2013年10月12日 (土) 掲載

◎非常導水路設置へ 八雲脱線現場で大雨対策

 【八雲】八雲町熱田で8月、JR函館線の線路下の砂利が流出して貨物列車の脱線事故につながった問題で、函館開発建設部、JR北海道、八雲町は11日、事故当時に氾濫した熱田川に非常導水路を設置し、排水能力を上げる対策に着手することを明らかにした。近日中に測量を開始し、来年7月の完成を目指す。

 熱田川は脱線現場近くで、国道5号と交差。国道下を通っている水路は幅1・9メートル。普段は穏やかだが、雨が強まると一転して暴れ川≠ノ変ぼうするのが特徴で、国道下の水路が排水量を超えると、水は行き場を失い、線路の方向に流れ出していた。

 同開建によると、水路の排水量を非常導水路がカバーすることで、氾濫の危険度は薄れるという。水路の限界流量は、8月8日に同町八雲で1時間雨量が観測史上最大となった53ミリを基準に設定するという。

 現場付近の熱田川の管理には、河川の八雲町、線路のJR、国道の函館開建と3者が関係している。2010年にも大雨で線路下が流される同様の事態もあったが、連携不足もあって、抜本的な対策が実現されてこなかった。

 今回は9月上旬に同開建が対策案をJR側に提示。今月10日に3者で対策工事をすることで合意した。JR北海道鉄道事業部本部工務部の坂本孝司副部長は「念には念を重ねてきたため時間がかかってしまった。遅い対応に反省している」と陳謝した。

 工事は3者で分担。函館開建が、非常導水路を設置するほか、国道下の水路部分に樹脂製のテープを張り、水を流れやすくするライニング工事を実施する。JRは線路下に通す排水路を、八雲町が川の下流工事を担当する。11月にもライニング工事に着手し、掘削などの作業を順次進めていく計画。函館開建の米津仁司次長は「連携を密にして、来年7月の完成を目指したい」と話している。

 脱線事故後、現場付近の列車の走行速度は時速25キロに制限されているが、完成後は130キロの通常運行に戻す予定だ。(小林省悟)



◎五稜郭 来年築造150年 通年でイベント展開

 函館のシンボルともえいえる特別史跡「五稜郭」が来年、完成から150年を迎えるのに合わせ、五稜郭地区のまちづくり団体などが「築造150年祭」の開催に向けて準備を始めた。1年がかりで多彩なイベントを繰り広げ、地域を盛り上げていく考えだ。準備会の小笠原勇人代表は「来年は新幹線開業イヤーの前年でもあり、全国に函館、五稜郭をアピールしていく」と意気込んでいる。

 五稜郭は蝦夷地の防備強化を図るため、蘭学者の武田斐三郎がヨーロッパの城塞をモデルに設計。1857年から7年の歳月をかけ、64年に完成させた。星形の西洋式城郭は、箱館戦争の舞台にもなった。初代の五稜郭タワーは築造100年の記念に建設された。

 実行委の中心となるのが、同地区のまちづくり団体「新都心五稜郭協議会」。今後、市内の各団体に参加を呼び掛けていく。来月14日に実行委の設立総会を開き、イベントの概要などを発表するという。

 実行委発足に先立って準備会は11日、150年祭のシンボルマークとキャラクターの一般公募を開始した。ともに五稜郭のイメージにふさわしいもので、準備会は「キャラクターは150年祭終了後も五稜郭地区のイベントなどで活用していきたい。独創的なアイデアで応募してほしい」としている。

 採用者にはそれぞれ賞金10万円が贈られる。応募は1人3点までで、締め切りは31日。設立総会の場で決定したシンボルマークとキャラクターを発表する。

 小笠原代表は「新幹線開業を控え、函館が注目される時期。1年をかけて五稜郭を発信し、観光客誘致や地域活性化に弾みをつけたい」とした。

 応募の問い合わせは準備会(五稜郭タワー内、電話0138・51・4785、午前9時〜午後6時)へ。(松宮一郎)



◎「ふっくりんこ」デビュー10年 米袋デザイン一新 おにぎりも発売

 道南ブランド米「函館育ちふっくりんこ」のデビュー10周年を迎え、JA新はこだて(畠山良一組合長)は、2013年産の新米から袋デザインを一新した。コンビニエンスストアのおにぎりにも採用され、実需者の評価も高まっている。

 ふっくりんこは03年に市場デビュー。10周年を記念して同JAはパッケージ(5キロ、10キロ入り)を6年ぶりに大幅リニューアルした。オレンジを基調とした旧デザインに比べ、新デザインは高級感のある黒を採用。専門部会「函館育ちふっくりんこ蔵部(くらぶ)」(木本勉部会長=知内町)の組織名を前面に出した。

 新デザインは、デザイン7案を提示して生産者らによるアンケート結果で、最多得票を獲得。次の10年に向かって、蔵部の生産者が作ったコメを差別化する狙いだ。

 一方、サークルKサンクス(東京)は9月10日から、道内194店舗で、函館育ちふっくりんこを使った「すじこおにぎり」(145円)を販売して好評。蔵部としておにぎりの商品化は初めてで、包装には蔵部マークも。同JAは「おにぎりは目にする機会が多い商品なので、蔵部の認知度が高まってほしい」(米穀課)と期待する。

 同蔵部は、独自基準を設定しタンパク含有率6・8%以下を基本とする。同課の三浦治係長は「地元で愛されてきた銘柄。今後も、生産者の気持ちを継承しながら消費者においしいコメを提供したい」と話している。(山崎大和)


◎市文化賞に煖エさん 書への姿勢評価

 函館市文化賞審議会(座長・工藤寿樹市長)は11日、今年の市文化賞に書家で函館書藝社会長の煖エ海堂さん(74、本名・煖エ健樹)=西桔梗町=に授与すると発表した。表彰式は11月3日午前11時から、市民会館小ホールで開かれる。

 煖エさんは1939年、後志管内泊村生まれ。道学芸大函館分校(現道教育大函館校)卒。幼少時代から書に親しみ、81年には函館書道界初となる毎日書道展毎日現代書展会員賞を受賞するなど、近代詩文で全国的に高い評価を受けている。

 99年には市文化団体協議会の白鳳章を受章。書藝社会長をはじめ函玄社顧問、北海道創玄参事などを務め後進の指導にあたる一方、呼吸法と書の関係の理論化に取り組むなど、書への姿勢が評価された。煖エさんは「推薦や応援をしてくれた方がいてこその賞で、とてもうれしい」と話している。

 同賞は市の芸術や文化の発展に寄与した個人、団体に贈られるもので、今年で64年目。他薦に基づいて審査しており、書道関係の受賞者は平成に入って以降、永田青雲さん(1999年)、千葉軒岳さん(2004年)、中村朝山さん(08年)に続き4人目。団体の該当はなかった。

 これまでの受賞者は今年を含め、個人142人、16団体に上る。(千葉卓陽)