2013年3月11日 (月) 掲載

◎東北と手携え復興へ 東日本大震災きょう2年

 東日本大震災の発生から、11日で2年。大きなダメージを受けた道南経済はようやく震災前の水準に戻りつつある。震災を機に東北との結びつきを強めた企業も多く、3年後には新幹線の新函館駅開通も控えていることから、経済関係者からは「今こそ企業や機関が連携を一層強化して、道南と北東北の経済を盛り上げていかなければ」との声も上がっている。

 ■朝市、苦しい2年間

 震災で函館経済の主力である観光は大打撃を受けた。函館朝市協同組合連合会の井上敏廣理事長は「店舗の被害はもちろん、その後の風評被害で朝市、函館観光にとって苦しい2年間だった」と振り返る。

 各店とも厳しい経営状態が続き、損害も全体で10億円に迫るとの見方も。「昨年秋ごろから観光客が戻りつつあり、売り上げも回復してきている」とする一方、「落ち込んだ売り上げ、被害を取り戻すには何年もかかるだろう。明るい材料は3年後の北海道新幹線開業。観光客を呼び込むための取り組みを考えているところ」と先を見据える。

 ■東北との広域観光に期待

 交通と宿泊業にも震災の影響が直撃。JRによると津軽海峡線(青森県外ケ浜町中小国—木古内間)の利用実績は、2010年度が152万人だったのに対し、11年度は135万人に激減。しかし12年度は2月末現在で139万人となり、年間では10年度を超える勢い。JR北海道函館支社は「本当に震災前の水準に戻るのは来年度以降。今後は北海道新幹線の開通を見据え、東北を含めた広域の観光商品の開発が急務」と話す。

 「これまで発行してきた函館市内で利用できる共通クーポン券を、1月から青森でも使えるようにした」と話すのは函館観光コンシェルジュセンターの遠藤浩司社長。「東北の復興に合わせて首都圏からの観光客を呼び込む起爆剤にしたい」と意欲を見せる。

 ■定期便就航で台湾観光客好調

 震災前に好調だった中国や韓国からの観光客は、原発事故による放射能汚染の風評被害で、一時大幅な落ち込みを見せた。その中でいち早く回復を見せたのが、台湾からの観光客。12年秋には台湾の航空会社2社が函館—台北線を定期便化し、今年2月の「春節」には、満席の便が次々と観光客を運んできた。

 台湾人の人気スポット・函館山ロープウェイの利用者は、10年度の約127万2400人が11年度に約110万4600人と落ち込んだ。12年度は2月末ですでに120万8500人と、ほぼ震災前の水準に戻った。JTB北海道札幌支社では「函館市などがトップセールスを行って誘客をPRした効果が大きかった」と分析している。

 ■代替需要で販路定着

 函館財務事務所の武本雅臣所長は「被害を受けた東北の水産加工業者に代わり、函館の業者が代替需要を担い、その間、販路を定着、拡大させることができた」と語る。「原材料の高騰など不安要因もあるが、うまく確保することができれば需要はさらに広がるのではないか」と予測する。

 「観光は大きな被害を受けたが、震災前の水準に戻りつつある」と話すのは函館商工会議所の松本栄一会頭。「震災を機に南北海道と北東北の関係はより強まった。観光、物流、企業の進出など今後も連携強化が進むだろう」と力を込めた。  (小川俊之、松宮一郎)



◎「新・江差駅弁当」いかが れすとらん・津花館で販売

 【江差】来年春に廃線が見込まれるJR江差線木古内—江差間にちなんだ、ご当地メニュー「新・江差駅弁当」が町内橋本町100の「れすとらん・津花館」(打越修代表)に登場した。打越代表(60)は「人々の生活を支えた江差線を振り返りながら弁当を味わってもらえれば」としている。

 同店は3年前から江差駅にちなんだ弁当を並べていたが、今回おかずの内容を再度厳選した。江差の寒のりの二段ご飯にニシン甘露煮、上ノ国のフルーツポークの甘辛焼き、厚沢部産ジャガイモのコロッケなどで、「江差町と近郊の食材で古里の味にこだわった。容器も愛らしい丸みがあり、江差線の列車内で食べてもらえれば、もっと味わい深いものになるはず」と同店。JR江差駅関係者にも新弁当を味わってもらったところ、上々の評判だったという。

 打越代表は「幼少時によく江差線に乗って函館に行った。列車の中で食べるゆで卵が大好きでごちそうだった」と振り返り、「江差線が無くなったとしても弁当に思いを込めて、江差駅の存在をいつまでも記憶にとどめたい」としている。

 弁当は1個870円。店内のほか、JR江差駅や近郊への配達(2個から)も行う。仕込みの都合上、1時間か2時間前に予約が必要。問い合わせは同店(電話0139・52・5151)へ。    (田中陽介)



◎ことしの土方は俺だ 函館野外劇オーディション

 NPO法人市民創作「函館野外劇」の会(中村由紀夫理事長代行)は10日、今年の第26回公演のメーンキャストオーディションを行った。同会スタッフを含む33人が参加、役柄への思いをアピールした。

 募集していたのはペリー提督や武田斐三郎、コロポックル、弁士など全21役。昨年も出演していた参加者は「初心に帰ってがんばりたい」「やり残したことがあった」と、中村理事長代行ら審査員4人に劇への思いを訴え、台本に沿って朗々としたせりふを披露した。

 箱館戦争シーンの土方歳三役の希望者は3人。声を張り上げ、迫力ある殺陣や決めポーズでPRしていた。参加4年目で初めて土方役に応募した函館工業高校2年、河野憲嗣君(16)は「心が強い土方への思いは誰にも負けない。今日の演技には納得できなかったけど、いい結果を待ちたい」と話していた。

 審査結果は12日に郵送通知し、24日から稽古を開始。今年の公演は7月5日〜8月10日の全11回。(長内 健)


◎町への愛 町民熱演 「翔民劇団ななえ」公演

 【七飯】町民有志でつくる「翔民劇団ななえ」(山下堅一団長)の公演「春よ、こい」が10日、町文化センターで行われた。町への愛が詰まった感動の舞台を繰り広げ、会場に集まった約500人の観客を楽しませた。

 劇団のメンバー、スタッフは町内に住んでいるか勤務している人だけで、職業は会社員や会社社長、教員、保育士などさまざま。単独公演は4年ぶり2回目。都会から七飯町に引っ越してきた少年が、リンゴ農家の男性と心を通わせるうちに町の素晴らしさに気づき、新しいふるさととして生きていくことを決意するまでを描いた。

 舞台は途中、明治初期に行われた馬車道の建設工事の場面をはさみ、町の歴史の紹介と先人の苦労に思いをはせるという巧みな構成で、ステージに上がった町民はそれぞれの役を演じ切った。

 来場した町内の主婦、浜野啓子さん(68)は「町の歴史を改めて知るいい機会になった。演じている人の一生懸命さが伝わってきた」と感激した様子。山下代表は「1年かけて練習した成果を出すことができた。100点満点の出来」と笑顔だった。 (松宮一郎)