2012年9月17日 (月) 掲載

◎昭和の函館 呼び覚ます 北洋資料館で特別写真展

 函館市北洋資料館(遠山孝一館長)などが主催する「北洋漁業出航風景特別写真展」が16日、五稜郭町37の同館で始まった。戦後の函館経済を支えた数々の漁船の雄姿のほか、見送る人々で沸き返る港など、往時の記憶を喚起する写真計70点が並び、来場者が懐かしそうに見入っている。10月31日まで。

 同館の開館30周年を記念し開催。太平洋戦争で中断していた北洋漁業は1952(昭和27)年に再開、毎年5月1日の出航日には7000人近い人々が見送った。昭和の函館を象徴する有名なこの光景は、当時のメディアが全国規模で盛んに報じた。

 同写真展向けに当時の写真を募ったところ、北海道写真史料保存会から5万2000点、市民9人からも寄せられた。

 会場には、北洋漁業が終わる1988年までの写真を抜粋し、A3判にパネル化して展示。サケ、マス、カニ漁の漁船をはしけから盛大に見送る市民や、岸壁から無数に伸びるテープの華やかさが見どころ。家族の見送りを前に涙する母子の様子は、命懸けだった漁の厳しさを物語る貴重な一枚だ。

 また、同保存会の提供写真から、函館の街並みや市民の生活感を1800点の写真で伝えるスライドも。サケ・マス船団の出航の様子を2分20秒で紹介するニチロ会(旧日魯漁業OB会)提供の映像もある。

 午前9時〜午後7時。一般100円、学生50円(函館・青森市内の小中学生は無料)。問い合わせは同館電話0138・55・3455。(長内 健)



◎伝統「御徒士行列」 上ノ国八幡宮渡御祭

 【上ノ国】大名行列をほうふつさせる上ノ国独自の「御徒士(おかち)行列」が16日、町内で行われた。若者が左右の足を高く振り上げて進む姿に、沿道の町民が見入った。

 この行列は、江戸時代中期にルーツを持つとされる古里の伝統で、上ノ国八幡宮渡御祭の中で行われている。松前藩が上ノ国の民衆に敬意を表し武士だけに認められた裃(かみしも)の着用を、お祭りに限り許したことが始まりという。昭和40年代に一時途絶えたが、同55年ごろに町民の熱意で復活、以来伝統をつないでいる。

 行列を先導する猿田彦命に付き従い、裃姿で八幡宮の境内を出発した15人は「やあー、きたり」の掛け声で町内を巡行。日暮れまで練り歩き、沿道の民家でお神酒の振る舞いを受けた。

 夜には同八幡宮で町内の子どもと大人が神楽を奏上し五穀豊穣や地域安全・発展を願った。

 御徒士行列に参加した、桧山振興局の原田吉信さん(37)と青柳剛さん(40)は「歴史と文化に触れられる貴重な経験で参加できてうれしい。今後も桧山振興局などから参加者が続くことを期待したい」と話していた。(田中陽介)



◎無許可の屋外広告 函館市是正指導へ

 函館市は、市内の街頭などにある企業の看板など屋外広告物の設置について是正指導に乗り出す。市が昨年度初めて行った実態調査で、無許可の設置が市内中心部で1500件以上あったため。今後は制度の周知を図りながら、違反者への行政指導を本格化させる。

 市屋外広告物条例では原則、広告の表示面積が10平方メートルを超える場合、市の申請許可と手数料が必要となる。許可期間は3年以内で、継続設置する際には更新手続きをしなければならない。

 市は景観誘導施策の一環として、昨年7月から今年2月にかけて、外部委託した調査を初めて実施。対象の旧市内の道道函館上磯線(通称・産業道路)より南側エリアでは許可が必要な屋外広告物は2243件あり、このうち1525件が無許可設置だったことが判明した。

 市都市デザイン課によると、屋外広告物の市への申請件数は685件で、違反件数の半分以下にとどまった。無許可のうち129件は許可期限を過ぎても継続申請がされていないもので、中には許可申請が要らない小さい看板から途中で10平方メートル以上に切り替えたケースもあったという。

 昨年度の屋外広告物収入は470万円だが、無許可分により単純計算で約600万円の損失が発生した。市は9月中に継続申請切れの広告主に対して個別に再申請を促すほか、無許可の広告物の所有者の特定調査を進め、制度の周知と併せて「最終手段として撤去も考えられる」(同課)としている。(森健太郎)


◎函館市総人口の28・2% 高齢者増加進む 少子化もとまらず

 函館市の高齢化は依然、全国、全道を上回るハイペースで進行している。市がまとめた7月末現在の住民基本台帳人口によると、65歳以上の高齢者人口は7万8490人(男性3万0708人、女性4万7782人)で、総人口27万8056人に占める割合は28・2%。昨年8月末と比べると0・8ポイント上昇した。総務省が発表した3月末の全国の同割合は23・6%、本道は25・3%で、函館は全国、全道より高い。また、市内では依然として、西部地区や旧4町村地区で高い傾向を示している。

 函館市の高齢者人口の割合を男女別でみると、男性24・2%、女性31・6%。年齢層ごとの割合は、0〜14歳までの年少人口が10・7%、15〜64歳までの生産年齢人口が61・0%とどちらも減少傾向で、全国、全道を下回っており、少子化の進行も著しい。

 全人口を5歳ずつの段階で分けた層で、最も多いのは、高齢者世代に近い60〜64歳の9・5%。次いで55〜59歳、65〜69歳が7・2%と1940年後半〜50年代に生まれた“団塊世代”などの層が厚い。75歳以上の後期高齢者人口は14・3%だった。

 支所別の高齢者の割合は本庁31・0%、湯川30・2%、銭亀沢31・6%、亀田24・4%、戸井35・2%、恵山37・8%、椴法華38・2%、南茅部33・0%。

 町別では、各町で人口数に違いがあり、単純比較はできないが、過疎化が進んでいる地域は高齢化率が高くなる傾向があり、銅山町や蛾眉野町、中野町は60%を超えている。旧4町村地域は、恵山岬町、元村町がそれぞれ53・8%、50・6%。本庁管内の西部地区では住吉町(44・0%)、入舟町(41・1%)、松風町(40・7%)が40%以上となっている。一方、亀田支所管内では石川町や陣川町などが年少の割合の方が高齢者よりも高い。

 このほか今年3月末で、道南で最も高齢者の割合が高いのは木古内の39・9%(全道6位)。人口10万人以上の市で、函館は小樽(32・4%)に次ぐ2番目。全道1位は夕張の44・8%。(鈴木 潤)