2013年4月8日 (月) 掲載

◎参加者から批判や懸念 自民党TPP交渉で懇談会

 安倍晋三首相のTPP(環太平洋連携協定)交渉参加表明を受け、自民党は7日、函館市内のホテルで、渡島・桧山管内の首長や一次産業関係者らと意見交換する懇談会を開いた。同党は「聖域は日本側が造るもの」と理解を求めたのに対し、出席者からは参加表明に対する批判や懸念の声が寄せられた。

 党道連が主催し、6日の旭川、岩見沢に続く開催。党TPP問題対策本部長の今津寛衆院議員、党農林部会長の小里泰弘衆院議員、道8区選出の前田一男衆院議員らが同席。管内からは自治体首長や農業団体関係者ら約80人が出席した。

 党TPP対策委員会は安倍首相の参加表明に先立ち、コメ、麦、牛肉、乳製品、砂糖などの重要農産品や国民皆保険制度に関し「聖域(死活的利益)の確保を最優先し、確保できないと判断した場合は脱退も辞さないものとする」と決議している。

 小里氏は「聖域は米国から与えられるものではなく自ら造っていくもの。国益を損なうものは譲歩せず、守れなければ交渉から脱退すればいい」と述べ、参加者に理解を求めた。

 これに対し、道南地区農協組合長会の山岸栄一会長は「(聖域をめぐる)日米の解釈が真っ向から対立している。米国のスタンダードは許すべきでなく、交渉参加には断固反対」と批判。JA新はこだての畠山良一組合長は「民主党が交渉参加に入るとしたことで(昨年の衆院選で)自民党に託した」と思いを述べ、憤りをあらわにした。

 また白井捷一長万部町長は「国益が守れなければ撤退も辞さないと言うが、本当に撤退できるのかと思う」と指摘した。小里氏は「最終的にサインするしないの権利は当然ある。結果がすべてで、アリバイ作りに終わらないよう頑張りたい」と述べた。

 山岸組合長は終了後、取材に対し「JAグループとしては、今までの交渉を見ていると不安。聖域を自分たちで造るということには期待したい」と述べた。前田衆院議員は「農業関係者の心配はよく分かる。国益を勝ち取る最善の方法となるスタートにしていきたい」と話した。  (千葉卓陽)



◎日銀函館支店 120年の歴史詳しく

 日本銀行函館支店(中川忍支店長)は、4月1日に開設から120周年を迎えたことを記念して同支店のホームページ内に特設サイトをオープンさせた。資料と貴重な写真を掲載し、道内経済の中心を担った函館の歴史と、同支店が果たした役割を紹介している。同支店では「今後も写真などを追加しながら資料価値の高いサイトに充実させていきたい」としている。

 函館支店は1893(明治26)年4月1日に函館出張所として開設。現在ある全国32支店の中では82(同15)年に開設された大阪支店に次いで2番目に長い歴史を持っている。

 特設サイトには年表や支店のあゆみ、店舗の移り変わりなどを掲載。年表では世の中の出来事と支店の歴史を関連づけて紹介している。

 支店のあゆみでは、支店開設時の様子のほか、出張所から北海道支店に昇格した背景などを解説。また、明治と大正時代の2度函館大火で被害に遭ったことも当時の資料をもとに詳しく記している。

 また、建物の移り変りを同支店に残る写真で紹介。末広町あった初代の店舗から、現在支店がある東雲町の建物まで振り返ることができる。

 同支店ではそのほか、6月に記念見学会などを開き、120年の歴史を紹介する予定。同支店のアドレスは、http://www3.boj.or.jp/hakodate/  (松宮一郎)



◎北海道犬 凛々しく

 【北斗】天然記念物北海道犬保存会函館支部(花巻幸博支部長)は7日、北斗市本郷で第64回展覧会及び第39回獣猟競技会を開催した。

 同会は北海道犬の保存や資質向上を目指すことを目的に活動。展覧会や競技会を通じて会員同士の交流を図り、保存活動に取り組んでいる。

 この日は道内の他、岩手や青森など本州からの参加も含め、総勢92頭が出場。展覧会では幼犬や若犬、成犬などのクラスに分かれ、体型や大きさ、毛並み、耳の角度などを基準に審査が行われた。

 また、獣猟犬としての資質を保持することを目的とした競技会も開催。檻に入ったヒグマに対峙した際の勇猛果敢さや機敏さ、慎重さなどを競い合った。

 同支部の花巻支部長は「北海道犬は猟犬ということもあり、飼い主にとても忠実であることが魅力のひとつ」と話していた。  (森裕次郎)


◎娘から見た父・啄木 文学館で特別企画展

 函館ゆかりの歌人、石川啄木(1886〜1912年)と妻節子(1886〜1913年)、長女京子がそれぞれ「親子」を思い慕った直筆の書簡や、京子の家族写真などを紹介する「石川啄木の遺児たち」が7日、函館市文学館(末広町22)で始まった。父となった喜びから病で父としての役割を果たせないもどかしいさをしたためた啄木、偉大な歌人を持つ京子がつづった日記や短歌が並び、来館者は心を打たれている。

 同館開館20周年記念特別企画展として開催。写真は、かっぽう着姿の京子など4点。成人期の京子の写真は珍しく一般公開は初めて。京子の夫・正雄の同僚で2人の仲人を務めた常野知一郎の四男・正紀さん(千葉県在往)が所蔵していた。昨年末に函館市中央図書館の函館啄木文庫に寄贈され、今企画展開催のきっかけとなった。

 啄木の資料は日記や宮崎大四郎(郁雨)に宛てたはがきなど8点。京子の誕生を「いかなる語を以ても表はす事能(啄あた)はず」とし「あゝ明治三十九年十二月卅日、石川啄木は京子の父となりぬ」を文字を大きくして書いている。その後、病床で京子の成長を見つめるはがゆさを歌にしている

 京子の資料は、没後に正雄が発見した日記やノートなど6点。「詩歌を集む/つゆ草」は父の歌などを筆写し、父や母を思って書き留めた「歌稿ノート」「歌手帳」は、啄木が使用していたものと同じような形のものを使用している。同館の藤井良江館長は「直筆から伝わる3人の思い、啄木の父としての姿を感じてもらえれば」と話している。

 10月9日まで。入館料は一般300円、小学生から大学生まで150円(函館市内に在往、通学する小中学生は無料)。問い合わせは同館(電話0138・22・9014)へ。

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 石川京子…1906年12月30日生まれ。5歳の時に啄木が亡くなり、その2カ月後、啄木の次女・房江が生まれる。翌年5月5日に節子が死去。遺児たちは函館で育ち京子は2人の子供を産むも、30(昭和5)年23歳で病死。房江も18歳で亡くなる。 (山崎純一)