2014年12月9日 (火) 掲載

◎函館どつくでことし最後の進水式

 函館どつく(函館市弁天町)で8日、ことし最後の進水式が行われた。市民ら約350人が詰め掛け、本年度5隻目の新造船「オーシャン・ラリー」(2万1550㌧)の雄姿を見守った。

 新造船はパナマの海運会社「スター・バルク・キャリア・カンパニー・エス・エイ」が発注した全長180㍍、幅30㍍のばら積貨物船。燃費性能を向上させたエコシップで、同社の親会社にあたる名村造船所(大阪)と共同で、10月20日から同船の建造を進めてきた。函館どつくでエコシップを手掛けるのは3隻目。完成・引き渡しは来年1月下旬を予定している。

 進水式では船をつないでいた手綱が切られると、巨大な船体がゆっくりと海に向かって進みだした。記念のくす玉が割られ、紙テープをなびかせて海に滑り出す姿に、観客からは歓声が沸き起こった。

 この日は、北海道海事広報協会(小樽市)が、船に親しんでもらおうと、函館市内の小学校3校の児童約130人を招待した。日吉が丘小5年の岩船陸空君(11)は「進水作業を初めて見ることができ、おもしろかった」と笑顔で話していた。

 同社は、来年2月の進水に向けて、新造船1隻を現在建造している。(山田大輔)



◎韓国・江陵市長ら市を表敬

 韓国の江陵(カンヌン)市の崔明熙(チェミョンヒ)市長(59)ら訪問団が8日、函館市を表敬訪問した。2018年に開かれる平昌(ピョンチャン)五輪をPRするとともに、函館との交流に意欲を示した。

 江陵市は平昌五輪でスケート競技の開催地となっている。訪問は大会後の観光振興策を学ぶ目的で、崔市長や市職員のほか、世界文化遺産に指定されている同市の祭り「端午祭」の責任者ら10人。6日に道内入りし、小樽市の視察を経て函館入り。市内では五稜郭公園やベイエリア、朝市などを見て回る。

 工藤寿樹市長は「江陵市は歴史的建造物が多く、良港を持ち、イカが特産品と函館と似通っており、親近感を持っている」と歓迎。運休が続いているソウル(仁川)との定期航空路について「来年韓国を訪問し、航空会社に再開をお願いしたい」と述べた。

 崔市長は2007年に函館を訪れた経験があるといい、「今回の訪問は五輪開催後の変化を求めるため。参考にさせてほしい」とし、「今回の訪問が交流のきっかけになれば」と述べた。

 その後、PRビデオなどを通じ、北海道新幹線開業や外国人観光客誘致に向けた函館の取り組みを学んだ。一行は札幌市を訪問した後、10日に帰国する。(千葉卓陽)



◎函館東ロータリークラブがタイで奉仕活動

 函館東ロータリークラブ(五十嵐稔会長)は、国際奉仕活動としてタイを訪問し、現地で障害のある4〜16歳の男女17人に車いす(約40万円相当)を贈呈した。障害者が車いすを作る工場や、寄付を受けた子供の家庭も視察し、五十嵐会長(60)は「物を贈るだけの奉仕でなく、物づくりの人、支援する人、使用する人がつながる循環型奉仕活動の重要さをあらためて知った。今後も支援できれば」と話している。

 タイで車いすや奨学金の寄付を通じ、障害のある子どもの自立を支援する「アジア車いす交流センター・タイランド」(略称WAFCAT=ワフカット)のメンバーと、同ロータリークラブの会員が親交があり、2012年に続き2回目の実施(13年は現地の情勢不安のため中止)。五十嵐会長、國谷大輔幹事、吉田昇会員、小林眞樹国際奉仕委員長の4人が11月21〜26日の日程で訪問した。

 始めに、タイ中部にある障害者が車いすを作る「タイウィール工場」を訪問。使用者の体や障害に合わせて大きさや機能、タイヤ数まで異なる製作工程を見学。組み立て体験もした「丁寧に作業する様子から、使用者に事故が無いことを祈っているように感じた。(体験で)自分たちも相手の気持ちがよく分かった」と五十嵐会長。

 組み立てた1台を持って、アントーン県特殊教育センターへ移動し、贈呈式を行った。その後、車いすを使用する少女の家を訪問。日常生活や訓練の様子をありのままに見せてくれ、明るく接する親子に触れたという。五十嵐会長は「どのような形で支援をさせていただくことが良いのかを考えるきっかけになった」と振り返る。

 首都バンコクでは地元のロータリークラブ例会に参加し、親交を深め現地で可能な事業を探った。五十嵐会長は「ワフカットの協力で行えた奉仕。現地の障害者支援を底上げしていく気持ちをつなげていきたい」と話した。(山崎純一)


◎廃棄物活用 高専生が研究

 函館高専(岩熊敏夫校長)の物質工学科5年生4人が、ホタテの外套膜と精巣から調味料になる「呈味性(ていみせい)エキス」、トウモロコシの芯からバイオエタノールを開発する研究を進めている。廃棄物を活用し、高付加価値製品の創出につなげたい考えだ。

 小原寿幸教授の研究室に所属する佐藤樹梨花さん(20)、田井中玲奈さん(20)、高橋桃子さん(19)、秋田裕有子さん(19)が卒業研究として取り組む。

 ホタテ貝柱から作った粉末エキスは既に商品化されており、さまざまな料理に使われる。学生たちは通常捨てられるホタテの外套膜と精巣の新たな可能性に着目した。

 研究では、外套膜と精巣のタンパク質を酵素分解したアミノ酸を、凍結乾燥して粉末エキスが完成。そのままだと苦味や生臭さが強いため、苦味を低減する包接化合物「シクロデキストリン」を加え、シクロデキストリンを加えたものとそうでないものを呈味試験した。シクロデキストリンを加えたものは苦味を改善することができるが、同時にうま味や甘みも薄まり、あまり良い結果ではなかったという。

 学生たちは、味の改善に向けて外套膜と精巣をボイルしたり、タンパク質を分解する時間を長くしたりするほか、酵素量の増加、シクロデキストリンの最適な添加量を探る実験を重ねている。佐藤さんは「貝柱エキスは1㌔1万円する商品もあるが、未利用資源を使えばもっと安く製品化できる」と話す。小原教授は「中華料理の隠し味として活用できれば」と期待を込める。

 一方、トウモロコシの芯からは、バイオエタノールを効率よく生産するための前処理方法を研究中。田井中さんは「作物をバイオ燃料に使うか、食用に使うのかという競合が起きており、芯だと食料と競合しない」と未来のエネルギー源の可能性を強調している。(山崎大和)