2013年6月20日 (木) 掲載

◎【インサイド】道新幹線、新駅名称問題 見えぬ”終着駅”

 北斗市で建設が始まった北海道新幹線新駅の名称をめぐり、「新函館」を主張する函館市と、「北斗函館」を主張する北斗市双方の主張が激化してきた。函館市の工藤寿樹市長は「複合的な名称はあいまいさを招く」として北斗側をけん制する一方、北斗市の高谷寿峰市長は報道機関に対し、見出しにも「仮称」の一言を入れるよう求める考えを示すなど神経をとがらせる。着地点を見いだせない現状に、双方の自治体には焦燥感も見え隠れする。

 JR北海道は15日の新駅起工式で、開業の1年半前を新駅名の決定時期とする考えを表明。2016年3月開業の場合、14年9月ごろになる見通しだ。両市議会が起工式前後に開かれたこともあり、ともに駅名に関する質疑や意見が相次いだ。

 工藤市長は19日の函館市議会一般質問で、新駅への見解をただした北原善通氏(市政クラブ)に対し、道南の基幹駅にふさわしい名称を望む観点から「『函館ブランド』はさまざまな魅力度調査で上位にある。ブランド力向上が観光客を増加させ、道南の各自治体に効果を波及させる」と言及。

 その上で「複合的な名称では全国的にあいまいさを招く恐れがあり、函館ブランドに影響を与えかねない。わかりやすいシンプルな名称であるべき」と踏み込み、新函館を求める見解を示す。

 一方、17日の北斗市議会では、新駅の起工式を報道した新聞各紙の記事について、小泉征男氏が「仮称がつかない『新函館』の見出しは、読者に駅名が決定したものと誤解を与える」と指摘。高谷市長に対して対応を求める一幕があった。

 小泉氏は長年使われた仮称の既定事実化を懸念し、「北斗市は(駅舎建設に)お金を出し、駅のある地元を駅名とするのが当然だ」と主張。高谷市長は「刻々と時間が迫っている中で、影響される危険性があると感じる。議会と協議しながら早急に新聞各社に申し入れたい」と呼応した。

 他地域では、新潟県上越市にできる北陸新幹線新駅の名称をめぐり、上越市と、隣接する妙高市が対立。官民でつくる「新幹線まちづくり推進上越広域連携会議」が部会を設けて駅名を公募したり、意見交換会を開くなどした中で、JR西日本に2つの案を示した経緯がある。

 新駅の場合は現在、両市が顔をそろえて駅名を議論する場がなく、15日の新駅起工式では高橋はるみ知事が調整に乗り出す意向を示している。だが、「道には駅名に関する権限はない。変な折衷案だと両市ともにしこりが残るのでは」(道南のある自治体幹部)と危惧する声も出ている。(千葉卓陽、鈴木潤)



◎青函4市の観光ポスター完成

 函館、青森、弘前、八戸4市で構成する広域観光圏「青函圏観光都市会議」は4市の魅力を発信する観光ポスターを制作した。「浪漫(ロマン)は海峡(うみ)を越えて」をキャッチコピーに函館の夜景、青森のねぶた、弘前の桜、八戸の種差海岸の写真を配置。4市への来訪意識を高めるとともに、津軽海峡を挟んだ「四都」の結びつきをPRする。

 同会議は北海道新幹線新函館駅(仮称)開業を見据え、4市長を共同代表に3月に発足。共同宣伝物の制作は初の事業で、デザインは、事務局の函館市が公募し、6社の応募の中から電通北海道函館支社の提案を採用した。

 B1判のポスターは1000枚を発行。青森側3市に各200枚、事務局分を含め、函館市に400枚を配分し、旅行代理店や各交通機関、観光施設などで掲示する。サブコピーを「ゆっくりと、四都」とし、4市の周遊化を促す。函館、青森、弘前の3市は代表する観光名所と、八戸は「三陸復興国立公園」として今年指定を受けた種差海岸の様子を伝える。

