2012年9月2日 (日) 掲載

◎おくしり和牛増頭へ 海老原牧場

 【奥尻】「おくしり和牛」生産を手掛ける海老原牧場(町米岡、海老原浩代表)が、増頭へ向けて動き始めた。昨年10月に浩さん(52)の長女で、家畜人工授精師資格を持つ愛さん(23)が島へ戻り、繁殖部門を担当。現在の繁殖雌牛50頭を、3年後をめどに70〜100頭規模まで拡大するのが目標だ。函館の小売店での売れ行きは「はこだて和牛」などのブランド牛に引けを取らず、ファンを増やしている。

 黒毛和種で、子牛から肥育までの島内一貫生産。愛さんは「潮風が運んだミネラルをたっぷり含む牧草を食べ、愛情いっぱいに育てるのが特徴」と話す。

 愛さんは酪農学園短大(江別)を卒業後、胆振管内豊浦町の牧場で2年半研修し就農。現在は繁殖雌牛50頭、子牛30頭の飼育を任されている。浩さんが肥育部門を担い、現在は20頭を育てる。

 粗飼料は牧草のほか、浩さんは島内でコメも作っており、稲わらも全て自家産で賄う。安全・安心で健康な和牛生産に親子で情熱を注ぐ。

 肉牛は生後24〜30カ月で函館へ出荷。月に1頭ほどのペースで、年に12、13頭と出荷量はまだ少ない。肉は柔らかくて甘みがあり、程よい霜降り。飽きのこない上品な味が和牛ファンをとりこにする。

 島内に販売店はなく、湯の浜温泉ホテル緑館で食べられるのみ。肉の販売は毎年8月の最終土曜に奥尻港湾内で開催される「なべつるまつり」で年に1回だけ行われる。今年は同25日に売られ、肩ロースが完売する人気だった。

 函館のホテルなどからも肉を求める問い合わせがあるが、対応し切れないため断っているという。浩さんは「繁殖雌牛を70〜100頭に増やせば、月に2、3頭の肉牛出荷が実現できる」、愛さんは「将来は肉を島内で提供できればうれしい。まずは年1産を目標に人工授精を頑張りたい」と笑顔を見せる。

 函館市内で唯一扱う「お肉のつしま」(田家町、對馬浩代表)は「品質が年々良くなり、欲しいというお客も多い。頭数が増えて安定供給できれば、もっとファンが増えると思う」と期待を寄せる。(山崎大和)



◎樺太引き揚げ者ら安らかに

 戦後、樺太(サハリン)からの引き揚げ途上や、上陸後に亡くなった人の冥福を祈る「樺太引揚者上陸記念碑記念祭」(函館市主催)が1日、市内大手町の同碑前で行われた。引き揚げ者やその親族、市関係者ら約40人が参列し、引き揚げ者の苦労をしのんだ。

 同碑は、同市に引き揚げた約31万人の上陸を記念するとともに、船中や上陸後に病院で亡くなった1079人を慰霊するために建立された。記念祭は碑の建立から毎年実施していて、本年度で36回目。

 全員で黙とうをささげた後、市の川越英雄保健福祉部長が「亡くなられた方に対し哀悼の意をささげる。この記念祭は歴史を振り返り、平和の尊さをあらためて考えるうえで意義深いもの」とあいさつ。

 全国樺太連盟函館支部の敦賀敬之支部長は「上陸された方の心情がしのばれ、胸が熱くなるとともに犠牲者が1079人に及び痛恨の極み。一丸となって、平和国家建設のために一層努力したい」と誓いを新たにした。

 参列者は一人ひとり白い菊の花を碑にささげ、手を合わせた。(鈴木 潤)



◎環境保全 楽しく学ぶ エコフェスタにぎわう

 環境問題を身近に考える「はこだて・エコフェスタ2012」(実行委主催)が1日、函館港緑の島で開かれた。環境保全に取り組む32団体がパネル展示や体験コーナーなどを開き、子供から大人までが環境保全に理解を深めた。

 今年のテーマは「エコライク!エコライフ!〜みんなの意識が環境を守る〜」。循環型社会を構築するために、「ごみを減らす」「繰り返し使う」「資源の再生利用」を進めようと、衣料品や日用品を中心としたフリーマーケット、修理された自転車などの再生品の無料プレゼント、資源回収で集まった古本の販売など行われ、来場者は個人でできる環境問題への取り組みに関心を寄せた。

 また、エコカーの展示や、飲料水のペットボトルが再生される仕組みが紹介されるなど、見て楽しむコーナーも充実。子供たちは鉛筆づくりなどを体験した。七飯町の主婦小林敏子さん(52)は「エコバック、マイはしの携帯など、できることは取り組んでいるつもりだが、まだまだできることがあることを知った思い」と話していた。(山崎純一)


◎縄文の魅力広げよう サポーター育成スタート

 【森】縄文文化の魅力を地域に広めるための「縄文サポーター育成プログラム」(渡島総合振興局主催)が1日から始まった。初日は森町内で基礎知識を学ぶとともに、鷲ノ木遺跡を見学して理解を深めた。

 「北海道・北東北の縄文遺跡群」の2015年度の世界遺産登録を目指す動きに合わせ、縄文に親しむすそ野を広げようと昨年度から実施。本年度は15人が参加した。

 初日は道生活環境部縄文世界遺産推進室の長沼孝さんが基礎知識について講話。縄文期にエゾシカなど動きの速い動物が現れ、小型のもりを使って狩猟したことを示し、土器に関し「世界各地の土器文化よりもバリエーションが豊富で、単なる機能を超えた芸術性が特徴」と解説した。また道の世界遺産登録への取り組みも紹介し、後押しを呼び掛けた。

 午後には鷲ノ木遺跡を訪れ、道内最大の環状列石を見学した。今後は函館市の縄文文化交流センターの見学や、土器づくりなどを行う予定で、同振興局は「ボランティアガイドの育成や、イベント開催時のスタッフ参加につなげたい」としている。(千葉卓陽)