2013年5月8日 (水) 掲載

◎「津波で全て流されたわけではない」 南三陸町の後藤さんが講演

 函館市東川町の本願寺函館別院(西別院)で7日、宮城県南三陸町で東日本大震災の体験を語り継ぐ活動をする後藤一磨さん(65)の講演会があった。後藤さんは津波が押し寄せた当時の様子とその後の避難生活を振り返り、「津波で家も車も失ったが、全て押し流されたわけではない。人と人との絆は残った」と語った。

 渡島、桧山管内にある浄土真宗本願寺派22カ寺の女性代表でつくる函館組仏教婦人会連盟(島田重子会長)が、研修会の講師に後藤さんを招いた。後藤さんは震災後、宮城大学の非常勤職員として働くかたわら、語り部ガイドとして同町を訪れる人たちに震災の様子を伝えている。

 地震発生直後、半世紀以上前のチリ地震津波の記憶がよみがえった後藤さんは、すぐ自宅に戻り、妻と息子とともに高台に登り、難を逃れた。「津波に飲み込まれた集落を見ても夢のようで、まるで実感がわかなかった。自然の大きな力を感じずにいられなかった」と振り返った。

 震災から2年以上が経過。「津波が何を伝えようとしたのかが、ゆっくりと見えてきた」という。「ボランティアやみなさんの温かな支援で人と人との絆を感じることがきでた。海ではカキやワカメが今まで以上に大きく育っており、50年若返ったよう。海から被害を受けたが、希望の海でもある」と語った。(松宮一郎)



◎大川町にボウリング場

 全国各地でボウリング場「T・T BOWL」を展開するトコリ・グローバル(和歌山県有田市)が今夏、函館市大川町に道内第1号店をオープンさせる。施設にはコンビニやカラオケボックスなども入居する予定で、8月1日のオープンを目指している。

 同社は全国で43のボウリング場のほか、スポーツ、文化施設などを展開する業界大手。座席部分を仕切って個室感覚でボウリングを楽しむことができるようにしているのが特徴で、人気を集めている。大川町の施設も同様に「T・T BOWL」として開店させる。

 施設ができるのは八幡通沿いのNTT大川ビルに隣接する敷地。NTTコミュニケーションズの所有で、これまでは駐車場として利用していた。

 NTTグループの遊休地の活用、開発を進めるNTTアセット・プランニング東海支店(名古屋市)が建物を建設し、トコリ・グローバルが施設を運営する。敷地面積は約3100平方b、建物は鉄骨2階建てで、延べ床面積は約3700平方b。2階部分が24レーンのボウリング場。1階部分にコンビニが入居、40〜50台分の駐車場も確保する。そのほか、カラオケボックスや飲食店を併設する予定。

 建物は3月に着工。今月に入り本格的な工事を開始した。トコリ・グローバルは「道内でもほかに条件が合うような物件があれば出店していきたい」としている。(松宮一郎)



◎4月からの低温と日照不足 道南農作物 影響じわり

 4月中旬から続く低温と日照不足の影響で、道南でも農作物の生育や農作業にじわりと影響が出てきた。長雨で圃場(ほじょう)が乾かないため、ジャガイモの植え付け作業が遅れているほか、水稲やビートの苗の生育も停滞。農家は寒い春≠ノ気をもむ日々が続いている。

 渡島農業改良普及センター(北斗市)によると、1日現在、早出し出荷する函館市などのジャガイモの植え付けが平年より3日遅れ。育苗中の水稲の生育は1日遅れ、リンゴも発芽が7日遅れている。「連休中もずっと雨だったので、作業は進んでいない。何とか好天が続いてほしい」と同センター。

 桧山振興局は「融雪の遅れ、4月以降の断続的な雨と低温により全般的に遅れている」(農務課)。1日現在、水稲の生育が4日、秋まき小麦が5日、ビートが3日遅れているほか、ジャガイモの植え付けはマルチ栽培が8日遅れ、露地栽培は始まっていない。

 厚沢部町の農家(38)は「イモ植えとビートの移植遅れが心配。また、低温の影響で4月下旬に播種(はしゅ)した春まき小麦の発芽も遅れている。今年も天気に泣かされるのでは」と嘆く。

 同センターが1日発表した技術対策では、水稲は保温資材や加温器具で夜温を確保することや、ジャガイモは圃場が乾き次第、土壌の排水を良くするため軽く耕すなど適切な対応を取るよう要請。施設野菜はハウス内の湿度を下げ、かん水は少量多回数とし地温を下げないようにする。トンネル・露地野菜も土壌水分に注意するよう促した。

 北斗の4月中旬の平均気温は平年を1・3度、下旬は1・0度それぞれ下回った。函館海洋気象台によると、低温は7日までで、8日の函館の最高気温は17度を予想。ようやく平年並みの春が到来しそうだ。(山崎大和)


◎道南GW寒くて客足伸び悩む

 道南の今年の大型連休(4月27日〜5月6日)は、ぐずついた天候や肌寒い日が続き、多くの観光名所で客足が伸び悩んだ。特にサクラの開花遅れの影響は大きく、多くの関係者からは「サクラさえ咲いてくれれば…」と恨み節も聞こえる。

 函館海洋気象台によると、期間中の一日平均気温は函館8〜9度で、例年より2度低かった。最高気温が3月下旬並みの6・8度と極端に低かった日もあり、「全体として4月上旬〜下旬並みの低温」という。

 このため、各観光地は集客に苦戦。連休期間中の五稜郭公園の来場者は約6万7400人で、前年同期比1万4000人減だった。「異例の低温が影響した」と同公園管理事務所。五稜郭タワーも同2900人減の4万8061人で、担当者は「寒くて個人客が激減した」と嘆く。

 函館市文化・スポーツ振興財団が管理する芸術ホールなどの駐車場も、9連休だった昨年より756台少ない1万1525台と伸び悩んだ。金森商船の赤レンガ倉庫駐車場の利用台数は、同8%減とやや低調。七飯町大沼公園の駐車場は計2196台が利用したが、管理する自然公園財団大沼支部は「好天ならあと1000台は来ていたのでは」。

 一方、前年より客足が伸びたのは函館山ロープウェイ。悪天候でも霧がかからず景色がよく見えたため、搭乗者は同1万人以上増の6万8581人を記録し「近年にない集客」とみる。松前公園も、桜まつりを始めた29日から8日間で同15%増の約8万7700人。担当者は「昼過ぎから好天になる日が多かった」ことなどを理由に挙げる。  期間中、函館市内で交通渋滞はほとんど見られず、函館朝市など一部の観光地で混雑した。道警函館方面本部交通課によると、札幌方面に向かう国道5号では6日、七飯町西大沼—森町赤井川間で午前2時半ごろから約1時間半にわたって最長8`の渋滞。高速道では3日、大沼公園インターチェンジ出口から函館方向に2`の渋滞が起きたという。(長内 健、虎谷綾子、柏渕祐二)