2013年2月5日 (火) 掲載

◎旧国鉄戸井線の遺構「アーチ橋」解体工事本格化

 戦時中に建設された旧国鉄戸井線の遺構で、函館市瀬田来町のアーチ橋「蓬内橋」(よもぎないばし)の解体工事が本格化している。4日から橋の側壁を特殊な工具を使用して撤去する作業が始まった。地盤部分のコンクリートには、比較的大きめの石が混在していることなどが分かり、限られた物資で苦心しながら建設されたことがうかがえる。

 旧戸井線は軍事物資の輸送を目的に、五稜郭─戸井間を結ぶ単線鉄道として建設が進められたが、1941(昭和16)年に架設された同橋付近で工事が中断。同橋はコンクリート製の三連橋で、長く市道として使用されたが崩壊の恐れなどから新しい橋への架け替えが決まった。

 工事は昨年11月7日に始まり、道路部分の砂利を撤去した結果、1・3メートル程度でコンクリート層にたどり着いた。想定したよりもコンクリート層が厚いことが分かり、くりぬいた断面からはセメントの骨材として大きめの石が使用されていたことが判明。市土木部道路建設課「建設当時、手に入る限りの資材で作ったのでは」と推測する一方、解体費が当初予定より、膨らむことを懸念する。

 工事を請け負う小鹿組(湯浜町)の河口静男管理部長は「大型の重機が入れない場所でもあり、河川など周辺環境に影響がないよう配慮しながら作業を進めている。想定以上にコンクリート層が厚く、解体方法を日々考えながら進めている」と話す。

 また、同橋は鉄筋の代わりに竹が使用された可能性が指摘されており、同課は「解体の過程で竹や木材が使用されていれば、断面から分かるのでは」としている。(今井正一)



◎マーチング人気再燃の場に マキシマム来月24日に記念公演

 今年で創立20周年を迎えた函館のマーチングバンド「マキシマム・ドラム・アンド・ビューグル・コー」(マキシマム、福崎進一代表)の記念公演「LIVE2013」が3月24日、市民会館(湯川町1)で開かれる。ゲスト4団体を含め総勢150人が出演、迫力満点のステージを繰り広げる。

 マキシマムは、福崎さん(41)ら函大付属有斗高のマーチングバンド部OB数人が1993年、道内では初となるマーチングバンドの社会人団体として旗揚げ。現在は20代中心に約40人が所属し、市青年センターで練習している。

 発足当時、有志はすぐに数十人に膨らみ、3年後には単独コンサートを開催。中高生への普及活動として、道南の学校へ指導に訪れることも増えた。裾野が広がり、10年ほど前のピーク時には70人もの団員が在籍していた。

 だが、楽器が高額だったり、体育館のような広い練習場所の確保が難しかったりといった悩みを抱え部活数は減少していった。この20年間、教育現場で指導もしてきた福崎さんは「道内で函館はある意味マーチングの先進地だし、演奏のレベルも高い」と話し「20年はあっという間だったが、この節目の年にもう一度函館、道南から盛り上げるきっかけにしたい」と意気込む。

 記念公演は3部構成。1部はゲストに招く創価学会函館吹奏楽団、有斗高、亀田中、青柳小各バンドとの合同部隊。2部は、マキシマムが編曲したスタジオジブリ映画「もののけ姫」全3楽章の演奏。3部は過去の公演で大好評だったという「オペラ座の怪人」全7楽章を披露する。

 岩本直弥団長(27)は「『もののけ姫』も『オペラ座の怪人』もよく知られた曲ばかり。吹奏楽やオーケストラでは味わえない迫力を感じてもらえれば」と呼び掛けている。

 当日は午後4時から。チケットはS席2000円、A席1500円、B席1000円(全席指定、当日500円増)。市民会館などで扱っている。問い合わせはlive2013@maximum1.jpへ。(長内 健)



◎生活保護費引き下げ 受給者ら不安の声

 国の2013年度予算案に生活保護の支給水準の引き下げが盛り込まれた。1000人当たりの保護者数が47(昨年11月末現在)と全国中核市41市中で最も高い函館市の受給者や専門家からは、不安や批判の声が上がっている。

 「今でさえぎりぎりの生活なのに、これ以上保護費を下げられると生活が成りたたなくなる」。母子家庭で、小学生の子ども2人を育てる市内の女性(42)はため息をついた。

 4年前から生活保護を受け、市営住宅で3人暮らし。夏は月約13万円、冬は15万円ほど保護費をもらっている。長女は習字、長男は野球クラブに所属している。「習い事は子どもが続けたいと言っているからやらせたい。でも保護費が減ると余裕がなくなるので食費を削るしかなく、満足に食べさせてあげられるか心配」と漏らす。

 支給額を減らすのは食費や光熱費といった生活費にあたる「生活扶助費」。今年8月から減額し、3年かけて段階的に引き下げる。

 減額幅は世帯構成によって異なり、厚労省の試算では例として都市部に住む40代夫婦と子ども2人(小学生と中学生)の4人家族は8月に約7000円、15年度以降は2万円程度の減額となるなど、子育て世帯の負担が特に大きい。

 市生活支援第1課は「国が示した各世帯の減額率は函館市でもある程度共通してくる」と話す。

 市の同現在の保護者数は1万3041人で、保護世帯数は9424。年々増えており、市の本年度の生活保護費(当初予算)は約213億円。最近2年間で20億円増えた。同課は「引き下げで財政負担は一定程度軽減される」と話す。

 一方、支給水準の引き下げは受給者以外の低所得者にも影響が出る恐れがある。生活保護制度に詳しい函館市の湯浅弥社会福祉士は「就学援助など低所得者を支援する制度は生活保護の基準額が大きく関係している。何らかの対策を取らなければ、貧困世帯がますます増えてしまう」と指摘している。(後藤 真)


◎緊急通報システム設置 85歳以上で倍増

 函館市が独居高齢者の安全確保に向けて無償で設置している「緊急通報システム」の設置台数が、85歳以上に関して本年度95台(昨年12月末現在)と昨年度に比べて倍増した。本年度から85歳以上の設置条件を身体機能にかかわらず「一人暮らしであれば全員」と広げたことが増加に表れたとみられる。

 機器は対象者からの依頼を受けて自宅に設置。昨年度まで身体機能が衰えた独居の65歳以上を対象としていたが、本年度から85歳以上に関しては条件を大幅に緩和した。

 95台のうち、50台は重度の心疾患や高血圧症といった持病を有するなどの身体機能が衰えた高齢者からの依頼。残りの45台は昨年度まで対象外だった高齢者宅に設置されている。

 市高齢福祉課によると、昨年度の全設置台数は248台で、このうち85歳以上が51台。本年度は対象を広げたことから全設置台数も同現在で262台と昨年度を上回っている。

 機器は消防本部に直通する緊急ボタンと、市または消防本部につながる相談ボタン、火災センサーなどの機能を搭載。機器が離れた場所にあっても、体に身に付けられるペンダントのボタンで消防本部につながる。

 同課は「機器を使用したおかげで一命を取り留めた例もある。依頼があれば自宅に出向いて設置するので、気軽に問い合わせてほしい」と呼び掛けている。

 問い合わせは市内の地域包括支援センターまたは同課(電話0138・21・3025)へ。(後藤 真)