2013年9月29日 (日) 掲載

◎旧ロシア領事館 歴史薫る…17年ぶり一般公開

 帝政ロシア時代の面影を現在に伝える函館市の景観形成指定建造物「旧ロシア領事館」(船見町16)が28日、17年ぶりに一般公開された。築105年が経過し、老朽化が著しいため、公開は一部範囲にとどめたが午前中だけで300人を超す市民が訪れた。活用方法や修繕方法は決まってはいないが、日露関係史において重要な建物の今後への関心が高まった。

 函館の旧ロシア領事館は1858(安政5)年に実行寺内に開設。現存する建物はレンガ造り2階建てで1908(明治41)年に完成。44(昭和19)年までロシア、旧ソ連の領事館として使用された。内部は改装され65〜96年に市の青年研修施設として使用した後、閉鎖された。

 今回、建物の保存活用方法を検討しているNPO法人「はこだて街なかプロジェクト」(山内一男理事長)が市に働き掛けて実現。公開に当たり、1階のテラスから函館港や駒ケ岳が見渡せるよう庭木を剪定(せんてい)するなど準備を進めた。

 館内では山内理事長(65)が、港を見下ろす場所に立地した理由や現存する意義を解説。参加者は玄関ホールの階段やテラスからの風景を写真に収めるなどしていた。山内理事長は「建物に思い出を持っている方も多く訪れてくれた。建物の傷んだ部分はすぐにでも手を入れないとならない」と話していた。

 在札幌ロシア総領事館函館事務所長のイーゴリ・ウスチノフ領事(62)は「多くの人が見学に訪れ、関心の高さに驚いている。日本とロシアの歴史を守る上でも必要な建物。修理にはお金も時間もかかり、総合的な判断が必要だが寄付などの方法もある。工藤寿樹市長とも話をしてみたい」と話していた。

 亀田中野町から訪れた庄野定男さん(83)は「いつか中を見てみたいと思っていたが歴史を感じるたたずまいでよかった。ロシアとのかかわりをもっとアピールして補修できれば観光客も喜んでもらえるはず」と話していた。 (今井正一)

 



◎全盲・野尻さんが函館ハーフマラソン出場

 和歌山市在住の全盲ランナー・野尻誠さん(39)が29日に開催される「函館ハーフマラソン2013」に出場する。「これまでの自分の記録を更新できるよう頑張りたい」と意気込んでいる。

 野尻さんは、函館視力障害センターに勤務していた2001年に初めて同大会に出場、03年に和歌山市に移り住んでも参加を続けており、今年で13回連続となる。

 現在は週に2回程度、地元の陸上クラブなどのサポートを受けながら練習を行い、フルマラソンの大会などにも出場している。野尻さんは「自分一人で練習できないことはマイナスなことだと思っていたが、多くの人と関わることができて、今では大きなメリットと感じている」と話す。

 伴走者を務める「函館走ろう会」の佐々木清文さん(56)や、函館入りした際のサポートや応援を続けている原田タミさん(74)など、多くの人の期待を背負って走る。

 自らも視覚障害を持つ原田さんは「野尻さんが一生懸命走る姿は私たちの励みになっている」と話す。野尻さんは「たくさんの人に助けられているので、安易に諦めることはできない。ベストの走りをすることで感謝を伝えたい」と力強く語った。(金子真人)



◎そばや友の会 1日から「秋の味覚セット」販売

 函館市内のそば店でつくる「函館そばや友の会」(池田常男会長)の8店が10月1日から、旬の食材を使った「秋の味覚セット」を期間限定の共通メニューとして提供する。今回は秋ナス、マイタケの天ぷらとそばのセット。同31日まで。

 同会は年3、4回、加入店で共通メニューを考案し、提供する取り組みをしており、秋の味覚セットは6年ほど前から毎秋、内容を変えながら出している。

 秋ナス、マイタケは道産。店によっては揚げたての天ぷらのほかにご飯も付く。温かいそば、冷たいそばどちらか好みを選べる。各店650〜700円で提供する。

 同会の池田会長は「栄養価の高い食材を天ぷらの具材に選んだ。そばとともにサクサクの天ぷらで秋の味覚を楽しんで」とPRする。(鈴木 潤)

 8店は次の通り。  東京庵本通店(本通1)神山ふでむら(神山2)いがら志(柏木町24)東京庵本店(末広町4)丸京(豊川町14)かしわ屋(若松町26)長寿庵(中島町21)丸常長寿庵(亀田港町63)



◎都市景観賞にレストラン「唐草館」、「神子島肇建築設計事務所」

 景観に配慮した優れた建物などを表彰する第19回函館市都市景観賞が決定した。歴史的文化景観賞として、青柳町21のレストラン「唐草館」、坂道景観貢献賞として、元町23の「神子島(かごしま)肇建築設計事務所」の2件が選ばれた。10月11日に表彰式が市役所で行われ、所有者らに賞が贈られる。

 同賞は5年以内に新改築した建物をはじめ、屋外広告物や道路といった街並みを形成するさまざまな景観を対象とし、市民から候補を募集。今年は延べ172件の応募があり、基準を満たした24件の建物を対象に選考委員会(委員長・岡本誠公立はこだて未来大教授、委員7人)が8月に審査を行った。

 唐草館は1935(昭和10)年に建築。元は診療所として建てられた縦長窓などが特徴的な洋風建築で、2000年からレストランとして使用。今年、全面塗装と補修が行われ、淡い緑色の外観が際立つ。選考委は「丁寧に維持管理しながら利活用を続け、建物に対する愛着と熱意を感じる」「函館特有の外観意匠の再生、住宅街の上質なイメージをけん引している」などと評価。所有者は丹崎仁さん、施工者は高橋組(高盛町、高橋則行社長)。

 神子島肇建築設計事務所は二十間坂に面した建物で、元の建物は34(昭和9)年の建築。11年に改修が行われている。斜面に沿った段差の付いた白い塀などが周辺に調和している。選考委は「塗装により、坂道特有の段上に連なる町並みをさりげなく際立たせ、函館らしい落ち着きのある坂道景観の形成に大きく寄与」と評価した。所有者、施工者は不動産企画ウィル(柏木町、佐藤真一社長)、占有者、設計者は同事務所代表神子島肇さん。(今井正一)