2013年6月15日 (土) 掲載

◎北極海の生態系変化調査へ…北大「おしょろ丸」出港

 北極の海洋環境の変化が生態系にどのような影響を与えているかを調べる、北大水産学部の練習船「おしょろ丸」(高木省吾船長、1396d)の調査隊が14日、函館港を出港した。学生や研究者29人が乗り込み、約1カ月半の日程でベーリング海や北極海で海洋観測にあたる。

 調査隊を率いる北大大学院水産科学研究院の平譯享准教授によると、北極海では地球温暖化の影響などで海氷が激減しており、生態系や食物連鎖に異変を与えることが懸念されている。ベーリング海の動物プランクトンや、それに依存するスケトウダラやサケが北極海に入り込めば、漁業資源にも影響を与える。

 現おしょろ丸の北極調査は1992年から始まり、今回で6回目。出港式で水産科学研究院の桜井泰憲副院長は「過去の観測データと比較することで、現在の北極海がどう変化しているかを知ることができる。大きな成果を挙げてほしい」と学生たちを激励した。

 北大水産学部海洋生物科学科4年、河野唯さん(21)は「自分の研究のためのサンプリングは初めて。不安の方が大きいが、2カ月後にしっかり研究ができるように試料を集めたい」と意気込んでいた。

 調査隊は米アラスカ州ダッチハーバー(ウナラスカ島)に27日入港し、その後北極海やベーリング海で海洋観測や魚類・鯨類などの調査にあたる。8月6日に帰港する予定。(高柳 謙)



◎新島襄の歩み知って…函館博物館で企画展

 新島襄(同志社大創立者)ゆかりの品を展示する企画展「新島襄と幕末の箱館」が14日、市立函館博物館(青柳町17、阿部司館長)で始まった。書や遺髪など約100点を並べている。9月1日まで。

 新島が函館から米国へ密出国した日に合わせてスタート。館内でセレモニーがあり、工藤寿樹市長が「新島の情熱、これを支えた函館の人々の気概について振り返ることは有意義」とあいさつ。学校法人同志社(京都)の大谷實総長が「函館は同志社発祥の原点。盛大に開催されたことは感慨もひとしお。市と連携を強化していきたい」と期待を込めた。大谷総長ら5人がテープカットして祝った。

 展示では、新島の脱国時の扮装(ふんそう)写真や、函館をたつときに詠んだ和歌、上海で断髪した際の遺髪のほか、妻八重の自筆の和歌なども紹介している。  同大卒業生の大江哲男さん(81)=函館市美原=は「これを機に、市民が認識を深めてくれれば。同志社の絶大なる協力にも感謝したい」と話していた。

 放映中のNHK大河ドラマ「八重の桜」で新島八重が主人公を務めていることや、来年で新島が脱国してから150年の節目を迎えるのを前倒しして、企画展を開催した。

 入館料は一般300円、大学・高校生150円、小・中学生100円。月曜定休。15日には午前10時と午後1時半の2回、解説セミナーを予定。申し込みは同博物館(TEL0138・23・5480)へ。(山崎大和)



◎地域の観光案内人育成…渡島総合振興局が8月に塾開講

 渡島総合振興局は本年度、2016年3月の北海道新幹線開業を見据え、観光に携わる地域の中核人材の育成事業をスタートさせる。道南各地から新幹線時代を担う精鋭を選び、観光コンシェルジュ(案内人)としてのスキルアップを図る計画だ。8月下旬に「新たな観光地域づくり塾」を開講し、先進地の事例や観光メニューづくり、情報発信方法などを学んでもらう。

 同振興局が進める「道南観光プラットフォーム構想」の一環。構想は多様化する観光客のニーズへの一元的な対応と、開業効果を継続的に道南全体に行き渡らせることが目的。道南を4つのエリア(函館、環駒ケ岳、西部9町、渡島北部・桧山北部・後志南部)に分け、それぞれに情報やサービスをワンストップで提供する窓口の設置を目指している。

 「新たな観光地域づくり塾」に参加するのは各エリアで今後、コンシェルジュなどとして活躍が期待されている約20人。観光客と地域をつなぐ役割を担うコンシェルジュは、魅力的な観光地づくりには欠かせない存在で、人材育成が急務となっている。人選は「各エリアの組織と協議中」(商工労働観光課)という。

 塾は3月上旬までの半年間で計6回を予定。カリキュラムは、先進地域の事例として熊本県阿蘇市の滞在型観光について研究するほか、観光メニューづくり、効果的なプロモーションの手法なども学ぶ。旅行商品に関わるリスクマネジメントといった専門的な分野に及ぶのも特徴。

 人材育成のほか、道南の魅力を観光客に訴えるイメージ戦略も検討する。各自治体職員と塾の参加者がグループワーキングで議論し、エリアごと4つのイメージと道南全体を一体的に表すイメージを策定する。今後作製するリーフレットなどに活用する考えだ。

 同課では「観光客に道南の魅力を伝えたり、サービスを提案したりするには、各エリアに同じスキルを持つ人材がいることが重要。事業を通して4エリア間の連携強化につなげていきたい」としている。(松宮一郎)


◎「憲法と法律は全く違う性質」…北教組学習会で逢坂氏

 北教組渡島支部主催の憲法学習会が14日、函館市五稜郭町の渡島教育会館で開かれた。民主党の逢坂誠二前衆院議員が講師を務め、「憲法に対する認識が不足したまま議論されることに危機感がある。憲法と法律が全く違う性質のものであることを認識してほしい」と述べた。

 逢坂氏は、憲法は権力や国家に対する歯止めであり、社会秩序の維持のために国民を制限する法律とは性質が違うと指摘。「権力のトップである総理自身が憲法改正を言うのは憲法の尊重、擁護義務を定めた99条に反する」と批判した。

 さらに「『憲法を国民の手に取り戻す』といっているのは隠れみの。権力者が自らへの縛りを緩めてくれというのは立憲主義への理解不足だ」と述べた。改憲派、護憲派といった色分けで進められる憲法議論に対しても違和感を示し「多くの国民は憲法議論に対する免疫力がないが、認識を高めていくことが必要だ」とした。(今井正一)