2013年3月14日 (木) 掲載

◎市議会特別委 道新幹線「新駅名は新函館で」

 函館市議会の北海道新幹線新函館(仮称)開業に関する調査特別委員会(出村勝彦委員長)は13日、新駅名を「新函館」とするようJR北海道に求める決議案を、開会中の市議会定例会に提出することを決めた。21日の議会運営委員会を経て、25日の定例会最終日で可決する見通し。早ければ今月末にも、JRや道に申し入れる方針。

 決議文では「新函館」の名称に関し「1998年の駅・ルート公表以降、あらゆる場面で使われ、全国的にも浸透している」と指摘。新駅が道南の基幹駅となることから「仮称ではあるが、これまで名称が広く使われてきたことや、利用者にとってのわかりやすさを考慮し、引き続き『新函館』を用いることはごく自然な流れ」としている。

 その上で名称に加え、新駅では函館駅とを結ぶアクセス列車と新幹線の利便性の考慮、アクセス列車は利便性・快適性が確保された車両とすることを求める。

 決議案提出は2月26日の前回委員会で出村委員長が提案し、全5会派中、市民クラブと共産党が態度を保留していたが、この日の委員会では両会派とも「この方法しかない」などとして、賛成した。

 新駅の名称は開業1年前をめどにJRが決定するが、工藤寿樹市長は「新函館が望ましい」と主張し、JRにも直接考えを伝えている。一方で、新駅が設置される北斗市議会は昨年6月に「北斗函館」を求める決議案を可決している。

 出村委員長は取材に対し「(新幹線は)長い歴史があり、当初は現函館駅に乗り入れる予定だった。JRも経緯は十二分に理解していただいていると思う」と語り、意見が分かれている北斗市に対しては「同じ生活圏であり、より全国的に分かりやすい駅名をという考え方を理解してほしい」とした。(千葉卓陽)



◎風呂難民 深刻化 市内銭湯廃業相次ぐ

 銭湯の相次ぐ廃業を受け、自宅に入浴設備のない“風呂難民”の問題が函館市内で深刻化している。市内ではここ3年だけでも燃料費の高騰などで12軒の銭湯が廃業し、17軒に減った。築年数が古い住宅や市営住宅など風呂を持たない住民から悩みが寄せられている町会では問題解決に苦慮しているが、デイサービスセンターが援助するなど先駆的な取り組みも始まっている。

 昨年、松川町にあった豊作湯が廃業、松川町から銭湯が消えた。町内には風呂のない市営住宅があり、松川町会(深瀬晃一会長)には高齢者から多数相談が寄せられた。

 こうした事態を受け、昨年11月、デイサービスまつかわが「もらい湯」という形で入浴施設を開放する支援を開始。週2回午後5時半〜同8時、風呂がなく介護認定を受けていない高齢者に無料で提供している。

 現在は町内の23人が利用登録し、疲れがたまった体を休めに訪れる。30年前から友人と2人で銭湯を訪れるのが日課という80代の女性利用者は「徒歩で通え、安心して入れる。ありがたい」と感謝。「町会の人とたまに会うと話題はお風呂。娘や息子の家に入りに行っている人もいる」と話す。

 同町会だけでなく大手、大森などの町会でも風呂難民は大きな課題になっている。五稜郭町では昨年、市営住宅内に住民たちが運営する共同浴場がオープンした。

 栄町に住む男性(79)は週2回、バスや市電を利用し、市内の銭湯に通っている。40年前に同町に来たころは近隣の銭湯を日替わりで回っていたといい、「タクシー代や入浴料を含め、1回2000円ほどかけてくる人もいる。年金生活者にとっては大きな出費」と現状を語る。

 各町会のこうした悩みを受け、西部地区協議会(岡嶋一夫会長)の理事会は新年度から、風呂難民の問題について共通理解を図り、解決に向けた取り組みを進めていくことを決めた。岡嶋会長は「一致団結して取り組んでいくべき問題」と声を強める。

 スポーツジムの普及や若い世代の銭湯離れなど、銭湯の経営も厳しいのが現状。利用客を増やそうと、道公衆浴場業生活衛生同業組合函館支部(長南武次支部長)は、子ども無料日を設けたり、スタンプラリーを実施するなど試行錯誤が続いている。

 長南支部長は「重油の高騰で経営が圧迫され、廃業に歯止めがかからないのが現状。若い人にももっと銭湯の魅力を知ってほしい」と思いを語る。(平尾美陽子)



◎市電「1006号車」 酪農公社が落札

 函館市企業局は13日、市電「1006号車」の車体を売却する一般競争入札を同局で実施し、函館酪農公社(柴田満雄社長)が落札した。応札したのは同社のみで、落札金額は10万円。市内中野町で牛の放牧地を眺める休憩場所としての活用を検討しており、1006号車は津軽海峡を見下ろす丘で余生≠過ごすことになりそうだ。

 市民に40年間親しまれた車体の有効活用を模索し、市内に5年間保管することなどを条件に売却方針を決め、鉄くず価格の5万7600円を最低価格に設定して入札を実施した。

 同社の敷地内には「函館牛乳」を製造する工場やソフトクリームなど乳製品を販売する「あいす118」があり、市民や観光客が多く訪れる。柴田社長は「車体を手直しした後に休憩場所として利用したいと考えている。訪れた子どもたちにも喜んでもらえるはずで、牛に関するパネルを展示するなど、食育普及にもつなげたい」と話す。

 今後、同局は同社と正式に契約を締結し、今月22日までに駒場車庫から搬出される見通し。同局経理課は「目的に沿った活用が期待できる企業に落札していただいた」としている。

 1006号車は1955年に製造された東京都交通局の都電「7000形」の1台。70年に市が同形車両10台を購入し市電「1000形」として運用。1006号車は2010年3月末に引退した。(今井正一)


◎函水高出身 作道さん「世界水フォーラム」参加報告へ

 函館水産高出身で酪農学園大(江別)1年の作道(つくりみち)奏太さん(19)が16日、日本代表として派遣された「第6回世界水フォーラム」の参加報告を札幌で行う。これまで成果や感想を報告する機会がなかっただけに、作道さんは「多くの人に水の大切さを伝えたい」と意気込んでいる。

 3年に1度の水に関する世界最大の国際会議で、昨年3月12〜17日にフランス・マルセイユで開かれた。函水高3年だった作道さんは全国6人(中高生)の一人に選ばれた。道内からは一人だけで、「水の歴史や文化」をテーマに兵庫県の高校生と英語で共同発表し、自然と共生してきたアイヌ精神を世界に発信した。

 今回、函水高の後押しもあり、水辺で活動する道内の団体や個人などが一堂に会する北海道「子どもの水辺」全道交流会(実行委主催)での事例発表が決まった。10分間の発表では、現地での活動内容をスライドを使って紹介する。作道さんは「日本にいるときは実感がわかなかったが、飲料水や生活用水の確保、水災害など世界の深刻な実態を学んだ」と振り返る。

 世界大会を経験し「外に出ていって、初めて分かることがある。いろんなところで行動を起こすことが大切」と同年代や後輩にエールを送る。

 高校時代は、植林や大沼の水質調査などに打ち込んだ。大学でも環境問題を専攻しており、「将来はネイチャーガイドなど環境教育の分野で活躍したい」と目を輝かせる。(山崎大和)