2014年3月21日 (金) 掲載

◎きょう函館大火80年 炎の波 必死に逃げた 防災の大切さ訴える

 1934(昭和9)年3月21日に函館市内で発生し、2166人の命を奪った函館大火から80年。当時12歳だった東川町在住で町会長の角谷隆一さん(92)は「とにかく必死に避難した。火が消えるころには服も焼けて穴だらけ、火傷もしていたが、どうにか家族で無事に翌朝を迎えられた」と振り返り、防災の大切さをあらためてかみしめている。

 大火時は栄町に住んでいた角谷さん。家は材木店で家族6人暮らし。通っていた弥生小の卒業式を目前に控えていた。

 その日は風が強く冬の寒さなどもあり、家の窓を閉め、さらに板戸で覆っていた。外の様子はほとんど分からなかったという。「外が騒がしくなったので、見てみたら、西別院(本願寺函館別院)の屋根が真っ赤に燃えているのが見えた。すぐに家の方にも来るだろうと感じた」。

 家財道具などを積んだリヤカーを引き、家族で家を飛び出した。強風が吹き荒れ、切れた電線が波打ち、屋根のトタン板に巻き付くほどだった。「大森浜に逃げろ!」という声を聞き、風上の大森浜へ急いだ。避難してきた人でごった返していた大森浜だったが、風向きが変わって火の海に。膝丈ほどの炎が地面を覆い、風が吹く度に炎の波となって押し寄せた。「とにかく熱かった。どんどん岸壁側に追い詰められ、海に飛び込む人もいた」。

 迫りくる炎を耐えしのぎ、迎えた翌朝。持ってきた家財道具は全て焼け、手元には仏壇の掛け軸などがわずかに残っただけだった。自宅も焼け落ち、何もなくなってしまった。

 角谷さんは「もう80年経ったのかと思うばかり」と感慨深げに話し、「あれから函館は防災のまちとして発展してきたが、東川町会には70歳以上の高齢者が多く、何かあれば簡単には避難できない。何らかの対策が必要ではないか」と訴える。(虎谷綾子)



◎開業効果生かし食と観光PR 江差信金と桧山振興局が連携協定

 【江差】江差信金(藤谷直久理事長)と桧山振興局(立花謙二局長)は20日、地域活性化に向けた包括連携協定を結んだ。2年後の北海道新幹線開業効果を生かす魅力発信などに力を入れていく考え。

 地域活性化に向けた同様の協定は道内で8番目となるが、同振興局によると「新幹線開業効果を盛り込んだ協定は全道初」。同信金の創立90周年の契機にも合わせた。

 協定内容は▽新幹線開業効果などを生かした桧山の魅力発信▽活力ある地域づくりの推進▽自然環境の整備・保全▽地域を支える人づくり―など。木の遊具貸し出しや植樹、清掃活動などの充実を図る。

 締結式で藤谷理事長は「江差信金は2月に創立90周年を迎え、地域の産業振興に今後も関連機関と連携を深めていきたい」。立花局長は「経済を支える江差信金とともに、今まで以上に幅広く地域の食と観光などのPRに努めたい」と話していた。(田中陽介)



◎函館市議会予算委 大間原発提訴議案を可決 26日に本会議で採決

 函館市議会の予算特別委員会(金沢浩幸委員長)は20日、大間原発(青森県大間町)の差し止め訴訟提起議案など、付託された議案64件を原案通り可決し、審査を終了した。大間関連議案は26日の第1回定例会最終日で、退席者を除いて全会一致で可決する見通し。市は可決後の4月3日に東京地裁に提訴する。

 可決されたのは、国と事業者の電源開発(東京)を相手取り、同原発の建設差し止めと原子炉設置許可の無効確認を求める裁判の提起のほか、新年度補正予算で弁護士への日当など訴訟費用391万円を計上する2件。採決では市民クラブの井田範行氏が退席し、4会派(市政クラブ、民主・市民ネット、公明党、共産党)が賛成して可決した。

 井田氏は取材に対し、退席の理由として「大間原発に市民の多くが不安を抱いていることは承知しているが、エネルギー問題は国策の部分が多い。国がしっかりと対応していくべき」と述べた。同会派は26日の最終日も、2人が退席する予定としている。

 このほかの議案では、新年度一般会計予算は補正分を加えた総額が1369億8710万円となった。また、新年度の職員給与削減幅を本年度比2%減の平均4・5%とする条例の一部改正や、定住自立圏形成に向けて市と道南17市町が個別に結ぶ協定などが可決された。(千葉卓陽)


◎ロゴ入り函館市電 今月で見納め 開業100周年記念

 路面電車開業100周年を記念したロゴマーク入りの方向幕や系統板を取り付けた函館市電が今月末で見納めとなる。昨年6月29日の開業記念日をはじめ、さまざまな形で市電の歴史を発信してきた記念事業が終了となる。

 漢数字の「百」をあしらった記念ロゴは公立はこだて未来大の協力でデザイン。ロゴは2012年10月から超低床電車「らっくる号」の車体に大きくラッピングしたほか、同年11月から車体前後の系統板に導入。昨年2月からはデジタル表示車両を除く方向幕にも採用し、市民や観光客に100周年をPRしてきた。

 「らっくる号」のラッピングは既に終了し、方向幕は3月末に通常のものに交換を予定。系統板は4月以降に取り換える予定で、市交通部事業課は「新たな系統板には『函館ロゴマーク』を入れることを検討している」としている。(今井正一)