2013年10月1日 (火) 掲載

◎1日から函館地方気象台に 組織改編で名称変更

 気象防災業務の実施体制強化に伴い、1日から函館地方気象台となる函館海洋気象台(美原4)で9月30日、入り口の門札の交換が行われた。

 同気象台は1872(明治5)年、国内初の「函館気候測量所」として開設され、1942(昭和17)年、神戸に次いで2番目の海洋気象台となった。これまで陸上の気象観測のほか、北海道周辺や本州の東方海域で、気象観測船やレーダーの情報を基に、海洋気象解析などの観測業務を担ってきた。

 気象庁が8月30日に運用を開始した「特別警報」に向け、防災情報をより早く発表するため、海洋観測を道内のほかの海域を担当する札幌管区に一元化する。組織改編はされるが、函館で発表される情報は変わらない。

 この日は職員が見守る中、市内の設備工事会社の2人が、コンクリート製の門に付けられていた函館海洋気象台の文字を取り外し、新しい文字を付けた。作業は約50分で終了。「海洋」の文字跡が少し残る上に「地方」の名が光っていた。

 函館出身で同気象台防災指導係長の新谷宏さんは「海洋気象台の名は市民に親しまれていると思うが、これからは地方気象台として、より良い情報を早く届けたい」と話していた。  (山崎純一)



◎南極と北極の自然環境学ぶ 附属小

 道教育大附属函館小学校(根本直樹校長、児童444人)で9月30日、外部講師による授業「北極・南極ってどんなところ」が開かれた。3〜6年生が南極・北極の氷やペンギンの羽の標本を観察したりして、極地の自然環境について学んだ。

 講師は南極観測隊員、国立極地研究所の飯田高大さんと、昨年教員南極派遣プログラムに参加した潤徳女子高校の小俣紋さん。5、6年生の授業で2人は南極と北極の違い、昭和基地での生活や周辺で見られる生物を写真やビデオで児童に説明。「南極のクリオネは黒く、ペンギンの足の裏は黒いんだよ」と紹介すると、児童は熱心にスクリーンに見入っていた。

 その後は北極・南極の氷、オキアミやヒモムシなどを観察。児童は交代で氷を触ったり、耳を近づけたりして遠い南極・北極の世界に思いをはせた。

 また「南極で食べ物が尽きたらどうするの」など児童の質問に対して、飯田さんは「50年くらい前はアザラシを食べていたが、今は2年分の非常食を備蓄している。火事で燃えないように、食糧は分散して蓄えているんだよ」と笑顔で答えていた。  (平尾美陽子)



◎訴訟時期 函館市慎重 大間原発工事再開1年

 電源開発(東京)が大間原子力発電所(青森県大間町)の建設工事を再開し、1日で1年が迎える。建設に強く反対する函館市は福島第一原発事故を踏まえた差し止め訴訟を準備している中、原発問題に関する国内の世論は必ずしも高まってはいないのが現状。市は各地の原発の再稼働の動きを見据えながら、慎重に提訴時期をうかがっている。

 同社は昨年、国の革新的エネルギー・環境戦略の決定を受け「建設中の原子力発電所の取り扱いが明確になった」として10月1日に工事を再開した。工事進捗(しんちょく)率は東日本大震災以前と同じ37・6%のままだが、同社大間原子力建設所は「原子力規制委員会が7月に策定した新しい規制基準に影響のない範囲で工事を行っている」としており、原子炉建屋の地下部分や取水・放水設備などの建設を進めている。

 来春にも規制委に対し、安全対策を満たすことを証明する原子炉設置変更許可を申請する方針で、「認可が下り次第、新基準を踏まえた工事に入る」(同建設所)とする。

 一方で、函館市をはじめとする道南の各自治体や経済団体、市町会連合会などは強く反対。工事再開後10月に無期限凍結を求める中央要請を行ったほか、政権交代後の今年2月にも要請活動を行ったが、主だった進展はみられない。

 市は訴訟準備経費2300万円を計上し、今年1月に河合弘之弁護士(東京)ら弁護団10人と契約。訴状では国と同社に対し、地方自治体の存立権や、半径30`圏内の周辺自治体の同意の必要性を主張することを掲げた。

 工藤寿樹市長は9月6日の市議会で「今訴訟を提起しても一地域のことに見られ、かすんでしまう。原発再稼働に関する世論の盛り上がりや、周辺自治体の声が高まる時期があると確信している」と述べ、従来からの見解を繰り返した。30日は取材に対し「事故があり得る以上は同意を得るべき。今は訴える時期を考えるだけ。そう遠くはない」と話した。

 周辺自治体や経済団体も、市に同調する姿勢は変わっていない。高谷寿峰北斗市長は「安全性が確認され、国民的な合意が得られるまで建設すべきでない。新たな規制基準も福島第一原発事故の検証を反映したものではないと受け止めており、承服できない」。中宮安一七飯町長は「フルMOXの危険性は高く、事故が起こった場合、農業を基幹産業とする町への被害は計り知れない。裁判が最も有効な手段と考えられるので、できることがあれば函館市に協力したい」と話す。

 また、松本栄一函館商工会議所会頭は「地域の存亡に関わる問題であり、建設阻止に向けて意志が揺らぐことはない。今後も行政と足並みをそろえていく。訴訟となれば、地元経済界は全国に呼びかけて支援していく」としている。


◎本年度の客船寄港終了

 郵船クルーズが運航する国内最大の豪華客船「飛鳥U」(5万142トン)が9月30日、函館港に入港し、本年度予定していた全14隻の寄港が終わった。今年は初めて7万dを超える大型船が寄港するなど話題も多く、乗客約1万1700人がクルーズ船経由で函館や近郊の観光を楽しんだ。

 市港湾空港部のまとめでは、全14隻の総トン数計約65万dは過去最大。乗客1万1700人と乗員6800人の計1万8500人(速報値)も、飛鳥Uが就航した2006年の1万3000人を上回り、過去最高となった。

 初寄港船3隻のうち、それぞれ2回寄港した「コスタ・ビクトリア」(7万5166d)と「サン・プリンセス」(7万7441d)は初めて7万dを超え、これまでの入港実績を塗り替えた。1日当たり1万円台の手ごろな価格帯の商品が販売されるなど、クルーズ市場の活性化につながった。両船の初寄港時にはそれぞれ乗客約2000人が観光に繰り出した。

 サン・プリンセスは来年度も寄港を予定し、同じ運航会社の「ダイヤモンド・プリンセス」(11万6000d)の計2隻で20回の函館寄港を予定。小樽発着の商品も販売されるなど、道内からのクルーズ旅行が身近になる環境も整う。

 一方で、14隻中10隻が市街地から離れた港町埠頭(ふとう)に停泊。大型船に対応可能な岸壁が港町埠頭以外にないためで、寄港時はタクシーが長い列をつくった。市は15万d級の客船に対応可能で市街地観光の利便性が高い若松地区に旅客船埠頭の建設を実現させるため、港湾計画の改定に向けた準備を進めている。