2012年9月7日 (金) 掲載

◎鉱物の年代測定 新技術で論文賞…函教大の鴈澤教授と卒業生

 道教育大函館校の鴈澤好博教授(59)と同校卒業生の栗田寛子さん(26)、小川明日香さん(25)が、日本第四紀学会(会員約1500人)の本年度「論文賞」に選ばれた。「熱ルミネッセンス法」と呼ばれる方法で、鉱物のより正確な年代測定を実現させた。石英の単粒子の年代測定まで可能にし、今後の研究の進展につながることが期待されている。

 熱ルミネッセンス法は、鉱物から出る光から、年代を測定する方法。地層や地形の編年などを知るために、テフラ(火山噴出物)を手掛かりにした。だが、これまでの研究では正確な年代が未確定なテフラも多く、装置の技術的問題などがあった。

 鴈澤教授らは他の年代測定手法では困難な5万年から10万年の幅のテフラ層を熱ルミネッセンス法で研究。半導体製造会社メディック(函館市)と共同で15年にわたって「熱ルミネッセンス年代測定装置」を開発し、テフラに含まれる石英1粒子でも年代測定ができるよう感度を高めることに成功した。

 これまで同法で多粒子を測定する装置はあったが、単粒子を測定できる装置はなかったといい、「ヨーロッパに似た装置はあるものの、日本では初めてでは」と鴈澤教授。熱ルミネッセンス法として従来より優れた測定精度と同装置の技術開発の2点で長年の研究成果が高く評価された。

 装置開発では高温と低温の調整に苦労したとこぼすが「受賞できたのは長年支えてくれた企業のおかげ。受賞でき本当にうれしい」と鴈澤教授。「受賞を励みに、今後は活断層の年代測定にまい進していきたい」と話している。

 鴈澤教授は北海道大学大学院を経て同大に30年勤務している。地理学、地質学、地学を専門に火砕流堆積物の年代測定法の確立などを研究テーマに、これまで80編の論文を執筆している。



◎国立病院がスキンケア外来開設へ

 国立病院機構函館病院(伊藤一輔院長)は20日から、ストーマ(人工肛門・人工ぼうこうの排泄口)保有者のサポートや、床ずれのケアなどを専門的に行う「スキンケア外来」を開設する。日本看護協会の「皮膚・排泄ケア認定看護師」資格を持つ看護師2人と外科医の計3人が、毎週木曜日(午前9時から正午)に診療や指導・相談に当たる。

 外来では、人工肛門・人工ぼうこうの手術を受ける患者への術前・術後指導をしていくほか、すでに装着している人に対しても相談に応じ、生活上の悩みや不安を解消していくサポートをしていく。

 床ずれなどで生じる傷についても対応。治療とともに予防法も考えていくほか、便や尿漏れによる皮膚のトラブルにも対処する。

 ストーマは、がんをはじめとする病気で排泄機能を失った患者に造設する装具。慣れるまで排泄の管理、方法が難しく、装着者の中に排泄に不安を感じ、外出を控える人も少なくない。院内でもストーマに関する相談が多く寄せられていて、特に退院後の生活支援を重視して専門外来を開設した。

 同外来の大粒来繭(おおつぶらい・まゆ)、岩尾あかね両看護師は「障害が残ってもその人らしい生活をサポートしていきたい。なかなか人には相談しにくいことなので気になることがあったら相談を」と話している。  外来の受診は予約制。予約の申し込み、問い合わせは同院相談支援室TEL0138・51・0229。(鈴木 潤)



◎多彩な芝居楽しんで 14日から「コンプレックス・シアター」

 短期間に複数の団体が演じる多彩な芝居を楽しんでもらう「コンプレックス・シアターVol.1」が14日から4日間、函館市芸術ホール(五稜郭町37)で開かれる。「初」をテーマに、函館・近郊のアマチュア4組が独創的な作品を熱演し、函館の演劇界を盛り上げる。

