2013年6月8日 (土) 掲載

◎戸井高 全校生徒で被災地へ…研修旅行

 来年度末で閉校する戸井高校(小松将人校長、生徒25人)の全校生徒が20日、研修旅行で東日本大震災の被災地を訪れる。3日間の日程で、各地の視察や被災者との交流体験を積み、今後の人生に役立ててもらう。同校によると、全校生徒の被災地研修は珍しく、小松校長(59)は「自らの価値観形成や慈善活動などに生かしてほしい」と期待している。

 きっかけは、小松校長が今年3月9〜11日、東北3県を訪れたこと。津波による数々の爪痕を目の当たりにし、「復興のために何ができるか学習する場を」と企画した。今年の同校創立60周年記念事業の一環で、事業費は100万円。同窓会の資金援助で実現した。2、3年生25人と、小松校長と教諭4人が引率する。

 20日は岩手県久慈市から「震災学習列車」に乗り、田野畑村までの約2時間、沿岸部の現状を視察。夜は釜石市の旅館「宝来館」に宿泊し、おかみから津波で冠水した震災当日から営業再開にいたるまでの説明を受ける。

 21日は県内の「復興市場」で取材活動をした後、宮城県水産高校(石巻市)を訪問し生徒同士で交流。22日に帰路に就く。

 8月以降は戸井、恵山地区の小中学校など計6校で研修成果をプレゼンテーションする予定も立てている。

 生徒は6日から準備開始。久慈、釜石市などテーマに沿い、新聞記事や自治体のホームページを参考に、被災状況や復興の実態を調べている。3年の前田隆太君(17)は「全校生徒での研修はなかなかない。つらい体験もあるだろうけど、東北の現実を受け止めたい」、3年の石田勝春君(17)は「被災者の話を直接聞いてみたかった。現地の生徒とも交流できる貴重な機会」と期待。2年の播間美咲さん(16)は「避難の仕方や防災の在り方を現地で学べる。今自分にできることはないかもしれないけど、『何か』を見つけるきっかけにもなれば」と話している。(長内 健)



◎「縄文太鼓」出来た!…西高生徒が挑戦

 函館西高校(安房節雄校長、生徒523人)の生徒有志でつくるウエストヒルズプロジェクト(川村宝子代表)70人が7日、「縄文土器」づくりに挑戦した。講師の指導を受けながら輪にした粘土を何層にも積み重ね、太鼓や笛などの形に仕上げた。

 2010年度から毎年開催。今月29日に予定している、縄文時代に鳴り響いたとされる音をテーマにした「縄文音楽フォーラム」に合わせ制作している。

 今年の生徒は土笛、太鼓、鈴の3種類に挑戦。市販の粘土をこねて輪にし、円柱の形になるよう積み重ねていった。高さ30a近い太鼓の制作に挑戦した2、3年生は、グループになって表面の成形に当たった。

 1年の山口朋美さん(15)は「講師から、土器の円柱は『ギョーザのような形』と教わり、なるほどと思いました」と楽しそうに話していた。

 約2週間乾燥させ、23日に野焼きして焼き上げた後、同フォーラムで楽器として奏でる。フォーラムは29日午後1時半から市公民館(青柳町12)で開催。入場料500円(高校生まで無料)で、問い合わせは同校(TEL0138・23・8415)へ。(長内 健)



◎国道227号の中山峠に新トンネル

 【厚沢部、北斗】函館方面と桧山南部を結ぶ国道227号の中山トンネル(全長740b)が、老朽化を受けて新たに建設されることが7日、分かった。国の新規事業に採択され、本年度は5000万円の予算で測量と地質調査などを行う。現トンネルの南側に新トンネルを建設する案が有力で、物流機能の向上のほか、防災や救急搬送などの面からも期待が大きい。

 中山トンネルは厚沢部町と北斗市の境界にあり、現トンネルは1966年に完成。函館から江差に抜ける大動脈だが、トンネル内部では近年、水漏れや各種補修が必要とされることが少なくなかった。

 これを受け、厚沢部町では、整備促進に向けて¥96¥年ごろから独自の要望活動を展開。2005年6月からは、近隣自治体の首長と議会議長も加わり「国道227号早期改良整備促進期成会」(会長・渋田正己厚沢部町長)を立ち上げ、地域の最重要課題として要望活動を重ねてきた。

 函館開建江差道路事務所によると、新トンネルは現路線の流れを生かしながら建設に入る考え。地元自治体によると、今後の調査次第で大きなルート変更の可能性もあるが、現トンネル南側に建設することが最有力視されている。全長800b、トンネル両側外にかかる道路カーブを含めると約1・4`区間の整備規模となる可能性が高い。

 同期成会によると、現路線では年間約200件の救急搬送があり、「命の道」として重要視されている。また、駒ケ岳噴火時の災害代替路線としての活用の役割もある。

 渋田会長は「中山トンネルの防災、整備促進の実施は長年にわたる地域の悲願。住民の生命を守り、地域経済などを後押しする大事な存在でもある。期成会として一日でも早い完成を働きかけていく」としている。

 新トンネルの完成時期は未定。同期成会は2015年度の北海道新幹線開業に合わせる形での開通を求めているが、工事規模から新幹線開業後の開通とみる向きが濃厚だ。

 週明け早々に函館開建の担当者が厚沢部町役場を訪れ、具体的な内容を伝える。(田中陽介)


◎緊急対策に漁業者不満…燃油1g95円超で国が4分の3拠出

 円安に伴う燃油高問題で、水産庁が決めた漁業経営セーフティーネット構築事業を拡充する緊急対策について、スルメイカ漁が始まった函館の漁業者が不満を募らせている。A重油価格が1g当たり95円を超えると、国と漁業者が3対1の割合で負担して補てんする仕組みだが、同80円を発動基準とする現行制度から国の負担割合を引き上げることを求めていたからだ。

 現行は、国と漁業者が1対1で基金を積み立て、80円を超えると補てん金を支払う。緊急対策では95円超で発動、国が4分の3を拠出する。80円から95円までの間は、国の負担割合は半分のまま。7月から、2014年度末まで行う。

 「この対策ではいいとは思えない。現行制度から国の負担割合を引き上げてほしかった」。市漁協の高谷広行専務は落胆する。所属のイカ釣り漁船23隻のうち、現行制度への加入は11隻。高谷専務は「95円に値上がりするのを見越したかのような設定。95円になれば、休漁に追い込まれる」と話す。

 漁業者の田原正明さん(53)は「松前沖での1回の漁で燃油代は6〜7万円。現在は魚体が小さいので価格も下がってきており、採算を取るのは厳しい」。「対策はありがたいが、さらに手厚い支援を」と願う。

 市農林水産部によると、市水産物地方卸売市場(豊川町)での生鮮スルメイカ取扱量は49・4d(3〜7日)と昨年同期の32・5d(2〜7日)を上回る。いけすイカ卸値は初競りの1`当たり1800〜920円に対し、7日は同560〜400円となった。(山崎大和)