2013年3月10日 (日) 掲載

◎防災マップ作製、避難行動迅速に

 函館市西部地区の8町会でつくる「西部地区第2方面防災連絡協議会」(岡嶋一夫会長)は、各町会の避難場所や経路を記した手作りマップを作製した。東日本大震災の教訓を踏まえ、災害時の安全で円滑な避難行動につなげることが狙い。マップは各町会ごとに配布され、町会館などに掲示される予定。

 同会は昨年5月に設立。震災を契機に住民らの防災意識を高め、細かなサービスを提供しようと「地域の防災マップを作ろう」と動き出した。

 昨年8月ごろ、末広、元町、青柳、谷地頭、住吉、宝来、東川、豊川の8町会に白紙の地図を配布。より安全な場所に逃げられるよう避難路や避難先を記してもらい、それをもとに同会の福士博司さんが完成させた。マップには海抜表示や津波到達時間、非常時持ち出し品などを掲載。また、地震発生時の行動を絵や文章でまとめたチェックリストも作った。

 福士さんは過去に阪神・淡路大震災を経験。がれきの下敷きになっている人や、誰かが助けている光景を目の当たりにし、住民の安全確保行動の判断目安となるものの必要性を強く感じたという。今回、地域住民の意見を反映させたマップ作りに協力した福士さんは「トイレなどに貼って、避難経路や場所を確認してもらい、各家庭で見直してもらいたい」と呼び掛ける。

 同会では新年度、8町会合同での防災訓練を予定しており、今秋をめどに実施する方向で検討している。岡嶋会長は「いざという時に連携して対応できるようにし、住民が安心安全に生活できるよう支援していきたい」と話している。(平尾美陽子)



◎震災で福島から避難の加藤さん、夢の美容師に

 東日本大震災で被災した2011年3月、福島県から函館へ避難してきた加藤高樹さん(32)が11日、函館理容美容専門学校(中島町、中島真之校長)を卒業する。仲間や支援者との出会いを励みに勉強し、美容師になる夢を見事にかなえた。加藤さんは「人として成長できた2年間だった」と晴れやかな表情を見せる。

 加藤さんは同県南相馬市出身。東京の大学を卒業後、27歳の時から陶器の製造・販売業を古里で始めた。震災当時、福島第一原発事故による放射能汚染への影響から「もうここには住めない」と判断。函館にいる親戚を頼ろうと2年前、共に暮らす母(63)と福島を離れた。

 函館で職を探したが、憧れていた夢への思いが膨らんだ。美容師だ。同専門学校へ問い合わせた。既に新年度の学生募集は終わっていたが、「事情が事情だから」(同校)と入学が認められた。市職員が用意した避難者向けの住宅への入居も決まった。

 そうして新生活が始まったが、一回り近く年齢が離れた学生とは、なかなかなじめなかった。「本来すぐに仕事しなければいけないのに、学生をやっていていいのか」。そんな葛藤にも悩まされた。

 半年が過ぎ、翌年7月に控える全国理容美容学生技術大会道地区大会に向けた特訓が校内でスタート。同じ目標を掲げ、ウィッグに向き合う日々。気付けば、学生と心を通わせている自分の姿があった。同大会で見事優秀賞に輝き、全国大会へ進んだ。「年齢は違えど目標に向かって頑張るのは同じ。誇りにできる仲間ができた」と話す。

 就職が決まり、来月上京する。函館で支援してくれた人、そして今も故郷に残る友人、知人への思いもあるが、それらを糧に新天地で生きる決意だ。

 加藤さんは言う。「泣く泣く福島を離れた震災当初は生きた心地がしなかったけど、人との出会いがなければ今の自分はない。スタイリストとしてお客さんに幸せを届けられるよう、腕を磨いていく」(長内 健)



