2014年11月7日 (金) 掲載

◎旧松橋商店再生へ、明治期に建築

 函館市の西部地区で、かつて海産物委託問屋の松橋象作が明治期に建てたとされる「旧松橋商店」(大町8)の修復工事が大詰めを迎えている。解体の危機にひんした和洋折衷の土蔵造商家を「修復して活用できないか」と地元市民が再生を決意。古写真を参考に建設当時の外装を復元させ、今月中旬に完成する見通しだ。

 市内で雑貨店を経営しながら、古建築の再生活用を進める清水憲朔さん(68)らが「所有者が解体する」との情報を聞き、建物を見学。内部はほとんど建築当時のまま残っており、「函館の財産として残していきたい」と商家の再生活用を決めた。

 昨年から準備を進め、古写真を参考に、建築士の冨樫雅行さんが図面を作成。8月末から工事を行っている。

 建物は1907〜12(明治40〜45)年の間に建築されたとみられ、動物の模様を取り入れたアールヌーヴォー風のレリーフが特徴。3つの建物からなり、正面の土蔵造り店舗の面積は130平方㍍。ケヤキの洋風階段があり、2階の和室はシタンやコクタンなどの名木を使っている。店舗奥は蔵が続き、清水さんは「レリーフや壁を漆喰で仕上げるなど、意匠性の高さがうかがえる」と話す。

 現在は東京の海運会社が所有しているが、約20年前から空き家状態。清水さんらは修復後、カフェやショップ店、事務所などとして貸し出す予定で、「和洋折衷の古い建物が残る街並みは函館の魅力。ここに光が増えることで、西部地区がより明るい雰囲気になると思う」と話している。(平尾美陽子)



◎秋イカ漁上向き、道南太平洋

 道南太平洋で秋以降に漁獲されるスルメイカの南下群(秋イカ)の漁模様が上向いてきた。低調な水揚げが続いていたが、南下群が来遊し始め10月下旬から好転。函館港近海釣りイカ(冷凍船、トラック便除く)の水揚げ量は10月単月で122㌧となり、下旬だけで67㌧と好調。年内は函館近海に漁場が形成されるとみられ、今後の漁に期待がかかる。

 函館市中島廉売内の紺地鮮魚(紺地慶一社長)では6日、いけすイカ1㌔(3、4匹)を1000円で販売。同店は「日によってバラつきはあるものの、順調に入っている。価格も落ち着いてきた」という。

 近海釣りイカの水揚げ量は、6~10月の累計で385㌧と低迷。不振だった前年同期を40%、過去10カ年平均(2004~13年)を65%下回る。10月単月は前年(53㌧)の2・3倍となり、下旬の好調さがトータルに反映された。

 11月に入っても好漁傾向は続いており、函館市漁協(橘忠克組合長)は「10月下旬から戻りイカが見えてきた。魚体も大きい。津軽海峡での漁場形成が長く続き、残る期間で挽回したい」と期待を込める。

 道総研函館水試(金森浩一場長)の澤村正幸研究主査は「今後次第に漁場が函館近海に形成されるだろう。豊漁が続く期間も、過去2年(高水温の影響で南下群の来遊が遅れた)に比べると、長くなるのではないか。ただ、漁期前半の不漁分をカバーできるかどうかは分からない」としている。(山崎大和)



◎大間原発が安全審査申請へ

 青森県大間町に建設中の大間原発で、事業者の電源開発(東京)による原子力規制委員会への適合性審査の申請に向けた調整が最終段階を迎えていることが、6日までに分かった。13日にも同社幹部が同県や同町に対し、申請内容や時期について明言する可能性がある一方、建設差し止めを求めて同社と係争中の函館市には、関連する情報の提供はない。

 大間原発は東日本大震災を受けて工事が中断し、2012年10月に工事を再開。同社は耐震性向上や防潮堤設置、原子炉格納容器の破損対策など、新規制基準への適合に向けた対策を検討しているが、申請時期の先延ばしが続いている。

 同社広報は「安全審査の申請時期を含めて調整中」とし、県や町への説明日程や函館市への対応を含めて未定とする。また、同町は「電源開発側から連絡は来ていないが、説明があるとすれば町議会の大間原発対策特別委員会で受けることになる」としている。

 一方、函館市が国や同社を相手取り、大間原発の建設差し止めなどを求めている訴訟で、同社が提出した答弁書には検討中の安全対策の内容が含まれ、「適合性審査を受けるための準備段階での請求は適格性を欠く」などと主張。工藤寿樹市長は10月30日の会見で、同社が規制委への申請を行わない中でのこうした主張に強い不快感を示していた。

 市総務部によると、6日現在、同社から来庁に関する連絡はないとし、工藤市長は取材に「(電源開発から)連絡が来ていないので話のしようがない」と話している。(今井正一)


◎津波に備え避難経路確認、石崎小で住民参加型防災総合訓練

 函館市の防災総合訓練が6日、函館石崎小学校で行われた。住民参加型の訓練で、同校児童や周辺町会、自主防災組織など約350人が参加。津波発生時の避難経路の確認や避難所の運営などを体験し、緊急時に備えた。

 訓練は市内沿岸部の地区を対象に行っており、今年で3回目。石崎町は最大規模の津波浸水を予想した「津波ハザードマップ」上の浸水区域となっており、海抜26・1㍍の同小へ避難し、避難所生活を体験することを目的に実施した。

 午後1時15分に三陸沖北部でマグニチュード8・0の地震が発生し、市内では震度5強を観測、太平洋沿岸西部に大津波警報が発表されたとの想定で訓練を開始。参加者は函館中央署や市消防本部の指示に従い、次々と避難所の体育館に集まった。負傷者の搬送も行い、自主防災組織のメンバーは「大丈夫でしたか」「頑張ったね」と声をかけながら応急手当てを施した。

 車両から体育館へリレー形式で水や支援物資を運んだり、避難所の運営を支援する防災ボランティアが行方不明者の安否を確認。町内の主婦が中心となって約300人分の炊き出しを用意し、銭亀沢中学校の生徒たちが配るなどして手伝った。

 石崎小の木村歩夢君(11)は「すぐに避難するためには、ルールをしっかりと守ることが大切だと分かった」と振り返る。毎年訓練に参加している同町の主婦、原田清子さん(77)は「災害時は年齢も職業も関係なく、みんなが協力しなければならないと改めて思った」と話していた。改行 リーダー役として指示を出した同町会の田中勝廣会長(82)は「町内会独自の訓練も引き続き実施して、常に防災意識を高く持っていきたい」と語った。(蝦名達也)