 市文化・スポーツ振興財団主催。演劇を志す市民への舞台提供と演劇界活性化を目的に初開催する。

 出演団体は、公立はこだて未来大演劇部の「劇座不手際」、函館の「劇団G4」有志5人でつくる「『七日目のワシ』制作委員会」、道教育大函館校演劇部の「劇団PaP(パップ)」、演劇ユニット「みねらるしお」。それぞれ「161.9」、「七日目のワシ」、「お初」、「大丈夫です。」の演目を予定している。

 期間中の舞台は毎日2、3ステージ披露され、各組が2回上演する。来場者は好みのステージに投票することができ、最終日に結果発表される。同財団の工藤舞さんは「市内では珍しい催し。親子でふらっと見に来てもらえたら」と呼び掛けている。

 チケット一般1000円、学生500円。全舞台を観賞できるパスチケットはそれぞれ2000円、1000円。問い合わせは同ホールTEL0138・55・3521。(長内 健)

 出演団体の開演日時は次の通り。

 ▽劇座不手際=15日午後2時、17日同5時▽「七日目のワシ」制作委員会=15日同7時、17日同2時▽劇団PaP=14日同7時、16日同2時▽みねらるしお=16日同7時、17日午前11時


◎太陽光発電 助成が好調…函館市

 函館市が4月から募集している住宅用太陽光発電システム設置費の助成制度の申請が好調だ。6日現在で75件に達し、前年の72件を上回った。最終的には当初予算の100件分を超える見込みで、市工業振興課は「市民の自然エネルギーへの関心が高まっている」とみて、予算の追加補正も検討している。

 市は昨年度、工藤寿樹市長の政策予算として6年ぶりに助成制度を復活。昨年9〜12月に希望者を募ったところ、当初予算の2倍を超える73件(申請後に1件取り下げ)の申し込みがあり、助成額は追加補正分を含め約1500万円に上った。

 助成額は昨年度と同様に、出力1キロワットあたり7万円、最大3キロワット・21万円。1件あたり3キロワットとして、100件分相当の2100万円を予算計上した。受け付けは12月下旬までだが、月平均で15件の申し込みがあり、同課は「このままのペースでは最終的に130〜140件になるのでは」とみる。

 75件の内訳は、新規住宅が44件(前年度比15件増)、既存住宅が31件(同12件減)で、平均出力は1件あたり約3・78キロワット。同課によると、ハウスメーカーや電気工事業者の代理申請が大半で、「今年は昨年にはなかった住宅メーカーからの申請もある」という。

 また、設置費用の平均総額は1キロワットあたり約50万円で、前年よりも5万円下がり、設備の低価格化も普及の呼び水になっているとみられる。市は今後、想定件数を上回った場合も補正予算などで全件対応する考えで、同課は「額や件数は別にして、助成制度は継続していきたい」としている。(森健太郎)


◎函高専 マレーシアの高校と姉妹校提携

 函館工業高等専門学校(高専、岩熊敏夫校長)は6日、マレーシア・ペナン州のチョン・リンハイスクール(チョア・ヤウ・チャウ校長)と姉妹校提携を結んだ。来年度スタートする国際化に対応した新学科体制を見据え、低学年からの国際理解教育を充実させる狙い。

 同日、調印式を同校で開き、岩熊校長とチョア校長が協定書に署名し、握手を交わした。岩熊校長が「語学力だけでなく、文化や歴史、宗教、生活習慣の違いを理解し、国籍の異なる技術者が連携し問題解決に当たることができて初めてグローバル人材と呼べる。国際交流体験は低学年のうちから開始するのが望ましい」と強調。チョア校長も、函館高専が日本で初めての姉妹校となったことを喜んだ。

 函館高専によると、協定に基づき来年1月6日から1週間の日程で、1〜3年生がペナンで短期研修を行う。国際交流協定は海外の3大学と結んでいるが、いずれも4年生以上が対象のため、低学年(1〜3年生)の国際性を育成する機会が少なかった。

 チョン・リンハイスクールは、同国政財界をリードする人材を輩出。日本の高校に当たる1〜3年生のほか、2年間の大学進学コースがある。男子校で学生数は約2700人。(山崎大和)