2014年12月31日 (水) 掲載

護国神社が大判「板かるた」初詣期間に公開 GLAY直筆絵馬も展示

 初詣と一緒にジャンボ「板かるた」の観賞はいかが—。函館市青柳町の函館護国神社(真崎不二彦宮司)は、現在は一般に公開していない函館の書家・故中村北潮(1909〜94年)がしたためた「板かるた」を初詣期間中、参拝者に公開する。真崎宮司は「函館ではあまり知られていない書家だが、独自の書体を楽しんでもらえれば」と呼び掛けている。

 板かるたは、明治初期に屯田兵が労働などの合間に娯楽として百人一首を取り入れようと考えたが、当時の道内は紙が貴重で少なかったため、木を削って制作した。

 中村氏は函館の回船問屋に生まれた。幼いときに浄土宗の寺に預けられ、書の修業を積んだ。13歳で「北潮」と号し、書道塾「北潮舎」を開き門下生を育てた。60歳を過ぎたときから板かるたを制作。作品は「百人一首かるたの聖地」といわれる近江神宮(滋賀)にも奉納されている。

 真崎宮司によると、中村氏の板かるたは93年に紹介を受けて奉納され、本殿に向かって左にある絵馬殿内に設置した。木はカツラで、横13、縦20㌢。その大きさと、流れるような筆遣いと躍動感にあふれている様子を対比してもらおうと、一般的な大きさの板かるたも並べている。

 以前は公開していたが、現在は防犯の都合で、例大祭(5月)、終戦記念日祭(8月)などで参列した関係者のみ見ることができていた。ことしは中村氏が没後20年で、参拝者に公開することを決めたという。

 このほか、昨年7月に函館出身のロックバンド・GLAYが凱旋野外ライブを開いた時に、ライブの成功と函館発展を祈願した、メンバー直筆の絵馬も特別展覧する。  (山崎純一)



年の瀬 市内大忙し 

 大みそか前日の30日、函館市内は年越しや正月の準備ムード一色となった。市場やスーパーは買い出しの市民で混雑し、年末年始用の食材が次々と売れた。料理店やホテルではおせち作りが佳境に入り、そば店も年越しのそば打ちに精を出した。

 函館市中島町の中島廉売は、鮮魚を中心に肉や野菜、総菜を求める客でにぎわった。店頭には刺し身用のマグロやエビ、カニなどがすらりと並び、店員の「安いよ」「買っていって」などと威勢のいい声が飛び交った。

 「紺地鮮魚」の紺地慶一社長は「マダラやババガレイが昨年の半値近くでお薦め。でも近場にスーパーができた影響か、年末の客入りはいまひとつだね」と話した。

 「いづみ惣菜(そうざい)店」(和泉久美店長)では、おせち料理に欠かせない黒豆、昆布巻き、なますがよく売れた。和泉店長は「31日まで忙しい。ことしは天候にも恵まれて何より」と笑顔を見せた。

 家族3人で買い物に訪れた函館市本通の主婦谷内葉子さん(35)は「正月用のマグロを買いに来た。消費税増税や電気料金再値上げなどもあり、財布のひもは固めです」と話していた。

 はこだて自由市場(新川町)も終日混み合った。中島廉売、自由市場は31日も営業する。(山崎大和)



2015年 地域経済は

 2014年は、消費税が8%に引き上げられたほか、電気料金の再値上げもあり、家計や企業活動に大きな影響をもたらした。経済政策の効果もあり、持ち直しの動きを続けているが、増税に伴う駆け込み需要の反動減の影響もまだまだ残っている。来年は道南に明るい兆しが見えるのか。日銀函館支店の沼本奈美支店長と財務省函館財務事務所の奥村一夫所長の2人に地域経済の現状と来年のポイントを聞いた。

 ■日銀函館支店 沼本奈美支店長

 ◇所得アップで好循環を

 4月に消費税率が引き上げられ、駆け込み需要の反動減は6月ごろまで続き、夏場には良くなっていくという期待感があった。ただ、影響は長引き、年末になった今も、住宅や自動車、家電など価格が張るものに残っている。一方で観光は力強い。夏場は天候の乱れなどの影響もあったが、インバウンドの客が好調で、勢いがあるのは地域経済にとって好材料。全体としては緩やかに持ち直しているといえる。

 来年のポイントは「所得環境がどうなっていくか」。所得が上がり、支出が増えるという前向きなメカニズムが力強く働いていくことが何よりも大事。企業側から見ると、収益アップにつながる。こういった好循環をつくれるかどうかだ。

 もう一つは「人の流れ」。来年8月にオープンする函館アリーナには域外からも大勢の人がやってくるだろう。大きなコンベンションの誘致活動もしやすくなる。国際都市として国際会議を誘致すべきだ。また、16年3月の北海道新幹線開業を控え、イベントが数多く開かれる。いずれも基幹産業である観光に大きな効果をもたらすはず。長期、短期的に見ても明るい材料だ。

 ■財務省函館財務事務所 奥村一夫所長

 ◇材料豊富 伸びしろ十分

 地元企業からは、アベノミクスの恩恵が届いていないという声が上がっている。消費税増税に伴う駆け込み需要の反動減は想定内だったが、夏以降も勢いが戻らず、基幹産業の一つである水産業からは特に厳しい声が聞かれた。ただ、企業の生産活動は堅調に推移しており、観光の数字も好調。雇用は一部でミスマッチが見られるものの、求人倍率は改善した。

 来年は函館アリーナがオープン。北海道新幹線開業の足音も近づくなど、明るい材料は多い。他の地域と比べて函館は伸びしろが十分あり、可能性を秘めた都市だといえる。14年度末の北陸新幹線開業で、観光客の減少を懸念する声も聞かれるが、あまり影響はないのではないか。アジア各国と函館を結ぶ航空便が増え、引き続き外国人観光客が函館観光をけん引していくだろう。

 大門・五稜郭地区では再開発ビルの建築が進んでいる。建物の姿が徐々に現れてくると、中心市街地活性化に向けた市民の機運も高まっていくだろう。ことし後半には大型スーパーが開店するなど、少しずつ芽は出てきているので、今後の動きには期待を寄せている。