2013年8月31日 (土) 掲載

◎母の供養 霊場121カ所結願…佐藤さん徒歩で北海道縦断

 函館市堀川町の無職佐藤守彦さん(71)が、徒歩で39日間かけて稚内〜函館の北海道縦断に成功した。母の供養のため昨年、本道一周2750キロを完歩しており、旅の続きは1287キロ。今月18日に帰函し「旅先で出会った人との縁が力となって、供養をまっとうできた」と達成感と喜びにあふれている。

 佐藤さんは元高校教員。フルマラソンを35回、ハーフマラソンを52回完走する健脚の持ち主。昨年の本道一周は満70歳の記念と、7回忌を迎える母ミヱさんの供養にと決意、2カ月半かけて旅に挑んだ。その際、北海道三十三観音霊場と北海道八十八カ所霊場のうち計60カ所を歩いて巡拝した。

 今年は7月11日に旅をスタート。ホテルや旅館に泊まりながら1日当たり50〜30キロ黙々と歩を重ねた。昨年の教訓から、長女が用意したトンネル用のライト、クマよけの鈴、ヤブ蚊よけの特製ズボンを身に付け「精神的に楽だった」。厳しい暑さや豪雨にも見舞われたが、供養をやり遂げたいという思いが背中を押した。

 霊場巡りは残りの61カ所を訪ね、2年かけて結願。遺骨や遺髪を収めたお守り袋を首にかけ、形見の上着を羽織り、母の着物地に包んだ守り杖を手に「母と一緒に回った」。

 旅先では、宿泊先で朝食が食べられない替わりに弁当を作ってもらったり、地図を書いて道案内をしてくれたりと、多くの人の優しさに触れた。長万部では、札幌に車で向かう教え子1人(せたな町在住)と偶然出会い、感動のひとときを過ごした。「旅を通じ、いたわりの心を学んだ。今度は私と接する人たちにささげたい」と話し、「5年後に喜寿と母の13回忌を迎えるので、西国三十三カ所(兵庫、京都など7府県の観音霊場)巡りが目標」と意欲を見せ、母への供養を続ける考えだ。(山崎大和)



◎連携深め備え新たに…函館市が防災総合訓練

 函館市の防災総合訓練(市防災会議主催)が30日、函館港港町埠頭(ふとう)で行われた。関係機関や自主防災組織などから882人が参加。地震、津波に伴う災害を想定した訓練を通じて関係機関が連携を高め、いざという時への備えを新たにした。

 警察や消防、自衛隊など26機関と、町会や自主防災組織69団体が参加。訓練は釧路沖でマグニチュード9・0の地震が発生して函館で震度5強を観測、太平洋沿岸西部に津波警報が発表されたとの想定で行った。

 海上漂流者を救助する訓練では、海上自衛隊が漂流者を救助した後に函館西署の警備艇へ引き渡し、函館航空基地のヘリコプターで救助者をつり上げる一連の動作を行い、スムーズな連携を見せた。

 壊れたビルの屋上に避難している住民や、がれきの下敷きとなった負傷者を救出する訓練では、市医師会や陸上自衛隊、市立函館病院の災害派遣医療チーム(DMAT)などが作業に当たった。

 同会議会長の工藤寿樹市長は「迅速かつ的確な行動で、滞りなく終えることができた。万が一に備えた対策を市も精力的に進めていきたい」と講評した。

 防災訓練は昨年度から、行政機関向けと地域住民向けに分けており、10月10日には函館八幡小学校で住民参加型訓練を行う。(千葉卓陽)



◎冬ダイヤで1便増便…復興航空 競合会社に対抗

 台湾の復興航空(トランスアジア航空)は30日、函館と台北を結ぶ定期便について、冬期ダイヤ期間(10月27日〜来年3月29日)の運航を1便増便し、週3便にすると発表した。昨年9月の定期便化以来、台湾人観光客の北海道人気や円安効果を背景に同路線の利用は好調を維持しており、増便で需要に応えるほか、同路線で競合する航空会社に対抗するのが狙いだ。

 同社は08年6月から道内各空港でチャーター便の運航を開始。同路線も昨年9月に定期便化した。日、月曜の週2回1往復ずつしているが、冬期ダイヤで水曜に1便増やす。当初は182人乗りのエアバスA321で運航を開始したが、需要増加に対応するため、12月には大型化し、300人乗りのエアバスA330を投入した。

 同路線の乗客は昨年9月から今年7月末までで約3万5700人。平均搭乗率は70%を超えている。2月の旧正月「春節」の連休はほぼ満席だった。同社は今後も収益が見込めると判断し、増便に踏み切った。競合するエバー航空も9月まで週4便に増やしており、搭乗率は好調。今後乗客の奪い合いが過熱しそうだ。

 現在チャーター便で週1便運航する帯広—台北を運休し、使用していた機材を函館線に振り替える形を取る。同社の横田恵三郎日本支社長は「函館線はとりわけ好調。増便で供給座席を増やし、競合他社との競争力を維持していく」と話した。

 函館商工会議所の松本栄一会頭は「増便は非常にうれしい。函館観光にとって大きなプラスで、そのままの本数を維持してもらいたい」と歓迎した。(松宮一郎)


◎スルメイカ夏枯れ…道南太平洋8月下旬

 道南太平洋の8月下旬のスルメイカ分布密度が昨年を下回り、2008年以降では3番目に低かったことが、道総研函館、釧路両水試の調査で分かった。海水温が高く、夏枯れ状態に入ったのが要因とみられる。

 函館水試の試験調査船「金星丸」と釧路水試の「北辰丸」が21〜24日に調査した。

 4地点(函館市木直沖、青森県下北半島東沖、日高管内浦河沖、函館沖)のイカ釣り機1台1時間当たりの漁獲数の平均は3・1匹で、昨年平均の4・8匹を下回り、08年以降では10年、11年に次いで低かった。木直沖が2・7匹、函館沖が1・5匹となり、最も高かったのは浦河沖の5・0匹。

 イカの分布の目安となる水深50メートルの水温は13・6〜21・2度(昨年11・8〜19・4度)で、全地点で昨年を上回った。下北半島以南は20度を超えており、21度を超す海域も。イカが生きられるのは21度程度が限界で、水深50メートルでもそれに近い水温になっている。

 函館水試の澤村正幸研究主任は「高水温が続けば、群れの南下が遅れて夏枯れの長期化、深刻化が懸念される。昨年のパターンの繰り返しにならないか注意が必要」と話している。(山崎大和)