2013年3月7日 (木) 掲載

◎「福祉灯油」道南で拡大 08年度以来7町で復活

 灯油価格が高騰する中、道南では低所得者などを対象に灯油購入費を一部助成する「福祉灯油」が広がりを見せている。原油価格が高騰した2007、08年度以来、制度を復活させた自治体もあり、それぞれ灯油購入券や現金支給などで低所得者の負担軽減を図っている。

 今回の灯油高騰を受けて、道は福祉灯油を行う自治体に対する助成の拡大を決めた。道南は木古内町以外の14町が道の交付金を活用し実施している。

 08年度以来、福祉灯油を復活させたのは長万部町、鹿部町、江差町、乙部町、上ノ国町、せたな町、厚沢部町の7町。いずれも低所得者の生活へ配慮したほか、道の助成拡大を受けて実施に踏み切った。

 一方、八雲町や今金町は灯油高騰にかかわらず07年度以前から福祉灯油を実施。また、北斗市は旧上磯町時代から市社会福祉協議会が歳末ふれあい募金などを財源に独居高齢者や遺児などに灯油代を含めた生活支援として見舞金1万2000円を支給している。

 森町や松前町、奥尻町などは09年度以降毎年度福祉灯油を実施。松前町は今後も灯油価格の高値が続くとみて、条例を制定し次年度以降も実施していく考え。福島町は09年度以降、灯油価格の動向をみながら毎年度実施を判断し、今回は10年度以来2年ぶりに行った。

 各町とも対象は65歳もしくは70歳以上の非課税世帯を基本に一人親や重度障害者の同居世帯も対象としている。

 助成内容は木古内町や松前町、江差町、今金町などが灯油券(助成券)を配布し、50リットル〜200リットル分の灯油購入費用を支援。八雲町や乙部町などは現金支給し、支給額は5000円〜1万円だ。鹿部町は商工会加盟店で使用可能な7000円分の商品券を配布する。

 各町とも申請が必要で、奥尻町は28日で受け付けを終了。今月中を締め切りとしている町が多く、申請手続きをするよう呼び掛けている。

 道経済産業局によると道南の灯油価格は2月25日現在、1リットル当たり102円。(鈴木潤、田中陽介、小杉貴洋、森裕次郎)



◎大病を乗り越え慰問活動に全力

 かつて歌謡教室を主宰していた倉田憲さん(77)=函館市日の出町=は、大病を乗り越え、教え子らとともに道南各地の福祉施設などで年間30回前後の慰問活動を行っている。倉田さんは「自分たちが歌を届けることで、施設のみなさんが笑顔になってくれることがうれしい。体の続く限り頑張りたい」と意欲を見せている。

 福島町生まれの倉田さんは、若いころから歌が得意で、町内外の大会に出場するなどして腕を磨いていった。知内町生まれで同年代の北島三郎さんと競い合ったこともあり、現在も親交が続いているという。 その後、函館市内で建築会社を経営する一方、倉田憲音楽事務所を立ち上げ、演歌歌手の大石まどかさんら、プロ歌手からアマチュアまで多くの歌い手を育てた。

 しかし、2001年に脳梗塞で倒れると、続いて心臓のバイパス手術も行うなど杖と車いすが必要な生活を強いられることに。それでもリハビリを経て回復を果たすと、「自分に出来るのは歌を届けることしかない」と、教え子たちに呼び掛け、03年から福祉施設への慰問活動を本格化した。

 現在は道南各地から年間30回ほどの依頼がある。中でも活動のスタート地点となった老人保健施設「響の杜」(函館市陣川町)には、毎年2回の訪問を欠かさず、今年の2月で記念すべき20回目を迎えた。倉田さんは「どこに行ってもみなさんが喜んでくれるので、自分自身も元気をもらっている。ライフワークとし、できる限り続けていきたい」と意欲を見せている。(小川俊之)



◎画家ヴィジェ・ルブランから欧州の歴史まとめる

 美術史学会会員の佐々木慶一さん(28)=函館市時任町=が2月25日、18世紀のフランス画家ヴィジェ・ルブランについてまとめた研究書を刊行した。佐々木さんは「ヴィジェを通じてヨーロッパの歴史の流れを感じてほしい」と話している。

 佐々木さんは函館西高校を卒業後、武蔵野美術大学、パリ国立高等美術学校、金沢美術工芸大学で美術史の研究を進めてきた。日本ではあまり研究されていないフランス宮廷に興味を持ち、研究成果を形に残そうと刊行を決意。構想から執筆まで約2年間を掛けた。

 今回3冊目の刊行となる研究書は「宮廷の画家ヴィジェ・ルブラン 描かれた王妃マリー・アントワネットの祖国」(一粒書房、A5版、108ページ)。マリー・アントワネットら多くの王族の肖像画を描いたヴィジェは、ヨーロッパで12年間の亡命生活を送った。そのうちの1789年を中心に、フランスの皇太子フランセスコの肖像画を検証するなどしてヨーロッパの国際情勢などを明らかにしている。

 佐々木さんは「専門書としてだけではなく、ヴィジェのスケールの大きさを知ってもらうきっかけになれば」と呼び掛けている。

 同書は1冊800円、インターネット販売のみ。希望者は同書房ホームページ(http://www.ichiryusha.com/book/)、問い合わせは佐々木さん(Eメールapm06106@gmail.com)へ。(柏渕祐二)


◎学校環境整備前倒し 函館市

 函館市は6日、2012年度補正予算案に学校の耐震改修費や校内のインターネット環境整備費など約9億1100万円を、前倒しして盛り込むと発表した。政府の緊急経済対策を受けて追加要望していた事業が認められたためで、すでに補正予算に盛り込んでいる耐震改修費などに上積みする。また、新年度予算案で緊急雇用対策費として5340万円を追加し、4事業で10人の新規雇用を見込んでいる。

 追加補正するのは、市立小、中、高校66校の校内LAN(構内情報通信網)新設で5億2881万円、青柳小校舎の耐震改修分1億2286万円など。湯川小、本通小など4校の体育館暖房や、中部小のトイレ改修なども計上した。

 市教委や市財政課によると、青柳小の耐震改修費は2月時の補正でも計上しており、2段階に分けて国に補助を要望していた内容が認められた。校内LANはコンピュータ教室にとどまっていたインターネット接続を、各教室から可能にする。通常より市の負担が少なくて済む補助制度を活用するため、「市の一般財源からの持ち出しはわずかな額で収まる」(市教委)としている。

 また、新年度予算案では3年後に控える北海道新幹線開業に向けた啓発グッズの作成や、函館スイーツの認知度アップを目的とした市場調査や商品力向上セミナーの実施、函館をメーンとした旅行ギフト券の開発など4事業分を増額補正し、一般会計の総額を1297億4840万円とする。市は本年度補正予算と合わせ、8日の定例市議会本会議で提案する。(千葉卓陽)