2014年3月11日 (火) 掲載

◎震災3年 風化させぬ 観光業界、津波防災に全力

 東日本大震災発生から11日で丸3年がたった。函館でもベイエリアや朝市など沿岸に津波が押し寄せ、大きな被害をもたらした。その教訓を生かそうと、観光施設や宿泊施設は観光客の命、安全を守るための努力を続けている。「震災を風化させてはならない」。関係者の思いはひとつだ。

 海沿いに建つ金森赤レンガ倉庫。震災では館内に津波が押し寄せ、甚大な被害を受けた。「津波に対する認識があまりにも低かった。被害を目の当たりにして、お客さま、従業員の命を預かっているということの責任を改めて感じた」。金森商船の取締役営業部長の柳谷一美さんは震災発生直後を振り返る。

 同社は震災をきっかけに防災に対する意識が180度転換した。津波に対して無知だった反省から、すぐに防災に全力で取り組む企業に変えていかなければならないという社内議論になったという。その年の6月には津波発生時の詳細な対応マニュアルと行動指針を作成。合わせて全ての入り口に土のうを積む訓練を始めた。

 外国人を含め、多くの観光客が訪れる函館。2年後には北海道新幹線開業も控えている。万一の際にどう観光客を避難させ、安全を確保するか—。企業だけでなく、観光業界全体の課題として浮かび上がった。

 防災体制構築の機運の高まりを受け、函館国際観光コンベンション協会は昨年、津波防災勉強会を立ち上げた。行政とともに勉強会を重ね、成果をチェックリストという形でまとめた。道内の観光協会としては初めての試みで、災害時の役割分担や情報収集、避難誘導の方法を盛り込んだ。同協会事務局長の三浦孝史さんは「会員の意識の高まりを感じている。どう行動すべきかを分かりやすく記すことに腐心した。活用する企業、施設が広がれば」と期待を寄せる。

 この動きは湯の川温泉にも広がった。函館湯の川温泉旅館協同組合も昨年11月に勉強会をスタートさせた。津波のメカニズムを学ぶことから始め、避難について意見を交換している。河内孝善副理事長は「決して他人事ではない。震災を経て意識は確実に変わった」と話す。

 金森商船の土のう積み訓練。今年は6月に行う予定だ。柳谷さんは「津波被害を受けた施設、企業として、津波の恐怖や体験したことを伝えていく責任がある。訓練はまだまだ十分ではない」と語った。(松宮一郎)



◎自転車観光 青函圏で

 自転車と観光を組み合わせた「サイクル・ツーリズム」を青函両地域の新たな観光の目玉にしようと、函館開発建設部は10日、函館市末広町のアクロス十字街で初の研究会を開いた。津軽海峡をまたぎ、国内、海外から観光客を呼び込む考えだ。両地域の関係者約40人が、意見交換しながら可能性を探った。

 本道の夏は涼しく、豊かな自然、景観を楽しめるとあって海外客を中心にサイクル・ツーリズムの人気が高まっている。2012年には北海道商工会議所連合会などが中心となってサイクル・ツーリズム北海道推進連絡会を組織。道東でも海外客の自転車ツアーが増加しているという。

 ただ、道南ではこれまで目立った動きがなく、道内では後発地域。一方、青森県はサイクル―に力を入れており、2年後に迫った北海道新幹線の開業を見据え、道南側から連携を呼び掛けた。

 研究会には両地域の行政、民間の関係者が参加。開発局が、国内と台湾で行ったニーズ調査の結果を紹介。台湾では自転車観光の人気が高く、本道への来訪希望者も多いことが報告された。また、課題として、コース設定やガイドなどの人材育成、休憩場所の設置などを指摘した。今後も研究会を重ねて課題解消に向け話し合い、両地域の連携組織を立ち上げたい考えだ。

 函館サイクリング協会の高坂克也理事長は「道南は道東に比べて直線が長く続く道路は少ないが、大沼や追分ソーランラインなど楽しんでもらえるコースは多い。青函連携に協力していきたい」と話した。(松宮一郎)



◎三木露風の資料200点 あすから特別展

 【北斗】童謡「赤とんぼ」を作詞した詩人で、大正期にトラピスト修道院の文学講師を務めた三木露風(1899〜1964)を題材にした創作合唱劇「赤とんぼ」(実行委)が16日、北斗市総合文化センター(中野通2)で上演されるのに合わせて、大野文化財保護研究会と上磯地方史研究会、当別三木露風勉強会(ギャラリー日ノ丘)、おりがみサークルメルヘンの4団体が12日から、同センターで「赤とんぼ・三木露風特別展〜トラピスト修道院での4年間〜」を開く。16日まで。

 新聞記事やパンフレットなど露風にまつわる資料約200点を展示。同勉強会が2008年の発足から収集した資料のほか、露風の作品が掲載されている大正時代の児童文芸雑誌「赤い鳥」8冊も市郷土資料館から借りた。

 メルヘンは露風が暮らしたトラピスト修道院や周辺の景色を折り紙で制作し、赤とんぼの折り紙を天井から吊るし装飾。

 石別中学校の生徒も短歌や壁新聞など作品を出品した。大野文化財保護研究会の木下寿実夫会長は「名曲が生まれた背景や露風の人となりを知ってもらうきっかけになれば」と話していた。入場無料。


◎野外劇出演目指し熱演 メーンキャストオーディション

 NPO法人市民創作「函館野外劇」の会(中村由紀夫理事長)は9日、函館市民体育館で今年の第27回講演のメーンキャストオーディションを開いた。

 オーディションはペリー提督のコロポックルなど全18役。オーディションには約40人の応募があり、うち22人が参加した。自己紹介と野外劇出演への思いを語ったほか、台本に沿ってせりふを披露した。

 箱館戦争シーンの土方歳三役の希望者は3人。声を張り上げ、迫力ある剣術を見せるなどし、アピールした。5年目のオーディション参加で、昨年に続いて土方役を目指す河野憲嗣君(18)は「昨年とは違って、いきなり自己紹介やアピールすることになり、戸惑った。でも昨年の経験を生かし、今できることができた」と話していた。

 審査結果は1週間以内に郵送で通知し、23日から稽古を開始する。今年の公演は7月11日〜8月10日の全10回。(小林省悟)