2013年8月7日 (水) 掲載

◎北極海調査「大きな収穫」 おしょろ丸 函館に帰港

 地球温暖化による北極の海洋環境変化や、生態系への影響を調べる北大水産学部の練習船「おしょろ丸」(高木省吾船長、1396トン)の調査隊が6日、54日間の航海を終えて函館港に帰港した。

 おしょろ丸の北極への航海は1992年から始まり、今回は2008年以来5年ぶりで6回目となった。北極海では温暖化などで海氷が減少しており、環境や生態系にどう影響するかを予測するのが目的。学生や研究者ら約60人が、船内で共同生活しながら約1カ月半の長旅で海洋観察や生物の採取を済ませ、今後の研究材料にする。

 6月14日に函館港を出港し、約2週間で米アラスカ州ダッチハーバー(ウナラスカ島)に入港した。7月1日に北極に向かいながら海水や、海底の泥、プランクトンなどを採取。さらに底引き網でカジカ、スケトウダラなどの魚類を捕獲した。強風で流氷に行く手を阻まれ難航する場面もあったが、無事に調査を終えたという。

 調査隊主席研究員で北大水産学部の平譯享准教授(43)は「生物と環境データを同時に取れたことが大きな収穫。これから解析し、1、2年で調査の成果を出していきたい」と明るい表情だった。北大水産学部海洋資源科学科の男谷萌子さん(4年)は「北極海は緑色が強く、イメージとは違った。寒さや共同生活は大変だったが、良い経験になった。採取したサンプルを今後の研究に生かしたい」と話していた。 (小林省悟)



◎巨大船進水 函館どつく本年度3隻目

 函館どつく(函館市弁天町)で6日、本年度3隻目の新造船「ホッカイドウ・バルカー」(1万9850トン)の進水式が行われた。市民約400人が見守る中、巨大な船体が海面に滑り降りていった。

 新造船はデンマークの海運会社「オタメイ・シッピング」が発注した全長175・5b、幅29・4bの木材兼ばら積貨物船。函館どつくが独自に開発した幅の広さと浅い喫水が特徴の船倉ボックス型。6月から建造をはじめ、10月上旬の完成、引き渡しを予定している。

 進水式では船首のくす玉が割られ、船体が勢いよく海に向かうと大きな歓声が上がった。市内の絵手紙講師、北出喜代彦さん(75)は進水式の様子をスケッチブックに収めた。「この光景は函館の宝。絵手紙に描き、全国の仲間に伝えたい」と話していた。

 同社では年6隻ペースで建造を進めており、本年度は残り3隻を建造する予定。受注残は2016年度まであるという。 (松宮一郎)



◎函館アリーナ 入札不調

 函館市が6日に予定していた函館アリーナ新築主体工事の入札が不調に終わり、市は入札を延期すると発表した。参加を申請していた共同企業体(JV)1組が、精査が間に合わないとして入札辞退を申し出たためで、現段階で新たな入札期日は決まっていない。全国的な公共工事の増加に伴う、資材や労務単価の上昇が影響しているとみられる。

 アリーナ新築工事の予定価格は42億8600万円(税込み)。市は一定の実績と市内に支店を持つAランク1社と、市内に本社か支店を持つAランク4社、Bランク2社の計7社でJVを組むことを参加条件としていた。

 市や関係者によると、新築工事の入札にはスーパーゼネコンを筆頭とするJVが参加を申請していたが、5日午後に「設計内容と見積もりの精査に時間を要しており、入札までに予定価格範囲内の見積もりを確定させることが困難」として辞退。これに伴い、同日予定していた空調や衛生、自家用発電などの7件の関連工事の入札も延期した。

 アリーナは鉄筋一部鉄骨造3階建てで、延べ床面積1万5693平方b。総事業費は当初63億円を見込んだが、労務単価上昇などに加え、実験段階で柱などに強度不足が見つかったことも踏まえ、市教委は最新単価に基づいて事業費を増額していた。

 市は9月の第3回定例市議会に請負契約締結の議案を提出する予定だったが、再入札実施の日程は未定。市都市建設部は「9月の議決を目指す考えに変わりはなく、工期に影響がないよう検討している」とする。

 ただ、再公告から再入札実施には3週間が必要で、週明けから各企業がお盆休みに入ることを考慮すれば、8月中の入札実施は厳しい状況だ。市財務部は「新築工事の対応が確定した時点で、設備工事も含めて改めて公告する」(調度課)としている。

 ●建設業者「資材高騰が大きい」「技術者不足は深刻」

 資材の高騰や人手不足から、東日本大震災の復旧工事で相次いでいる入札不調が、函館の大型公共工事でも起きた。市内のある建設会社の関係者は「今はどの建設業者も資材のやり繰りに苦慮している。資材高騰の影響が大きいのでは」と指摘。さらに「業界自体も仕事がいっぱいで、手が回らないのが実情。技術者不足は深刻で、2年間アリーナにかかりきりになるのは(採算面で)合わなかったのでは」と話す。

 また、別の建設会社幹部は「東日本大震災の関係で単価が上昇している点も影響しているし、入札には複数のJVが必要。申請しやすい環境を市が作れるかが問題」と指摘する。 (千葉卓陽、今井正一、松宮一郎)


◎福島の現状など語る うつくしま復興大使来函

 東日本大震災と原発事故に見舞われた福島県から、復興支援への感謝の気持ちを伝える「うつくしま復興大使」を務める中高生らが6日、函館市役所を訪れた。震災後2年5カ月となる同県の現状とこれからの希望を語った。

 復興大使は、同県で日刊紙を発行する福島民報社(福島市)が昨年度から取り組む。本年度は同県全59市町村の70人が大使に選ばれ、3日から同県とゆかりのある全都道府県の自治体などを訪問している。

 函館を訪れたのは会津美里町、佐藤幹さん(66)=会津本郷焼窯元=、大熊町、佐藤真喜子さん(15)=相馬高校1年=、会津坂下町、伊藤未紀さん(13)=会津学鳳中学校2年=と同社関係者。

 工藤寿樹市長は7月に同県浪江町や南相馬市を訪問したことに触れ、「大変な状況を改めて理解した。福島の現状を発信することを終わらせてはならない」と述べた。

 現在、南相馬市に住み、これまで年齢制限のために立ち入ることができなかった大熊町の自宅を近く訪れるという佐藤真喜子さんは「福島は復興に向かっていると感じている。北海道にも多くの避難者を受け入れてくれたことに感謝している」などと話していた。  (今井正一)