並みなどを現地で取材、調査したうえで、デザインの切り口で市電の存在価値を高めるアイデアを導き出す。

 函館市電が舞台となった背景には、利用者の減少で厳しい経営実態がある。未来大の岡本誠教授は「市民の活動を支える市電の将来は住んでいる人と一緒に考えることが重要」と話し、2010年に未来大が函館で開催したWSに続き、両大に参加を呼びかけた。

 WSは学生2チームのほか、「先生方の実力を知りたい」との学生からの挑戦状≠ノ応え、教授ら主体の1チームの計3チーム。沿線などで現地調査するなどして4日間でアイデアを練り上げ、30日午後6時から、同センターで市交通部職員や傍聴する市民も交えて各チームが発表し合う。

 岡本教授は「デザインはモノからコトへの時代。函館のまちの文脈を知ってもらう中で、新たなデザインの手法を考えたい」とアピール。市交通部も「実現可能な提案はありがたく参考にさせていただき、市電の活性化につなげたい」としている。(森健太郎)


◎市交通事業、経営計画に外部評価

 函館市の交通事業の健全化に向け、2009年度末に策定した「市交通事業経営計画」(第2次、10〜19年度)について、市企業局は本年度から初めて外部委員による各施策の実績の評価、検証を行うことを決めた。経営計画の進捗(しんちょく)状況を外部評価してもらうことで、早期健全化や必要性の高い事業の洗い出しを進める狙い。

 24日に市企業局で開かれた本年度第2回経営懇話会で報告された。本年度から新たに交通事業が同懇話会の審議対象に加わったことから、当面は計画を中間評価する15年度に向け、各施策の成果や進捗度のチェック機能を強化する。

 計画では▽現行路線の維持を基本とする効率的な運行▽魅力あるサービスの提供▽単年度収支の黒字化▽累積赤字の解消—の4つが柱。これらの具体的な対策について同局が事前に内部評価し、計28項目中6項目で「遅れている」「あまり成果が上がっていない」とした。

 このうち低評価だった均一料金制度の導入では、同局の担当者が「震災以降の大幅な収入減や交通料金助成制度の変更で試行調査ができない」と説明。また、電車優先信号の設置は「電車のみを考えた信号調整は難しく、現状では実施困難」と、抜本的な見直しが必要な項目も報告された。

 今後、懇話会の委員から集めた意見、評価を10月までに取りまとめ、年内にも公表する予定。同局経営企画課は「試行錯誤しながらスピード感をもって経営健全化に努め、できるものは次年度以降の事業に反映したい」としている。(森健太郎)


◎全国高専将棋大会、金澤・斉藤さん入賞

 第19回全国高等専門学校将棋大会(函館高専主催)は最終日の24日、ホテル法華クラブ函館(函館市本町)で個人戦が行われた。地元の函館高専は、女子個人戦で金澤智美さん(4年)が準優勝を果たし、男子個人戦で斉藤航輔さん(2年)が3位に入った。連覇を狙った団体戦はAチームが1回戦、Bチームが2回戦で敗退した。

 ともに昨年に続き入賞を果たした金澤さん、斉藤さんだったが、連覇を狙った団体戦が不本意な結果になったうえ、個人戦も優勝を逃し、悔しさを見せる。

 2年連続で準優勝となった金澤さんは「優勝を狙っていたので…」、昨年準優勝の斉藤さんも「ちょっぴり残念」と唇をかむ。

 地元開催とあって高専の選手たちは大会前から意気込みを見せていて、「いつも以上に気合が入った」と金澤さん。来年の大会に向け、斉藤さんは「この大会で見えた課題を克服して再度優勝を目指したい」、金澤さんも「新たな戦法に磨きをかけ、次の大会に結果を残したい」と飛躍を誓った。

 団体戦は津山高専が優勝し、個人戦は男子が中川博人さん(鈴鹿高専5年)、女子が高村咲也子さん(富山高専5年)だった。(鈴木 潤)