 また、同じデザインでクリアファイルを1万部作製。それぞれの観光パンフレットなどを挟み込み、キャンペーン活動などで配布する。

 今月22、23両日、札幌市で開かれる「函館・東北チャリティープロモーション2013」を皮切りに活用する。事務局の市観光コンベンション部観光振興課は「新幹線をキーワードとした4市の取り組みに関心も集まっている。4市のイベント交流の場などでも活用していきたい」としている。(今井正一)



◎摩周丸の市移管10年で23日にイベント

 函館市青函連絡船記念館摩周丸を管理・運営するNPO法人語りつぐ青函連絡船の会(木村一郎理事長)は、同館が市に移管して10年を迎えたことを記念し、コンパス甲板(4階屋上)に函館港の歴史などを紹介する風景画を展示する。23日は披露式と、全国で船舶を博物館としている施設の関係者が集まり、活動報告会を開く。

 同法人はさまざまな資料展示を通じ、観光客や修学旅行生に、青函連絡船の歴史、文化を伝えてきた。さらに多くの世代に、館を観光スポットとして利用してもらおうと、函館港上に広がる西部地区、函館山の景色を楽めるように、コンパス甲板の整備を決めた。

 この案を同法人の白井朝子副理事長が、交友のある音楽評論家の湯川れい子さんに相談したところ、湯川さんがコンパス甲板からの景色を「はこだてロマンティック・ビュー」と命名。さらに、函館出身の日本画家、柴田香代子さんが、函館港の歴史を紹介するエッチング(銅版画)6枚を制作。23日は午後1時から、湯川さん、柴田さんらによる披露式を行う。白井さんは「函館山、五稜郭タワーに続き、陸、海、空から函館を楽しめるビューポイントがそろうと思う。エッチングには開港当時の風景もあり、今昔の対比を楽しんでほしい」と話している。

 午後1時半から同3時までは、3階サロンで「日本の保存船プレゼンテーション・セッション」(日本フローティングシップ協会との共催)を開く。氷川丸(横浜)など保存船の施設概要や事業についてなどが発表され、湯川さん、JR東海の須田寛相談役が質問し、感想を述べる。

 参加には入館料(大人500円など)が必要。問い合わせは摩周丸(電話0138・27・2500)へ。


◎ピアニスト・高さんが初のソロアルバム販売

 函館のピアニスト高実希子さん(29)と音楽仲間のバイオリニスト、田代裕貴さん(29)が出演するコンサート(高実希子meets実行委主催)が7月4日午後7時から、市芸術ホールで開かれる。なじみ深い名曲から難曲まで11曲を演奏。念願だった高さんの初のソロアルバムも販売する。

 函館出身の高さんは、桐朋女子高校音楽科で千葉県出身の田代さんと出会い、桐朋学園大音楽学部までの約5年半、田代さんのピアノ伴奏を務めた。高さんがパリ国立高等音楽院に、田代さんがロンドンの王立音楽大学大学院へ進んでからも、現地で交流を重ねた。

 2008年の帰国後、函館を拠点に活動する高さんは、デュオやトリオ演奏にも取り組もうと、昨年初めて田代さんと同ホールで演奏会を開催。今年からは実行委を立ち上げ、年1回は海外で活躍する演奏家を招いていきたいという。

 当日は、「タイスの瞑想(めいそう)曲」や「月の光」などの人気曲に加え、バイオリン曲の最高傑作とされるラベルの「ツィガーヌ」、フランクの「ヴァイオリンソナタ イ長調」を2人で演奏。高さんによるリストの「ラ・カンパネラ」、ショパンの「幻想即興曲」の独奏もある。

 また高さんは、留学を経て演奏経験を重ねた自身の音楽性を形に残そうとアルバムを作ることにし、5月下旬、ショパンやリスト、ドビュッシーの人気曲など10曲を収録。演奏会場で並べ、最後にサイン会も行う。

 田代さんは現在、スウェーデンのイェーテボリオペラ管弦楽団の第2バイオリンの首席奏者として活躍しており、高さんは「才能ある彼女と演奏が楽しみ。2つの楽器のいろんな可能性を味わってもらえれば」と呼び掛けている。

 チケットは一般2000円、学生1000円(当日各500円増、小学生まで無料)。アルバムは2000円。問い合わせは実行委(電話0138・54・4337)へ。(長内 健)