2013年2月18日 (月) 掲載

◎迫真演技 1300人見入る 初春巴港賑

 函館の各界名士による市民歌舞伎「第35回公演初春巴港賑(はつはるともえのにぎわい)」が17日、市民会館で開かれた。出演者40人が武士の葛藤や人情味あふれる芝居を熱演。手に汗握る迫真の演技に1300人の来場者が見入った。

 実行委員会(今均委員長)、市文化・スポーツ振興財団の主催。函館新聞社など後援。

 「勧進帳−安宅新関の場」では、演出担当をしている函館の歌舞伎役者、市川団四郎さんが8年ぶりに急きょ出演。関守の富樫左衛門役を務め、武蔵坊弁慶役の本間哲さんと山伏問答などで名調子を披露。本間さんの勇壮な「飛び六方」にも、拍手や声援が飛び交っていた。

 「忠臣蔵外伝−南部坂雪の別れ」で大石内蔵助役を務めた菊地喜久さんは、敵である吉良上野介の密偵に惑わされ、武士の本懐を遂げられずに嘘を付く芝居を熱演。佐藤朋子さんも、位牌(いはい)を手に大石へ敵討ちを迫る浅野内匠頭の妻、瑶泉院役を見事に演じ切った。

 今年の口上は3人で、工藤寿樹市長が「3年後の新幹線開業に向け、まちづくりは加速していく。今後も函館の発展のために皆さんのご尽力をいただきたい」と述べた。今さん、函館商工会議所の永井英夫副会頭も飛躍を誓った。

 また、毎年恒例の「白浪五人男」もあり、水産業界の5人が盗賊役を熱演して喝采を浴びた。(長内 健)



◎巡視船「びほろ」来月“退役” 最後の見学に市民200人

 3月に“退役”する函館海上保安部の巡視船「びほろ」(山岡仁船長、325トン)の「お別れ一般公開」が17日、函館西埠頭で行われた。

 びほろはこれまで、309回出動し、41隻、207人を救助した。32年間で約41万キロを航行し、東日本大震災に伴う捜索救助活動のほか、昨年は恵山沖で46人が乗る漂流漁船をえい航した。

 この日は来場した市民ら194人が、ブリッジや乗組員の居室、通信室など見学していた。また、先着順で海上保安庁のイメージキャラクター「うみまる」のストラップを配布した。

 びほろの後任は新造船の「おくしり」(335トン)。3月29日に就役し、4月以降に同本部で任務にあたる。

 来場した市内の高橋敏夫さん(67)は「まだまだ活躍できそう。最後の機会に見学できてよかった」と話していた。(柏渕祐二)



◎震災の悲劇忘れないで 19日から写真展

 来月で東日本大震災から2年になるのを前に、被災地の様子を伝える写真展「未来への贈りもの あの日の記憶」が19日から金森赤レンガ倉庫(末広町4)で開かれる。写真家4人が宮城県石巻市をメーンに撮影した写真と石巻市立渡波小学校児童の写真が展示される。

 現地で活動を続ける写真家の平井茂さん、土谷英ニさん、辻彩登君、葉上洋子さんの4人で結成するプロジェクト主催。会場にはがれきの山や崩れた建物、仮設住宅で暮らす人々の生活の様子など、それぞれの目線で撮影した約130点が並ぶ。

 メンバーの1人、辻君(中学1年)は、笑顔のケーキ屋さんとして自らケーキを作り、避難所に届ける活動などに取り組んでいる。出展した作品は墓石の上に自動車がのったものや現地で出会った人の笑顔を写した作品など。辻君は「写真を通して、こうゆう現状があることを知ってほしい。忘れないでほしい」と話す。

 また3月9、10日は写真家によるトークセッションのほか、辻君のケーキ販売も行う予定。葉上代表は「年月が経っても奥地はがれきの山。震災の影響はまだ続いている。現地の今を伝えられれば」と話している。

 入場無料。時間は午前9時半〜午後7時。場所はBAYギャラリーと洋物館ギャラリーの2会場。問い合わせは金森赤レンガ倉庫電話0138・27・5530へ。(平尾美陽子)


◎世界遺産登録へ地域の理解大事

 「北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群」の世界遺産登録に向けた方向性を探る講演会(函館市縄文文化交流センターなど主催)が17日、同センターで開かれた。参加した約60人の市民に、日本ユネスコ協会連盟元事務局長の吉岡淳さんが世界遺産を活用したまちづくりについて語った。

 吉岡さんは世界遺産登録後に想定される地域の変化を紹介。外国人を含め観光客が急増するメリットのほか、「観光客目当ての土産店が周辺の美観を損ねたり、観光バスやタクシーの排気ガスで大気汚染を招く恐れがある」などと注意を促した。

 まちづくりの例として、2007年登録の石見銀山遺跡(島根)では、地元住民が務めるボランティアガイドが積極的に養成されているほか、地元企業が収益を遺跡保全に活用している点を報告。「住民による町並みの保全活動は戦後から行われており、地域の意識は高い」と話した。

 また登録への理解を行政と民間で一致させる重要性を説明。「熊野古道(和歌山)では、登録によって周辺バッファーゾーン内の山林業者が木の伐採をできなくなり、木にペンキで『世界遺産反対』と書いた問題も起こっている」と話した。

 その上で参加者に「活用するためには地域全体でいかに遺跡を理解し、保全について考えるかが大事」と投げ掛けていた。(後藤 真)