2013年10月21日 (月) 掲載

◎脱線事故1カ月 JRへの不信なお強く

 JR函館線大沼駅構内で発生した貨物列車脱線事故から19日で1カ月になる。この間、線路異常の放置をはじめとするJR北海道の不祥事やトラブル続発を受け、国が特別保安監査に入って組織の内部に切り込んだ。函館・道南では、JRへの不信感が根強く残る一方で、早急な信頼回復を求める声が強い。

 原因究明の過程で、線路幅が社内基準値を超えていたにもかかわらず、長期間放置していたことが発覚。異常個所は当初、計267カ所だった。

 ずさんな体質を重く見た国土交通省は、鉄道事業法に基づく特別保安監査に入り、本社や函館支社、大沼保線管理室などで保線管理の実態を調査。監査終了を1日延期する異常事態となった。今月4日には、異常個所が3カ所増えて計270カ所となり、同日JRに対し改善指示が出された。 さらに劣化しやすい木製枕木の使用問題や、札幌—網走間を走行する特急オホーツクがATS(自動列車停止装置)が作動しないまま運行していた問題も判明。同省は今月9〜12日に追加の特別保安監査を行った。

 抜本的な改革案を打ち出すことが急務となり、JR東日本から役員クラスの人材を投入される見込みも強まった。

 しかし、再生への道は険しい。大沼国定公園で遊覧船を運航する大沼合同遊船の小泉真社長は、線路異常の放置について「我々で言えば、船に穴が開いているのに修理しないようなもの。分かっていてやらないのはあり得ない」と問題の根深さを指摘する。

 一方で、JRは観光にとって頼みの綱だ。大沼公園駅前でレストランや貸自転車業を営むフレンドリーベアの市川剛営業チーフは「JRの利用者はバスツアーと違い、大沼を目的に来てくれる人が多い。これから紅葉が見ごろを迎えるので、JRには何とか頑張ってほしい」と願う。

 旭川市の主婦(56)は「運転の負担がなく、要する時間も短いJRは移動手段として上位にある。もう何事も起きないことを願うだけ」。東京の会社員(54)は「東京では電車は最も安心できる乗り物であり、相次ぐ失態は信じられない。北海道には欠かせない交通機関なので、早く信頼を取り戻して」と話す。

 函館朝市協同組合連合会の井上敏廣理事長は「1日も早くお客が安心して利用できる態勢を整えてほしい。北海道新幹線の開業効果を見込んで、朝市もイベントなどでお客を迎えたいので、JRもしっかり運行を」と注文する。 (小林省悟、森裕次郎、山崎大和)



◎「イカール星人」台湾へ出発

 待ってろ台湾—。函館の人気キャラクター「イカール星人」が台湾・台北市で開かれる台湾国際旅行博(ITF2013)で函館の魅力をPRするため、18日、函館空港から台湾へ飛び立った。

 市などでつくる、市海外観光客誘致促進協議会が、旅行博会場に函館ブースを設置。エバー航空の函館線就航1周年を記念し、同社がイカール星人の搭乗料金を負担。念願の海外初登場で、19、20の両日に函館ブースでアピールする。

 市ブランド推進課は「函館に来ていただくのはもちろん、函館からも台湾に旅行してほしいとの思いも込めてPRしてきたい」と力を込める。ただ、イカール星人が姿を現せる時間は1回につき30分が限界という。同課は「本当は大暴れさせたいところだが、台湾は暑いからねぇ…」と苦笑い—。



◎68年前函館で捕虜生活 ヒーアさん来函 戦災者悼む

 68年前に函館市内の捕虜収容所に入っていた米国人元捕虜のロバート・ヒーアさん(91)らが17、18の両日、亀田港町にあったとされる第2派遣所(収容所)など縁のある市内6カ所を訪れた。ヒーアさんは「第二次世界大戦が終わり、母国に帰れて本当にうれしかった」と懐かしそうに振り返った。

 ヒーアさんは1945年3月16日に同所に入り、6月7日までの約3カ月間、函館に滞在。有川埠頭(ふとう)までの約1・5`を歩き、船で運ばれてきた食品や石炭など荷物の積み降ろしに従事させられた。楽な仕事ではなかったが、他の収容所に比べて「函館の収容所は一番すばらしい場所だった」という。

 郷土研究家の浅利政俊さん(82)=七飯町在住=の案内で、17日は第2派遣所や有川埠頭、同所で亡くなった英国人捕虜の名前を刻んだ慰霊碑がある永全寺(昭和)を巡った。

 18日は、函館捕虜収容所本所の跡地(船見町)に足を運んだ。浅利さんが当時の所長である江元茂夫さんについて話すと、「彼のことはよく覚えている。彼は『日米関係は非常に大切なもの、戦争が終わって帰ったら友達になりたい。どうか憎まないでほしい』と言っていた。帰ったら、という言葉を聞けてうれしかった」と笑顔を見せた。

 続いて、仮収容所として機能していた元函館検疫所、函館空襲戦災者を祭る慰霊碑のある称名寺に赴き、「人類が続く限り、不幸なことだが戦争は続くのだろうね」と戦災者を悼んだ。

 「函館に来られて本当にうれしい。いろんな思い出がよみがえってきた。今回のいい記憶を、これからもずっと覚えていきたい」と話し、浅利さんは「ヒーアさんからは、命を大切にするという思いや、違いを認め合い、共に生きることを教えてもらった。今を生きる子どもたちに、戦争の残酷さだけでなく、こうした思いを伝えていきたい」と話していた。 (虎谷綾子)


◎サツマイモでかい!収集作業、道南農試

 【北斗】道産サツマイモの最適品種の選定と、栽培方法の開発に取り組む道総研道南農試(北斗市本町)は18日、試験圃(ほ)で収穫作業を行った。自走式収穫機を使い、太ったサツマイモを掘り起こした。

 2012〜14年度の3カ年計画で研究。今年は20eに「ベニアズマ」を主体に12品種を作付け。収量は10e当たり2・5〜3dと、本州での平年の標準収量(ベニアズマ2・5d)並みかそれ以上を見込む。

 道産の食味はねっとりして甘みが強いが、ホクホク感が足りないという。高濱雅幹研究主任は「9月に収穫した芋にはホクホク感があり、気温が下がった10月の芋はねっとりして甘くなってきているのではないか。この傾向によって、消費者の嗜好(しこう)に合わせた販売の仕方が可能になる」と話していた。

 花・野菜技術センター(滝川市)も、道産サツマイモの貯蔵法と施肥について試験している。(山崎大和)