◎Jバス、月平均1924人利用

 函館市の陣川あさひ町会(西川孝一会長)が独自運行するコミュニティーバス「Jバス」の報告会が9日、同町会館で開かれた。役員や地域住民約30人が出席。初年度に得られた課題や問題点のほか、新年度に「通学バス」と統合することなど新たな運行体制について報告した。

 Jバスは、運営委員会(上野山隆一委員長)を組織し、行政の補助を受けずに自主財源で運行する実証実験として昨年4月に運行を開始。2月末までの11カ月間で延べ2万1167人、月平均1924人が利用した。

 ただ、当初想定した月平均2000人の利用には届かない見通し。中学生の利用が多いため、夏、冬休み期間中の落ち込みが響いたほか、利用が増えると思われた冬期間の乗車人数が想定よりも伸びなかった。

 新年度は▽利用の少ない日曜・祝日の運行を取りやめる▽夏、冬休みのダイヤ変更▽料金の値上げ▽広告収入の強化|などで、運営の効率化を図る。  また、保護者組織が市教委からの補助を受けて運行している「通学バス」と統合。通学バスのうち、神山小学校行きの1便を一般利用者も乗車できる「混乗便」とする。運営委は「乗車マナーを地域の大人が教えるいい機会になる」と相乗効果を期待した。

 キッズパスを持つ子どもたちは、一般運行のJバスも利用できるが、保護者負担が小学生で年間6000円増となることから、利用者からは「きょうだい割引き」の導入や、通学バスの無料運行実現を市に引き続き要望するよう意見があった。

 上野山隆一運営委員長は「引き続きJバスに対しいろいろな意見を聞かせてほしい」と話していた。(今井正一)


◎高齢者住宅が建設ラッシュ

 高齢者向けの住まいの一つ、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の建設が函館市内でも相次ぎ、競争が激化している。高齢者人口の増加に伴い、成長が見込める分野として事業の拡大や新規参入があり、市内だけで22棟660室の整備(完成予定も含む)が進んでいる。

 サ高住は、入居者の安否確認と生活相談が義務付けられたバリアフリー構造の賃貸住宅。市住宅課は「ほとんどが食事付きで、市内では家賃や管理費、3食付きで10万〜12万円程度が多い」という。ヘルパーステーションやデイサービスなどを併設した所が多く、介護が必要になれば別料金で介護サービスの提供を受けることができる。入居は原則60歳以上。

 函館市本町8のアメニティーライフ(柏葉昌宏社長)は、昭和4に3階建て28室のサ高住を建設中。1階は別会社が運営する要介護者の短期入所施設(ショートステイ)で、付加価値を高める。柏葉社長は「基本的に自立した高齢者が対象。単身者、夫婦、移住者などに充実したシルバーライフを送ってもらいたい」と語る。4月末の完成予定。

 北斗市東浜2のティー・エス(佐藤達夫社長)は、函館市桔梗2に3階建て36室を整備中。併設のデイサービス、提携先のヘルパーステーションや医療機関と連携することで「利用者が自宅にいる感覚でみとりまでお世話したい」と佐藤社長。北斗市で運営する1棟目のサ高住の待機者がいることから事業を拡大し、「競争が激化しているからこそ、実績のあるわが社が」と自信を見せる。4月末の完成予定。

 木材・流通大手の函館市港町3、テーオー小笠原(小笠原康正社長)は、北浜町5に3階建て60室、デイサービス、ショートステイ、ヘルパーステーションを併設、隣接したサ高住を4月に着工する。「福祉施設の待機者が多く、こうした施設のニーズが高まっている。地域貢献も兼ねて、事業を拡大した」と村田憲部長は説明する。9月の完成予定。

 サ高住は国土交通省と厚生労働省が所管し、建設費の1割が補助され、税制上の優遇もある。今後、団塊世代が65歳を迎え、要介護者も増加することが予想され、建設ラッシュが続いている。市内の建設業者は「公共工事が減少し、数少ない大型の民間工事として期待が大きい」と話し、地域経済を下支えしている側面もある。(高柳 謙)