2013年6月18日 (火) 掲載

◎解禁半月 スルメイカ水揚げ好調

 道南スルメイカ漁の解禁から半月が過ぎ、水揚げが好調に推移している。しかし、燃油価格は1リットル当たり90円台の高止まりの状態が続く。漁業者の経営を圧迫する厳しい状況は変わっていない。

 函館市漁協(橘忠克組合長)によると、組合員に販売するA重油価格は16日現在、同90・5円(税別)と据え置きとなった。

 23隻が所属する函館小型いか釣漁業部会長の佐藤豊次さん(63)は「大漁ではないが、イカが捕れているから何とか操業に出られる」と話す。松前沖での1回の漁に使う燃料は約500リットル。「このまま推移すると、かなり経費がかさむ。イカが見えなくなったり、値崩れを起こしたりすれば、休んだ方がいいのでは」と気をもむ。

 市水産物地方卸売市場(豊川町)が今月1〜15日に取り扱ったスルメイカは前年同期を10トン上回る91トン。1キロ当たり平均卸売価格は同14円安の423円。量、価格とも2008年以降では上から3番目。

 中島廉売内の紺地鮮魚(中島町22、紺地慶一社長)では17日、いけすイカ1キロ当たり(約5匹)1500円で販売。同店は「今年は例年より魚体が二回りほど大きく、売れ行きも上々」という。

 道総研函館水試(湯川町)の澤村正幸研究主任は「漁期開始直前に水温が急激に上昇し、思っていたより道南への来遊が早かった」と説明。「当面は日本海側の漁獲が続くだろう。ただ、水温が高めになってきているので、群れの通過が早まったり、回遊が沖寄りになって沿岸近くの漁場形成が妨げられたりする可能性があり、注意が必要」と話している。(山崎大和)



◎かもめ島や夕日楽しんで 江差に遊覧船

 【江差】江差港マリーナを発着点とする民間の遊覧船が20日開業する。沖合からの夕日やかもめ島など、江差ならではの眺望のほか、船内では風情ある江差追分の演出も。江差では初めての取り組みで、夏観光の目玉となりそうだ。

 森町を拠点に噴火湾と江差で遊漁船を運航してきた、阿部健史さん(62)が、江差に住まいを構え、遊覧船事業を展開する。

 阿部さんはこれまで25年間、江差に通い「古くは北前船で栄えた地域。姥神大神宮渡御祭や江差追分などその伝統を守り続ける姿や、人々の熱意にほれ込んだ」と妻の舞子さん(63)と移住を決意。6月1日付で、遊覧船事業にかかる国からの許可を受け、試験運航に余念がない。

 船は25フィート(全長約7メートル)で船長の阿部さんを含め、定員は7人(小学生以下は2人で1人分)。沖合1・5キロの約20分コースで、開陽丸や北前船などの歴史を勉強し「沖合から江差の街並みを眺め、命がけでこの地にたどりつき、力強く生きた先人の思いに触れてほしい。そして最高の景色の中で互いに心通わせて会話を楽しみたい」と阿部さん。

 江差追分への思い入れも深い。「いいことよりもつらい苦しいことが多い人生を唄うこの歌詞が好き。自分の人生と重なり、心に響く」と語り、「念願の夢がかなう。人生の新たな出発と思ってこの地域のためにも微力だが頑張りたい」と意気込んでいる。

 運航時間は午後2時から日没まで。大人1200円、小中・高生600円。2人から。悪天候時中止、今季は9月22日の江差追分全国大会までの予定。

 予約は阿部さん(TEL090・3779・4875)か、マリーナ隣接の「えさし海の駅」(TEL0139・52・5522)へ。(田中陽介)



◎空き家適正化へ条例検討 所有者に措置命令

 函館市議会第2回定例会は17日から一般質問が始まり、市は市内に点在する空き家の適正管理に向けた条例制定を検討していることを明らかにした。年内の提案を目指す方針で、市民の生活環境の保全に加え、適正に管理していない所有者に対しては措置命令とともに、行政による代執行実施などを盛り込む考えだ。

 松宮健治氏(公明党)の質問に対し、戸内康弘都市建設部長が答えた。

 2008年に国が行った住宅・土地統計調査によると、市内の約2万5000戸の空き家のうち、別荘や入居募集中のアパートなどを除いた空き家は約8300戸。腐食が進むなど老朽化した空き家は約2900戸に上る。

 条例は空き家所有者による適正管理を促すとともに、対応が困難な場合に周辺住民への影響を未然に防ぐため、市が実効的な措置を取るための法的根拠として位置付ける方針。

 その上で、管理されていない空き家に対しては@助言・指導○A勧告○B措置命令の順に指導し、それでも適切な措置が取られない場合は名前の公表や、行政代執行など実態に見合った措置を明記する考え。戸内部長は「空き家の解体や撤去は所有者が自ら行うべきものだが、やむを得ない事情で所有者が適切な措置を講ずることができない場合の代行措置など、実態に見合った措置を検討したい」と述べた。

 同部は「私有財産に一定の制限をかけることになるので周知が必要」(街づくり推進課)とし、条例制定に向けて今後、市民意見を募集していくとしている。(千葉卓陽)


◎元江差町教育長の石橋さん開陽丸の本出版

 【江差】箱館戦争当時に江差沖で沈没した旧幕府軍の軍艦・開陽丸の発掘調査に取り組んだ、元江差町教育長の石橋藤雄さん(89)=町中歌町=が、3作目の著書となる「幕末・開陽丸」を16日に自費出版した。石橋さんは「江差に興味を持ち、ぜひ足を運んでほしい」と話している。

 石橋さんは、1974年から開陽丸の本格調査に携わり、これまでに「開陽丸ルネッサンス」(93年)と「開陽丸ノート百十一話」(96年)を発刊している。

 新作は、この2作を厳選して編集、昨年11月に専門家の解析で分かった遺物2点(海水を真水に換える機器と汽笛を鳴らす装置)の新たな情報を加えた。今回は次男の紀雄さん(51)が代表の「光工堂」(長野県)から出版した。

 冒頭では、榎本武揚のひ孫で開陽丸子孫の会会長の榎本隆充さんが発刊祝いの言葉を寄せ、作品をPRする重要な「帯」の文面は、親交の深い、世界的ファッションデザイナーの山本寛斎さんが全面協力した。

 あとがきには町民らへの感謝の言葉をつづり、「この本が江差の一層の活気や魅力づくりにつながることを願っている」と石橋さん。

 A5判、298ページ。1800円。町内の万年屋書店と開陽丸センターのほか、五稜郭タワー、加藤栄好堂の七飯店・函館美原店・北斗店、光工堂で取り扱い中。

 詳細は光工堂のホームページ。問い合わせは光工堂TEL0266・75・0039。(田中陽介)