2013年7月2日 (火) 掲載

◎工藤市長ら福島視察 大間訴訟向け状況確認

 【南相馬】大間原発(青森県大間町)の建設差し止め訴訟の準備を進めている函館市の工藤寿樹市長は1日、東日本大震災に伴う福島第一原発事故で被害を受けた、福島県南相馬市を視察した。同市の桜井勝延市長から状況説明を受けたほか、被害の大きかった地区を見て回り「住民の命を守るのは基礎自治体。我々が頑張らなければならない」と述べ、改めて国や事業者の電源開発(東京)を相手に提訴に踏み切る姿勢を示した。

 視察は現場被害とともに、事故が発生した際の周辺自治体の避難状況などを確認し、提訴時の根拠とする目的で実施。市議会の松尾正寿議長、斎藤佐知子副議長と4会派の議員らが同行した。

 南相馬市は福島第一原発の緊急時避難区域(EPZ=当時)の対象範囲外で、原発事故に際して市が大半の住民を新潟県などに避難させた。今年5月30日現在で人口約7万1000人のうち1万6000人が避難し、約6400人は市外に転出している。

 桜井市長は当時の状況について「半径20`圏内の避難指示が国や県からきちんと伝達されず、テレビなどで情報を得ていた。市がバスを手配し、20`圏外の避難所に移動した」と説明。その上で「(原発事故が)一度起こってしまえば、どれほどの人が犠牲になるかは明白。自分たちの地域を守り抜くにはあきらめない姿勢が必要」と述べた。

 午後からは、一時帰宅が可能だが宿泊が認められていない「避難指示解除準備区域」に該当する同市内の小高(おだか)区を視察。インフラ整備状況などの説明を受けるとともに、被害の大きかった沿岸部などを視察した。

 工藤市長は「大間も何かあれば同じ状況に置かれるだけに、何としても凍結したい」と強調。提訴時期に関する明言を避けた一方で「建設をやめない限り、(提訴しないということは)私の中ではない」と述べ、現状では提訴が不可避との認識を示した。  (千葉卓陽)



◎青函連携の酒 完成祝う

 函館市の料理人らでつくる「クラブガストロノミーバリアドス」(ガスバリ、深谷宏治代表)が復刻させた銘柄米「マツマエ」を使い、青森県弘前市の六花酒造(北村裕志社長)が作った日本酒「ガスバリ2013」の完成を祝う会が1日、レストラン・バスク(函館市松陰町)で開かれた。函館、弘前両市の商工会議所、観光コンベンション協会などから約30人が出席、3年後の北海道新幹線開業を控え、青函の連携で完成した酒の誕生を喜んだ。

 マツマエは1970年代に道南で盛んに作付けされていたが、味や気候耐性に優れる新品種の登場により91年に生産を終えた。

 地場食材の研究などを行うガスバリは新たな食材を求める中、マツマエの特徴である粘りの少なさに着目。2011年に「しみず農園」(北斗市)の協力で栽培し、会員の店でパエリアやチャーハンとして提供していた。

 12年5月、ガスバリは函館に訪れた弘前の蔵元関係者にマツマエを使用した日本酒作りを持ちかけ、六花酒造が今年1月に仕込みを開始。900`のマツマエを使い、白神山地系地下伏流水で仕込んだ特別純米酒が完成した。北村社長は「どこに出しても恥ずかしくない。函館の地酒として全国に知れわたるよう頑張っていきたい」、深谷代表は「函館と弘前は兄弟のようなもの。今後も球の投げ合いをして連携を深めていきたい」と意気込んでいる。

 ガスバリ2013(720_g)は1575円。ワインショップ・ワダ(函館市本町7)、ノイフランク(同市駒場町7)、こなひき小屋(七飯町本町4)で販売する(600本限定)。このほか、ガスバリ会員の店でも提供される。 (金子真人)



◎高齢者の活躍事例紹介 未来大の元教授の鈴木さん「はたらく」出版

 公立はこだて未来大の元教授で東京サテライト産学官連携コーディネーターの鈴木克也さん(71)=鎌倉市在住=が1日、新刊「はたらく〜高齢者の多様なはたらき方」(エコハ出版、2100円)を出版した。アクティブ・エイジング(活力ある高齢化)シリーズの第2弾で、「高齢者が元気に活躍することが、本人の健康にも良く、世の中を明るくする」と話している。

 鈴木さんは未来大教授を10年間勤め、2011年3月末に定年退職。現在は「企業組合クリエイティブ・ユニット」(ブランド名・エコハ出版)代表理事として出版事業を手掛ける。昨年3月に同シリーズ第1弾で、函館をモデル地域とした「地域で活躍する元気な高齢者達」を出版。今回は65歳以上で活躍する全国9人を取材、執筆した。「収入を得て生活のために働くという形より、もっと広い概念で『はたらく』を捉えたい。地域コミュニティーやクリエイティブ、起業活動なども意義のあること」と強調する。

 道南からは唯一、木古内町で咸臨丸を軸にしたまちづくりに取り組む、最勝寺住職の多田賢淳さんを紹介。また、2016年3月の北海道新幹線木古内駅開業を「大きなチャンス」と捉え、地域の魅力向上対策を説いている。

 来るべく超高齢社会に向けて、年末には第3弾となる「シニア起業家の挑戦(仮称)」を出版予定。

 A5判、232ページ。文教堂書店函館テーオー店(梁川町)など市内4店舗で販売。e—book(電子書籍)化も予定。問い合わせは鈴木さん(TEL090・2547・5083)へ。(山崎大和)


◎丸井今井前5年連続下落 13年路線価

 札幌国税局は1日、相続税や贈与税の課税基準となる2013年1月1日現在の路線価を発表した。函館税務署管内の最高路線価(1平方b)は函館市本町、道道函館南茅部線通りの丸井今井函館店前で、前年比3・2%(5000円)減の15万円と5年連続の下落となった。下落率は前年よりも10・7ポイント縮小し、下げ止まり傾向が見られる。

 道内30税務署管内の最高路線価は、札幌中央、札幌北の2署で前年より上昇し、札幌南など7署で横ばい。函館、八雲、江差を含む21署で前年を下回った。道内約1万6600地点で調査し、下落率の平均値は2・3%と前年より1・6ポイント改善した。

 江差税務署管内の最高路線価は、江差町本町の道道江差停車場線通り(五勝手屋本舗前)の2万8000円で、下落率は9・7%。八雲税務署管内は、八雲町本町の道道八雲北桧山線通り(渡島信金八雲支店前)の3万1000円で、下落率は3・1%だった。

 丸井今井前は前年、道内2番目の下落率だったが、今年は大幅に縮小。市内新川町の不動産鑑定士、景澤周平さん(景澤不動産鑑定事務所)は「現状は基本的に変わっていない。10%台の下落が続いてきたので価格が底を打ってきた」と指摘。

 一方で「外部資本が2016年3月開業予定の北海道新幹線や市の中心市街地活性化策に対して様子見をしている状況。少しでも動きが出れば呼び水となって横ばいもしくは上昇する可能性もある」と期待感も口にする。

 道内の最高路線価は札幌中央税務署管内の札幌市中央区北5西3、道道札幌停車場線通り(札幌ステラプレイス前)で256万円で、8年連続で最高。(鈴木 潤)