2012年8月28日 (火) 掲載

◎市電の活性化 大学生が考察 未来大、東京工大、多摩美術大の学生が現地調査、市民らと意見交換

 函館市電をテーマに学生や市民、事業者らが移動の未来を考える「参加型デザインワークショップ」が27日、函館市内で始まった。30日までの日程で、初日は参加者が街に出てスケッチや聞き取りなどの現地調査を行い、観察から見えてきた発見や課題などを意見交換した。

 公立はこだて未来大、東京工業大、多摩美術大の3大学の学生や教授らでつくる「国境なきデザイン集団」の主催。造形的な「モノ」だけでなく、行動や手法など「コト」をデザインしようと、学生や教授ら約30人が参加し、市電の活性化策を考察する。

 初日は学生2班と教授ら1班の計3班に分かれ、実際に市電に乗ったり、沿線を歩いたりするフィールドワークを実施。参加者は画板を手に気付いた点をスケッチし、電停の乗り場の狭さや乗客同士が心を通わせる様子などを感じ取った。

 同日夜には市地域交流まちづくりセンター(末広町)で意見交換会を行い、一般市民や事業者の市交通部の幹部も交えて議論。「時刻表を気にせず、子どももお年寄りも安心して乗れる」「運転手や乗客同士のコミュニケーションがあり、豊かな気持ちになる」などの意見が出た。

 未来大大学院1年の大槻綾子(りょうこ)さん(23)は「座席からは降車ボタンが高く、後ろ向きで押しにくいことに気づいた。市電の使い勝手の良さを煮詰めたい」と話していた。30日午後6時から、同センターで最終的な意見を発表する。(森健太郎)



◎留学生、トマトジュース作り体験 国際交流夏のつどい

 【北斗】北海道国際交流センター(HIF)主催の「国際交流夏のつどい」に参加し、北斗市内に滞在している留学生8人が27日、農業振興センターでトマトジュース作りを体験した。

 北斗特産のトマトを知ってもらおうと企画し、大野地区の山本宮子さん(59)ら農家のお母さんたち3人が指導した。

 用意したトマトは約30`で、ミキサーに掛けた後、裏ごししたり、鍋で煮込んだりした。出来上がったジュースは500_の瓶に移し替え、40本分の真っ赤なトマトジュースができあがった。

 マレーシアから訪れているウイ・コックトンさん(18)は「トマトジュース作りは楽しかったが、飲むのは苦手。生で食べたトマトはおいしかった。もっと日本語を勉強して、日本の大学に入れるように頑張りたい」と話していた。

 山本さんは「みんな楽しそうに作っていた。ホストファミリーにもお土産として喜んでもらえるのでは」と話していた。(今井正一)



◎磯焼け対策 藻場再生に成果 上ノ国

 道南日本海で深刻な「磯焼け」を改善するため、上ノ国町原歌地区で窒素肥料の海中投入による藻場再生に向けた動きが本格化している。道総研函館水試(湯川町)などの研究で、施肥により簡易な養殖コンブの成長が促進されるなど一定の成果が出てきた。研究を今後も続け、ウニやアワビの餌となるコンブ群落の形成を目指す。

 磯焼けは、沿岸で海藻の群落(藻場)が消え失せて不毛の地となる重大な環境問題。要因として指摘されるのが海の栄養不足だ。そこで、海藻の発芽や成長に大きく影響する秋〜春に、窒素を海中散布して栄養分を補う試験に動き出した。

 道が2009年度から取り組む藻場再生実証事業。研究では施肥のほか、海藻を食べるウニの密度を下げることで効果を検証。既に3回の施肥試験を終え、今年10月〜来年6月に4回目の施肥を行う。

 これまでの試験では、硫安を海水と混ぜて毎時4dを海域に放出。施肥量は窒素分換算で09年度7.7トン、10年度7.5トン。

 09年度の試験では、ウニの密度を下げないと海藻が繁茂しないことが分かり、さらに施肥区では緑藻類を中心に海藻が繁茂した。

 10年度は試験区を広げ、ウニ密度を低くした施肥区(80b×沖70b)と対照区(同)を設置。施肥地点に近い20b四方で緑藻類を中心に海藻の量が増え、施肥の効果が見られた。11年度の試験結果も現在、取りまとめている。

