2013年3月27日 (水) 掲載

◎旧戸井線遺構「蓬内橋」、無筋コンクリ製だった

 旧国鉄戸井線の遺構のひとつ、函館市瀬田来町のアーチ橋「蓬内橋」(よもぎないばし)の解体工事が今月19日で完了した。物資に乏しい戦時中に建設されたことから、鉄筋の代わりに竹が使われた可能性が指摘されていたが、補強材を使用していない無筋コンクリートであったことが判明した。

 旧戸井線は五稜郭|戸井間を結ぶ単線鉄道として1937(昭和12)年に着工したが、戦局悪化で工事が中断し、戦後も工事は再開されずに終わった「幻の鉄道」。蓬内橋は、長く市道として使用されていたが、老朽化による倒壊の恐れがあることから、市が解体を進めてきた。

 市土木部道路建設課によると、解体したコンクリートからは竹や木といった補強材は見つからなかった。内部すべてにコンクリートが充てんされた状態ではなく、空洞部分もあったといい、「人力での打設で、締め固めが不十分だったと思われる。アーチ橋の支え合う構造上、コンクリートに竹を入れる必要がなかったのでは」と推測する。

 また、コンクリートのサンプルに圧力を掛けて、ひび割れする値を測る圧縮強度試験を実施。結果は現行の基準よりも高い値を示したという。同課は「施工業者からは強度が低いだろうという感触を聞いていたので、高い数値が出るとは思わなかった。ただ、圧縮強度が高くても橋が危険な状態であったことには変わりはない」とする。

 市は、5月中旬から新しい橋の架設工事を実施する予定。瀬田来会館に向かう津波避難路としても重要なことから、幅員は3・1bから5・5bに拡張し、年内にも新しい「蓬内橋」として生まれ変わる。(今井正一)



◎木村さん「新羅之記録」を現代語訳し出版

 市立函館博物館友の会理事で、市内東山在往の木村裕俊さん(65)がこのほど、初期の松前家の家史を記した「新羅之記録(しんらのきろく)」を現代文に訳し、無明舎出版(秋田)から出版した。木村さんは「北海道の中世から近世初期にかけて起きていたことが分かると思う」と話している。

 木村さんは江差町生まれ。鉄道建設技術者として東北などで活躍し、2008年に定年退職。函館に戻り、かねてから好きだった歴史学に力を入れ、文献・史料から郷土史を知ろうと、08年10月に奈良大学文学部文化財歴史学科(通信教育部)に入学。11年に卒業。卒業論文は「文献史料で読み解く渡嶋蝦夷(わたりのしまえみし)」で古代の東北・北海道に住んでいた人たちを解明した。12年に同大で学芸員資格を取得した。

 同大で古文、漢文を習い、北海道最古の文献とされる新羅之記録に興味を持ち、昨年春から約半年掛けて「新北海道史第7巻」にある「森羅之記録・上、下巻」の漢文と訓読文を現代文にした。同出版社が本にできる原稿を募集しており、応募したところ、年末に出版が具体化。3カ月掛けて校正した。

 「道南十二館とコシャマインの乱」「松前慶廣(よしひろ)の誕生と家康公」など計20章で構成。本文では、上段で現代文、下段では人物などに注釈をつけた。さらに、時代背景など特筆することを解説として加えている。単語や人名の解読が難しく、1文に2、3日掛かったことや、松前町に足を運び、地名のあった場所を理解したこともあったという。

 本を手に「松前藩とアイヌ民族との関わりは、決して悲劇的なものばかりではなかったことや、慶廣の政治的手腕が分かったことがうれしい。時代背景まで分かる新羅之記録を楽しんでもらえたら」と話している。

 A5判、132n。1785円。同出版社で注文が可能(рO18・832・5680)。本の問い合わせは木村さん(рO138・55・0384)へ。

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 新羅之記録…1646年(寛永20)年、幕府の命令で、初代松前藩主・松前慶廣(よしひろ)の子・景廣(かげひろ)が松前家系図に記述を補筆して作成。中世〜近世初期の北海道で欠かせない重要史料で「松前国記録」とも言われる。 (山崎純一)



◎湯川海水浴場のネット式プール存続へ賛同呼び掛け

 新年度限りで廃止の可能性が浮上している函館市湯川海水浴場(湯川町3)について、銭亀沢地区の有志がプロジェクトを立ち上げ、ネット式プール存続に向けて動きだした。絵はがき募金と署名活動の2本柱で、1億円を集めて維持費に充てる構想だ。「子どもの命を守るためにネット式プールが必要」と賛同を呼び掛けている。

 銭亀沢—湯川は中学生が自転車で通える距離で、夏の人気スポット。廃止の動きを知った銭亀沢中の安達克佳校長(55)が働き掛け、同校PTA役員会や元PTA会長の佐藤市夫さん(66)らとともに「湯川海水浴場ネット式プールを守る1億円プロジェクト」実行委(佐藤代表)を結成。

 絵はがきは、生徒の作品を採用し全12種類。函館空港2階売店の一角で3枚500円で販売しており、売り上げは全てネットの修繕に使うという。

 また、熊本県の「くまモン」にあやかってプロジェクトのマスコットを「銭もん」と名付け、キャラクターを誕生させてPRする作戦だ。

 銭亀沢地区は前浜での遊泳が禁止。安達校長は「ネット式プールがなくなると、子どもたちが前浜で遊ぶ可能性があり、水難事故があれば困る」と話す。  今後、近隣の小学校や町会、漁協などに支援を求め、11月までに募金と署名を市教委に提出する方針。安達校長は「廃止の動きを知らない人が多い。財政難は分かるが、子どもたちのために何とか残してほしい」と訴える。

 同海水浴場は、維持費が年に約4000万円かかるとして、事業仕分けで「廃止を含む見直しが必要」と判定。他施設への輸送手段を検討した上で、廃止する可能性が出ている。

 プロジェクトの問い合わせは安達校長(TEL090・9512・7330)へ。(山崎大和)


◎北大水産学部で卒業式

 北大水産学部(嵯峨直恆学部長)は26日、函館キャンパス講堂で、卒業式に当たる学位記授与式を行った。学部生218人と大学院生124人合わせて342人が、新たな誓いを胸に学びやを巣立った。

 学生はセレモニースーツやはかま、着物を着て式に臨んだ。嵯峨学部長が学士と修士の学位記を、佐伯浩総長が博士の学位記をそれぞれ手渡した。

 佐伯総長が「新しい人生を夢と勇気、崇高な大志、グローバルな視点を持って歩んで」と励ました。同学部オーケストラの演奏で「都ぞ弥生」を斉唱後、優れた研究成果を上げた院生6人を表彰。嵯峨学部長もはなむけの言葉を贈った。

 応援団3人が登場し、卒業生にエールを送ると、会場は笑顔に包まれた。

 式後は、講堂前で仲間や恩師、後輩との別れを惜しみつつ、晴々した表情で記念撮影。佐々木梨那さん(23)は「おしょろ丸での乗船実習が良い思い出。社会人として責任を持ち、少しでも早く仕事に慣れるよう頑張ります」と話していた。(山崎大和)