2014年10月6日 (月) 掲載

◎北海道・北東北の縄文遺跡群世界遺産登録の意義語る フォーラム

 「北海道・北東北の縄文遺跡群」世界遺産登録推進フォーラムが5日、函館市内のホテルで開かれた。元文化庁主任文化財調査官の岡村道雄さんが「津軽海峡圏の縄文はここがスゴい!」と題して約70人の参加者を前に講演を行い「津軽海峡圏には縄文文化を凝縮したものがつまっている」と世界遺産登録への意義を語った。

 道など4道県でつくる縄文遺跡群世界遺産登録推進本部の主催。同遺跡群について詳しく知ってもらい、世界遺産登録へ機運を高めようと企画した。

 岡村さんは、森町の鷲ノ木遺跡などを例に挙げ「環状列石と呼ぶ縄文時代の典型的な墓地がある」と説明した上で「津軽海峡文化圏には縄文文化について、見てわかるものがよく残っている。活用する素材として申し分ない」と力強く述べた。

 講演に続いて、遺跡のある函館市や森町、青森県の担当者が、それぞれの観点から同遺跡群の共通性や魅力について語った。

 函館市縄文文化交流センターの阿部千春館長は、縄文時代の交易について説明。「北海道や北東北で出土したヒスイや漆製品などから、津軽海峡圏には、経済的統合があったことを訴えていくべきだ」と強調した。

 森町教育委員会の高橋毅さんは「津軽海峡をはさんで同じような環状列石が見つかっていることから、この地域には意味のあるまとまりがあったと考えられる」と述べた。

 会場ではこのほか、垣ノ島遺跡から出土し、先日、市の指定文化財に登録された「足形付土版」などの展示も行われた。(山田大輔)



◎半世紀前の昆虫標本 市立函館博物館で展示

 市立函館博物館(青柳町、函館公園内)で開催中の新収蔵資料展(11月3日まで)で、函館青柳小学校が寄贈した1963年前後に市内近郊で採集した昆虫の標本が展示されている。制作者は当時、同校に通っていた西川正明さん(61)=神奈川県海老名市在住=で、昆虫好きだった少年はアマチュアの甲虫研究家として活動している。西川さんは「世界には100年以上前の標本もあるので50年程度ではまだまだ。ただ、よく取っておいてくれたなあと、うれしい思いはあります」と話している。

 西川さんが4年生の時に理科に関係するコンクールで入賞した標本で、担任教諭に依頼され同校に譲った。同校は旧谷地頭小学校と統合した1990年度に両校の保管資料などを集めた展示室を設置し、昨年度の耐震改修工事で校舎の一部を解体するまで児童らの目に触れる機会があった。西川さんは同校に通っていためいから、5年ほど前に保管されていることを知ったという。

 標本は昆虫類計97点と貝類計42点。昆虫は一部、本州産の甲虫類などが含まれるが、チョウやテントウムシ、セミなどの大半は、62年5〜8月に函館山、赤川水源地、椴法華地区など市内近郊で採集したもの。木箱に並べられ、採集場所、日付などが書かれたラベルが丁寧に付けられている。

 同館の佐藤理夫学芸担当主査は「色が抜けてしまい保存状態はあまり良くないが、採集した日付けや場所がはっきりしているので、地域の昆虫の生息状況を知ることのできる資料として価値が高い」と話す。

 西川さんは函館西高卒業後、進学のために函館を離れた。79年ごろから昆虫研究を本格的に始め、現在は、世界中のシデムシの分類に取り組んでいるという。「内気な性格の少年だったが、自然好きの父が、いろいろなところに連れ出してくれた。仁山では父と一緒にたくさんのクワガタムシを捕ったり、高校時代の先生には生物の分類について教わった。帰省した時には博物館を訪れたい」と話していた。(今井正一)



◎LEDライトアップ5施設で環境調査へ

 北海道環境財団(札幌)は、函館市内でライトアップ照明をLED(発光ダイオード)に変更した場合の二酸化炭素(CO2)削減効果などを検証する「光の街はこだて 次世代あかりプロジェクト」を進めている。旧函館区公会堂など5施設が対象とし、LED化した時のCG画像など制作し、年内に報告書として取りまとめる。

 市内では、昨年度、函館市地球温暖化対策推進協議会(松原仁会長)の検討部会が中心となり、伝統的建造物「旧相馬邸」でLED照明を使用したライトアップの実証実験を進めた。ライトアップ用の照明として一般的に使用されるHID(高輝度放電ランプ)と比べ、LED化することで、消費電力は3分の1程度に抑制でき、実験ではCO2削減効果といった環境面だけではなく、夜景に与える影響も検証した。

 同財団は同協議会の協力を得て、実証実験の成果やノウハウを継承。環境省からの補助金500万円を事業予算に充て、公会堂のほか、旧イギリス領事館、水産物地方卸売市場、青函連絡船記念館摩周丸、市役所本庁舎の5カ所を対象施設に調査を行う。

 今後、照明機器メーカー「東芝ライテック」(神奈川県川崎市)とともに、各施設で昼と夜間の外観の写真撮影、LED化後の予測CGの制作、CO2削減効果やランニングコストの試算を実施。報告書にまとめた成果は、来年1月末に予定するシンポジウムで、市民に報告する。

 同財団情報・調査課の安保芳久主査は「旧相馬邸での取り組みは地域に根ざした魅力的な活動として評価し、事業を継承することになった。長崎や神戸など夜景で有名な街にも函館の取り組みを周知したい」と話していた。(今井正一)


◎五稜郭築造150年記念リレーマラソン 100人が力を合わせ完走

 市民ランナーらがタスキをつないで五稜郭の外堀を150周するマラソンイベントが5日午後、ゴールを迎えた。五稜郭築造150年を記念し、函館走ろう会(村屋諭会長)が主催したもので、計約100人が26時間40分をかけて約270キロを走破した。

 祝賀行事を行ってきた五稜郭築造150年祭実行委(小笠原勇人会長)の呼び掛けに応え同会がリレーマラソンを企画した。4日の正午に五稜郭公園内一の橋手前特設テント前からスタート。飛び入り参加を含めた会員以外の約60人の市民ランナーも加わり、2日間にわたりタスキをつないだ。

 同会によると4日夜から5日早朝にかけては、市民ランナーの体調などを考慮して、同会員がリレーを担った。5日午後2時40分ごろにアンカーがゴールすると、テント前で集まっていた約40人が完走の喜びを分かち合った。

 伴走も含め44周を走った市内の団体職員、寺本悟さん(61)は朝方の冷え込みが厳しくて体温を上げるためにスピードを上げたところがきつかったと振り返る。その上で、「太陽が昇ってからは気分良く走れた。疲れたけどつなぐという楽しさで頑張れた」と笑顔を見せた。

 一方、35周を走った村屋会長は「たくさんの交流が生まれ、会員になりたいという人たちも声を掛けてくれてうれしかった。記念行事を通じてランナー同士の絆も深まった」と満足げだった。今後も何らかの形でリレーマラソンを続けていければとも意気込んでいた。(小杉貴洋)