 同水試の赤池章一研究主幹は「海藻の量が増えれば、ウニやアワビの餌も増えて実入り、成長とも良くなる」と強調。簡易養殖施設では、施肥区の方が対照区よりもコンブが大きく育ったが、群落を作り出すには至っておらず、なお課題が残る。

 同町は「磯焼けが解消されれば、沿岸資源の回復が期待できる。試験では良い結果が得られており、かつての漁場を取り戻すことにつながれば」(水産商工課)と期待する。  道によると、後志管内寿都町の海域でも、本年度から磯焼け対策の実証事業に着手している。(山崎大和)


◎ラムサール登録証伝達式 大沼新たな出発

 【七飯】7月に大沼周辺が、水鳥の生息地となる国際的に重要な湿地保全を目的としたラムサール条約の登録湿地になったことを受け、登録証の伝達を行う記念式典が27日、函館大沼プリンスホテルで行われた。関係者らは「きょうが新たな出発の日」と、大きな節目を祝った。

 7月に同条約に登録されたのは大沼、小沼、蓴菜沼(じゅんさいぬま)の周辺1236f。多種多様な生物が生きる環境が、水鳥の貴重な生息地を保全する同条約の国際基準を満たした。道内では13カ所目、道南では初めての登録だ。

 式典には、中宮安一七飯町長や冨原亮道議をはじめ、関係者約100人が出席した。中宮町長は「大沼は身近な憩いの場として親しまれている。素晴らしい環境を次世代に引き継ぐため、世界的に認められたことをよい機会として、多くの方々が自然の大切さや尊さを感じていただくことを願っている」と式辞。

 中宮町長が、環境省の担当者から登録証を笑顔で受け取ると、会場からは大きな拍手が起こった。登録証は今後、役場に展示される予定という。

 大沼ラムサール協議会の金澤晋一会長は「大沼は自然を残していこうと決意した先人の努力が息づいている地」と語り、「ラムサール条約の理念である保全・賢明な利用・学習、交流に尽力する」と力強く決意表明した。(森裕次郎)


◎函館市、チャレンジ計画4件認定

 函館市が独創性のある起業家に補助金を交付する本年度の「チャレンジ計画」に、自家農園産ブドウを使った道南産ワインを製造販売する佐々木佳津子さん(37)、地元特産品を使ったせっけんを製造販売する函館さぼん社長の赤崎佐恵子さん(50)、子育て中の女性向けバッグを製造販売する荒木明美さん(39)、青果店経営などの南北海道社中社長、國分晋吾さん(30)の4人を認定した。

 佐々木さんは市内元町にワイナリーを設けており、北斗市の自家農園で栽培したブドウを使ったワイン作りに取り組む。9月から仕込みを開始し、年内に新種として1万3000本の出荷を目指す。

 赤崎さんは、ガゴメやタマフクラなど函館近郊の特産品を用い、肌に優しい無添加せっけんづくりに着手している。薬剤師の資格を持っており、肌に悩みを持つ利用客へのアドバイスも行っていく考え。

 荒木さんは米国ニューヨークでバッグブランドを設立した日本人デザイナーの友人と協力し、11月の法人設立を予定。母親が外出時に使える「ママバッグ」の製造販売を行い、子育て中の女性らを雇用していく。

 國分さんは市内松風町で青果店を営んでおり、メロン、イチゴ、トマトなど道南で採れた6種類の野菜、果物をピューレに加工する。急速冷凍して味や風味を保ったまま販売し、道南の食を広く発信する狙い。

 同計画は市が2000年から地元起業家を支援しようと実施。本年度は13件の応募があり、市内の有識者でつくる認定審査委員会が事業計画の独自性や新規性を評価。佐々木さんに200万円、赤崎さん、荒木さん、國分さんに各100万円が補助される。交付式で片岡格副市長は「後に続く起業家にも成功例を示せるよう頑張ってほしい」と激励した。(千葉卓陽)