2014年3月28日 (金) 掲載

◎豪雨乗り越えアスパラ収穫…厚沢部の木口さん

 【厚沢部】昨夏の集中豪雨で浸水被害に遭った町内赤沼町の木口幸弘さん(44)の立茎アスパラガス栽培ハウスで、春の収穫が始まった。災害以来、本格的な収穫。木口さんは「あの時に皆が手伝ってくれたのでこのアスパラがある」と復旧作業を支えた農家仲間らへの感謝を胸に作業に汗を流す。

 昨年8月18日の記録的な集中豪雨で、ハウス13棟(331平方b9棟、265平方b4棟)がすべて浸水した。同日午後、大人の背丈ほどの水が入り、アスパラ栽培13年の木口さんにとっても「手がつけられない初めての経験」。連日の残暑、蒸し暑いハウス内で汗だくになって後片付けに追われた。

 そんな中、仲間の存在が励みだった。被災後間もなく、桧山南部立茎アスパラガス生産組合(根津貴浩組合長)が音頭を取り、厚沢部と江差、上ノ国、乙部の組合員のほか大根部会や農業改良普及センター、農協、赤沼町内会、厚沢部・地域おこし協力隊ら総勢80人がハウスに駆け付けた。

 泥まみれで倒れたアスパラを刈り、丁寧にかき集めては重機で運び出す作業を繰り返した。強い日差しと雨上がりのうだるような暑さの中、「人海戦術でやれば大丈夫だ」と結束した。

 根津組合長(50)は「元に戻るか心配だったけれど、立派に成長したアスパラを見ると本当にうれしく思う」。27日には根津組合長と農協職員らがハウスを訪れ、「木口さんの表情も明るくなって良かった。あの時は本当に辛かったよね」と当時を笑顔で振り返った。

 木口さん方の収穫は24日から始まり、9月まで続く。木口さんは「どれだけ収穫できるか分からないけれど」と言葉少なだが、例年以上の収穫の喜びと仲間の存在に思いを寄せている。(田中陽介)



◎大間訴訟へ初日は69万円…函館市 寄付金受け付け始まる

 函館市が国と電源開発(東京)を相手取り、4月3日に東京地裁に提訴する大間原発差し止め訴訟に対する寄付金の受け付けが27日から始まった。初日は午後5時現在で14件、69万3000円の寄付があった。

 自治体初の原発差し止め訴訟に当たり、全国から幅広く応援を得て訴訟費用に充てる目的。市への持参と現金書留、金融機関から受け付ける。

 “持参第1号”は市内根崎町で温泉旅館「湯元漁火館」を経営する穂積征七さん(72)。午前9時過ぎに市総務部を訪れ、三原克幸原発担当参事に50万円を手渡した。

 穂積さんは福島県南部の泉崎村出身。津軽海峡を挟んで原発の工事現場が見えるため事故への懸念が強く、以前から市への寄付を申し出ていた。穂積さんは「フルMOXの原発は世界に例がなく、実験的な原発で不安。放射能が漏れ出たらイカやマグロが全く売れなくなり、風評被害が起きる可能性がある」と話し、裁判終結まで毎年50万円の寄付を続ける意向を示した。

 初日は持参が5件、63万5000円、口座振り込みが9件、5万8000円だった。口座振り込みは北洋銀行函館中央支店の普通口座番号4187083、口座名「函館市大間原発訴訟寄付金」で受け付ける。現金書留の場合は〒040・8666、函館市東雲町4の13、函館市総務部総務課大間原発訴訟寄付担当宛て。 (千葉卓陽)



◎ドクヘリ運航調整委 発足

 渡島・桧山管内の自治体や医療機関など65団体でつくる道南ドクターヘリ(ドクヘリ)運航調整委員会が、27日に発足した。新年度の冬からの導入に向け、各市町の財政負担額を定めるとともに、運航会社を4月にプロポーザル方式で公募することを決めた。

