2013年5月9日 (木) 掲載

◎大間原発差し止め訴訟「世論の動向見極める」

 函館市が大間原子力発電所(青森県大間町)の建設差し止めを求めている問題で、工藤寿樹市長は8日、差し止め訴状原案を作成した弁護団と会談した。市長は地方自治体の存立権や、市が建設に同意する必要性に触れた訴状内容を評価するとともに、提訴のタイミングとして、原子力規制委員会が7月に施行する新たな規制基準にかかわり、「世論の動向を見極めた上で判断したい」と述べた。また早ければ6月下旬にも、福島第一原発の周辺自治体を視察する意向を明らかにした。

 市は昨年12月に訴訟準備経費約2300万円を計上し、1月に弁護団10人と契約。3月末に原案=別表=をまとめて以降初めての懇談で、弁護団代表の河合弘之弁護士(東京)、海渡雄一弁護士(同)ら5人が市役所を訪問、約1時間協議した。

 河合弁護士らは訴状作成にあたり、今年2、3月に福島県浪江町と南相馬市を視察したと報告。「本当に原発事故が起きると、自治体の存立が危うくなる。自治体にも人格があり、市民の生命や身体を守る権利と義務がある」と指摘。

 さらに函館市特有の事情として、大間原発で事故が起きた際に避難ルートが国道5号しかないとし、「事故が起きたら国道5号は完全に渋滞で動けなくなり、車が乗り捨てられる状況になることを確信した」と述べた。

 会談終了後、河合弁護士は自治体が原告となる差し止め訴訟を「極めて画期的。これまではすべて市民が原告で、函館市規模の都市が起こす意義は非常に大きい。裁判所も決して軽視しないだろう」と評価。海渡弁護士は原発事故が起これば自治体活動全体が危機に瀕(ひん)するとし、「壊滅的なことが起きることは、浪江町や南相馬市の視察で裏付けることができた」とした。

 工藤市長は6月の定例市議会終了後をめどに浪江町や南相馬市を視察するとし「事故の状況や、30キロ圏内としてどういう被害があったのか自分の目で確認したい」と表明。提訴時期については、原子力規制委員会が7月に示す新たな規制基準の動向を見極めるとする従来の方針を強調。「新基準でどうなるか、世論の動きを見極めたい。(提訴するとなれば)7月以降となるのは間違いないが、時期を固定化して考えていない」と述べるにとどめた。(千葉卓陽)



◎サクラ前線 やっと函館に

 サクラ前線待ってました−。函館海洋気象台は8日、函館でサクラ(ソメイヨシノ)が開花したと発表した。開花は平年より8日、昨年より6日遅く、過去30年では1984年の23日に次ぐ遅さ。市民や観光客も、開花の便りにようやく顔をほころばせた。

 開花は当初、大型連休中と予想されていたが、寒さが続き遅れていた。この日の函館は昼過ぎから気温が上昇、最高気温は前日より8・3度高い18・7度に。同気象台の職員が午後3時半、五稜郭公園内の標本木を調べ、5、6輪の花が開いているのを確認、開花を宣言した。

 同公園では記念写真を撮る観光客も目立った。札幌から来ていた柴田敏之さん(65)は「お堀と五稜郭タワーと花を収めた写真が撮れたぞ」と満足そうだった。

 同気象台によると、9、10日も最高気温16〜18度と暖かくなりそう。また日本気象協会は8日、サクラの開花予想を発表し、江差は5月10日とした。(長内 健)



◎大沼公園駅に特産品 期間限定アンテナショップ設置へ

 【七飯】北海道新幹線開業を見据えた特産品や土産物のPRに役立てようと、町がJR大沼公園駅内に設置するアンテナショップが、10日にオープンする。町商工観光課は「観光客の乗降が多く、商品の反応を見る上で最適な場所」としている。

 ショップは同駅舎内の旧売店スペースを活用し、営業時間は毎日午前9時〜午後5時。設置期間は10月27日までの予定という。事業の運営はNPO法人大沼・駒ケ岳ふるさとづくりセンターが受託した。

 ショップでは、3月下旬に誕生した「ななえ町物産振興協議会」(山川俊郎会長)の会員が生産、製造した商品を中心に販売する。同協議会には加工品製造業者だけでなく、農家や酪農家も幅広く加盟。同課の田中正彦課長は「すでに新商品を開発した会員もおり、新商品をアンテナショップで提供することでPR効果を狙いたい」と話している。(森裕次郎)


◎GW航空各社函館—羽田線 前年上回る4万人

 航空各社はゴールデンウイーク期間中(4月26日〜5月6日)の利用実績をまとめた。函館—羽田線は、運航する3社の合計が前年比4・9%増の3万9995人となり、前年を上回った。連休が前半と後半に分かれ、海外旅行が敬遠された結果、函館を訪れる人が増えたとみられる。就航から1カ月を迎えた日本航空の函館—伊丹線は、搭乗率が90・5%と好調な出だしとなった。

 函館—羽田線は、全日空(ANA)と日本航空(JAL)、AIRDO(エアドゥ)の3社が運航。大型の機材を投入し、提供座席数を増やした全日空は、同13・2%増の2万1923人と好調。ANAセールス函館支店は「羽田線は販売面を強化したことが功を奏した」と話す。

 日本航空は同1・9%減の1万1161人。提供座席数を減らしたためで、ほぼ前年並み。ただ搭乗率は84・6%と昨年(71・8%)よりも高かった。AIRDOは同6・4%減の6911人と低調。搭乗率も72・4%だった。

 3社の合計は昨年の3万8127人より1868人増えた。日本航空函館支店では「函館からの利用は30周年を迎えたディズニーランドやスカイツリー目当てが多かったようだ」としている。

 好調だったのが日本航空の函館—伊丹線(50人乗り、1日1往復)。搭乗率は90・5%で、ほぼ満席状態での運航となった。就航した3月31日から4月30日までの1カ月の利用者は2369人で、搭乗率は76・4%。同支店は「利用が減る4月としては高い水準。さらに需要喚起に努め、1年を通して80%以上の搭乗率を目指したい」とした。(松宮一郎)


◎昨年度の献血2万人割る 函館センターまとめ

 北海道赤十字血液センター函館事業所(函館センター、木下透所長)がまとめた昨年度の献血実績は1万9770人となり、平成に入り初めて2万人を下回った。管内の人口老齢化が要因とみられ、函館センターは「複数回献血者を増やしていきたい」と対策を一層推進する考えだ。

 同センターによると、昨年度実績は前年度比833人減となり、3年連続の減少。内訳は200ミリリットル献血が同188人増の3508人、400ミリリットル献血が同807人減の1万3379人、成分献血が同214人減の2883人。

 年齢別では、30代(30〜39歳)が同415人減と減り幅が大きかった。同センターは「健康体で社会的にも動きやすい30代が離れていったとすると、10〜20年後まで影響が大きい」と危機感を示す。

 要因について、函館市を除く渡島、桧山管内の市町では少子高齢化の進行が著しいことを挙げる。また、服用する薬によっては献血ができないケースもあるという。

 「年に1回だけでなく、複数回献血してもらえるよう呼び掛けていきたい」(同センター)とし、複数回献血クラブやダイレクトメールなどの手段を用いて協力を要請する。

 同センターは本年度から、若年層対策として小中高生を対象に「献血セミナー」も開始。保村毅事業課長は「移動献血車の運行を、平日から土日曜に一部移行することも検討したい」と話している。(山崎大和)