2012年9月11日 (火) 掲載

◎穀物高騰 道南を直撃

 干ばつ被害を受けた米国のトウモロコシや大豆の国際価格が史上最高値を更新し、輸入穀物を使う道南の畜産農家や醸造会社にも影響が広がりそうだ。波及するのは秋以降とみられ、餌代の値上がりは畜産経営を直撃。醸造会社も「大豆製品の値上げは必至」と窮状を訴える。

 「餌代が上がるのは確実。実際に上がってみないと、どれほどの損失になるのか分からない」。七飯町軍川で約1万1000頭の肉牛生産を手掛ける小澤牧場グループの小澤嘉徳社長(68)は表情を曇らせる。

 牛肉生産に欠かせない「配合飼料」は輸入トウモロコシが主原料。グループ全体で1カ月に使う配合飼料は2500トン、金額換算で1億2000万円。生産費に占める割合は6〜7割と群を抜いており、値上げによる経営への打撃が大きい。

 餌代のコストを下げるため、牧草地300ヘクタール、飼料用トウモロコシ110ヘクタールを自社生産。それでも、小澤社長は「脂や肉の色など、消費者が好む牛肉を生産するには配合飼料が必要」と話す。

 同グループは、ホルスタイン去勢を肥育する「はこだて大沼牛」と、和牛とホルスタインの交雑種(F1)を肥育する「はこだて大沼黒牛」をブランド化、主に生協と取引し安定した販路を確保している。

 しかし、牛肉は一般的に不況や放射性セシウム汚染牛問題、生食用牛レバー(肝臓)の販売禁止などで消費が低迷しており、餌代の高騰が厳しい経営をさらに悪化させる懸念も。小澤社長は「今後かなり上がるという想定はしているが、打撃は大きいだろう」と頭を悩ませる。

 道南一のみそ、しょうゆ製造量を誇る、八雲町東雲町の服部醸造(服部雅彦社長)も「大豆相場の世界的な高騰に加え、道産大豆の引き合いが強まり、原料の手当てが厳しい。11月ごろには製品の値上げが避けられない」としている。(山崎大和)

 <米国の干ばつと穀物生産への影響>農水省によると、高温・乾燥の影響で、生産量はトウモロコシが2006年以来、大豆が07年以来の低水準となる見込み。指標となるシカゴ商品取引所の先物価格は大豆が7月20日に、トウモロコシが8月21日に史上最高値を更新した。



◎WAKOビル 東急ハンズ期間延長

 日用品小売り大手、東急ハンズ(東京)がWAKOビル1階(函館市若松町20)に出店している「トラックマーケット函館WAKO店」(釜台木綿子店長)が、10月14日まで予定していた営業を1月20日まで延長することが決まった。JR函館駅前のにぎわい創出などが評価された。

 同店はWAKOビルの管理会社「NAアーバンデベロップメント」(布村隆二社長)の要望を受け、半年の期間限定で4月13日に開店。約230平方メートルの売り場にヘアケア用品を中心として健康器具、台所用品、文具など常時約3000点を扱う。

 布村社長によると、開店当初は1カ月間で9354人が購買。これをピークに夏場の繁忙期も混雑が続くなど、駅前地区活性化に貢献。店員7人も店のレイアウトの工夫のほか、ブログ(日記風サイト)を毎日更新したり、季節別の商品展開に向け積極的に発注提案したりと奔走。そうした実績や創意工夫が延長実現に結び付いた。

 布村社長は「事業は決して黒字ではないが、高い評価や駅前活性化につながりうれしい」。釜台店長も「リピーターが大変多く、今後もクリスマス商戦などさまざまな商品展開をしていけたら」と話していた。(長内 健)



◎童謡歌唱コン道大会 林さん最優秀で全国へ

 道教育大附属函館小3年の林美羽(みう)さん(9)が、札幌で8月下旬に開かれた第27回全国童謡歌唱コンクール・道ブロック決勝大会の子ども部門で最優秀賞に輝いた。11月3日の全国大会(東京)出場が決まった林さんは「全国の人に笑顔と元気を届けられるように歌いたい」と意気込む。このほか、函館から2組が優秀賞を受けた。

 日本童謡協会など主催。小学生以下の子ども部門、中学生以上の大人部門、小学生以下と家族のファミリー部門があり、テープ審査を経て出場できる。

 子ども部門には7人が出場。函館の声楽家、島聖子さんの教室に今春から通う林さんは初出場し、種の成長を願う「たねまきちちんぷい」を伸び伸びと歌った。

 体も使って音感を身に付けるリトミックを2歳から学ぶなど音楽性豊かで、林さんは「とにかく楽しい気持ちで歌い切りたい」と全国に向けて張り切る。島さんは「力量を十分発揮してくれた。いろんな表現を持っている子。全国でも気負わず歌ってほしい」とエールを送る。

 同じく島さん門下の武藤妃音(ひなと)ちゃん(5)は、宏明さん(42)、祥子さん(32)父母とファミリー部門で優秀賞に。東日本大震災被災地の福島市から昨春引っ越し、故郷への思いを込めて「アイアイ」を披露した。祥子さんは「楽しんで歌えたことが結果につながった。家族らしい温かさは伝わったはず」、妃音ちゃんも「(優秀賞は)すごいうれしい」と喜んだ。

 さらに、函館の声楽家細谷悦子さんに教わる花田真一郎ちゃん(5)は、子ども部門で2年連続の優秀賞。ロングトーン(同じ高さの音を長く出すこと)が必要な「俵はごろごろ」を声量豊かに歌った。真一郎ちゃんは「(結果は)悔しい。来年も全国大会を目指して頑張る」と話していた。(長内 健)


◎北斗石別で初の総合防災訓練

 【北斗】太平洋沖の巨大地震を想定した道の津波浸水予測図で、渡島管内最大波となる10・4メートルが示された北斗市石別地区の住民らが9日、当別、三ツ石の一円で、初の広域総合防災訓練を行った。

 石別地区まちづくりプロジェクト委員会(委員長・北見和雄石別町内会長)の主催。石別小、中学校はこの日、振り替えで登校日として訓練に参加。市や函館中央署などが協力した。

 道の予測図では、同地区には66分で第一波が到達。市は避難対象人員を約1100人とし、地形的条件から、警報規模にかかわらず、最大クラスを想定した避難が必要な地域と位置付けている。

 訓練は震度5の地震が発生した後、大津波警報が発令されたと想定。市はサイレンを3秒間吹鳴した後、防災無線で「最大クラスの津波を想定した避難が必要です。直ちに高台へ避難して下さい」と呼び掛けた。住民は、各地区ごとに決めた高台などに避難。大雨にもかかわらず、約1時間で関係者含め200人が避難場所に集まった。

 石別中まで避難した女性(76)は「学校までは25分かかったが、高台までは10分あれば逃げることができる。防災無線は良く聞こえないので、消防には広報をしっかりお願いしたい」と話していた。

 北見和雄会長は「サイレンを聞いて危機意識を持ってもらえただけでもいい。自助、共助だけではなく、近くの人を助ける近助≠ェ大切。反省点を洗い出し、今後も年1回の訓練を行い、要援護者対策も考えながら取り組みたい」と話していた。(今井正一)