 2012年4月に設置された調査検討会(伊藤丈雄会長)を経て設立。函館市内のホテルで開かれた初会合では、委員長に浅井康文札幌医科大名誉教授(67)=函館新都市病院名誉院長=を選出した。

 道南でのドクヘリは市立函館病院を基地病院とし、函館空港の格納庫を借りての運航が決定済み。運航経費のうち、国と道からの補助で賄いきれない費用は道南18市町で負担する。

 この日の会合では、来年1月からの運航開始を見込んだ場合、3月までに95件出動があり、3472万円の不足が生じると試算。格納庫のリース料などを全自治体で95万4000円ずつ均等に支出し、函館市と市立函病は専従職員の人件費を668万円ずつ負担。市は格納庫の整備費も2333万円負担する。各自治体はこのほか、利用回数に応じた費用負担も行う。

 また運航会社の公募に際し、これまでの実績や運航体制、機体の性能など4項目の提案を受ける考え。5月22日に審査会を設けて決定する。

 浅井委員長は「多くの方々の協力がなければ成り立たない事業。一人でも多くの命が救われ、新たなセーフティーネットの構築が図られるよう取り組みたい」とあいさつ。道東、道北でも調整委に携わっており、取材に対し、「自治体の費用負担は他地域にない新しい試み。いいシステムにして全国に発信したい」と述べた。(千葉卓陽)


◎広域連携で新たな一歩…道南18市町 定住自立圏形成協定を締結

 函館市と渡島・桧山管内の市町が連携して定住促進などを目指す「定住自立圏形成協定」の合同署名式が27日、ロワジールホテル函館で開かれた。全18市町の首長らが参加、新年度のドクターヘリ導入や、2年後に迫る北海道新幹線開業を見据え、道南一体となった広域連携への新たな一歩を踏み出した。

 定住自立圏構想は人口減少や高齢化を見据えた取り組みで、人口5万人以上などの条件を満たす中心市と、生活圏が同じ周辺自治体が連携して生活機能や経済基盤の維持を目指す。道南では制度ができた2008年度から取り組みが始まり、ドクターヘリ導入の動きが進むにつれて協議が加速。3月に全市町の定例議会で協定締結に関する議案が可決され、中心市の函館市と、17市町が個別に協定を結んだ。

 今回結ばれた協定は広域救急医療体制の充実や広域観光の推進、国際化の推進など主に6分野7項目。北斗市と七飯町はこれに加え、夜間急病センターの運営など初期救急医療体制の充実に関する協定も結んだ。署名式で工藤寿樹函館市長は「18市町が機能を補完しあって共通課題の解決と産業振興に取り組み、魅力あふれる圏域をつくっていくことが重要」と述べた。中西猛雄渡島総合振興局長、立花謙二桧山振興局長もあいさつに立ち、協定の意義を強調した。

 定住自立圏が認定されると、国から財政支援として特別交付税が受けられるため、市は今年9月に、具体的な事業を盛り込んだ「共生ビジョン」を策定する考え。4月には18市町で共生ビジョンを協議する懇談会を設け、具体的な協議を進めていく。(千葉卓陽)

 「レクサ元町」は観光客の利用が多いことから「元町・ベイエリア周遊号」に名称を変更。1日32便運行するとともに、利用の少ない摩周丸前、東浜桟橋前などバス停8カ所を廃止する。「レクサ五稜郭」も名前を「日乃出・五稜郭循環バス」に改め、14便中3便はバスセンターまで乗り入れる。

 一方、函館国際水産・海洋総合研究センターへの路線を供用開始の6月に新設。月・金曜日に函館駅前から1便、函館どつくから7便運行する。また、赤川と昭和営業所を結ぶ55—1系統(1日4往復)を新設し、公立はこだて未来大学に乗り入れる。

 廃止は8系統(日吉営業所—函館駅前)の急行便と、函館江差線のうち五稜郭と亀田支所を経由する1便。また、西部地区を運行する「お元気バス谷地頭号」は月・金曜日の運行にし、1日1便に減らす。 (千葉卓陽)