2014年4月25日 (金) 掲載

◎「榎本武揚の書」寄贈のお礼へ墓参り 江差の石橋さん、25日に岩手入り

 【江差】箱館戦争当時に江差沖で沈没した旧幕府軍の軍艦・開陽丸の発掘調査に尽力した、元江差町教育長の石橋藤雄さん(89)が25日、岩手県陸前高田市に入り、活動を支えた恩人の墓前に手を合わせる。約40年前、石橋教育長宛てに「何かに役立ててもらえれば」と榎本武揚の書を寄贈した人物で、石橋さんは「じかに会ってお礼したいとずっと思っていた。書を大事に持っていた理由や意味合いを確かめたい」としている。

 書(縦1・4b×幅31・5a)を寄贈したのは、岩渕としみさん。1976年8月に4枚の書を江差に贈った。同じ文で1枚には印が押してあり、残りの3枚は下書きの可能性が高い。

 印のある書は、江差の開陽丸記念館で展示中だが、これまで脚光を浴びることはなかったという。

 石橋さんによると、この書は榎本武揚が仙台や石巻に約50日間滞在したときにしたためたものと分析。「奥羽越列藩同盟の結束が崩れ、頼りの仙台藩も和平論に傾きかけるなど徳川家の再興を願っていた榎本の意に反する時代の流れや、悩みの心情を表現したものに違いない。自分の行く末を予感してしたためたのでは」とみる。

 寄贈当時、江差での発掘事業が全国ニュースだった。石橋さんは「毎日発掘事業に追われて、礼状を出したつもりだが、忙しさを理由にしっかりとしたお礼ができていなかった。こればかりが心残りだった」という。

 そして2011年、東日本大震災が発生。連日、陸前高田市の報道に「あのおばあちゃんが心配だ…」と市役所に電話を入れた。岩渕さんは大震災前に亡くなっていたことが分かった。その後親族の情報も把握し、「どうしても会ってお礼を伝えたい」と岩渕さんの寄贈を紹介している石橋さんの著書を関係機関に贈るなどし、今年に入り訪問の段取りが一気についた。

 石橋さんは「岩渕さんのお墓参りと大震災の被災者への供養などもしっかりしてきたい。江差のようかんを持っていく」と話している。

 27日には東京で開陽丸子孫の会(榎本隆充会長)総会があり、石橋さんも出席して書の意味合いの解明に関係者の協力を呼び掛ける。(田中陽介)



◎函館の味 手づくり体験 ベイエリアに観光施設あすオープン

 魚長食品のグループ会社で水産加工品製造の「かくまん」(柳沢政人社長)は26日、ベイエリアの西波止場に体験観光施設「手造りいか工房いかベイ」をオープンさせる。修学旅行生や国内外の観光客らにイカ塩辛やいかめしづくりなどの体験を通して、函館の食文化を身近に感じてもらう。

 2016年3月の北海道新幹線開業を見据え、観光客のニーズが高い体験観光に対応する。地域資源の活用を促す国の事業に採択され、国土交通省と農林水産省、経済産業省から認定を受けた。西波止場2階の空きスペースを改修し、100人ほど受け入れが可能で、通年で利用できるようにした。

 メニューは塩辛やいかめし、松前漬づくりがメーン。地元産のマイカを使い、さばき方を見てもらったり、製造体験をしたりする。体験ばかりでなく、イカの生態や函館の歴史、文化、イカ漁の変遷なども学んでもらえるようにしたことも特徴。所要時間は1時間ほど。

 24日にはオープン前の体験会があり、遺愛幼稚園の園児と保護者が塩辛づくりといかめしを試食。親子で楽しみながら体験を楽しんだ。施設の責任者、魚長食品営業部マネージャーの大西修司さんは「観光客はもちろん、地元住民にも利用してもらい、文化の継承にも役立てたい」と話している。(松宮一郎)



◎東北と道南の名産品ずらり 棒二森屋で物産と観光展

 青森や岩手などの東北圏と函館や奥尻などの道南圏の名産品を集めた「東北と道南の物産と観光展」が24日、棒二森屋(若松町17)で始まった。北海道新幹線開業を控え、東北や道南を広くPRしようと初の企画。29日まで。

 23店舗が実演販売するほか、各地の土産物や、人気の駅弁を取りそろえる。岩手県からは盛岡冷麺「ぴょんぴょん舎」が出店し、自慢の冷麺を販売。青森県八戸市の朝市名物「大安食堂」の「しおてば」や、奥尻町の名産「奥尻ワイン」や「粒うに・岩のり」などもあり各地の魅力が堪能できる。

 初日の24日は、青森県八戸市のご当地グルメ「せんべい汁」が無料で振る舞われ、多くの来場者が味わった。北斗市の小鹿和春さん(70)は「東北の名産品が買えるということで見に来たが、振る舞いもあって驚いた。はじめて食べたが、素朴でとてもおいしかった」と話していた。午前10時〜午後7時まで。最終日は午後5時まで。(虎谷綾子)


◎大間原発差し止め訴訟 市長、初弁論に出席へ 第1回口頭弁論7月3日で調整

 函館市の工藤寿樹市長は24日の定例会見で、7月3日で調整を進めている大間原発(青森県大間町)建設差し止め訴訟の第1回口頭弁論に出席し、裁判の冒頭で意見陳述を行う意向を明らかにした。

 市は4月3日に建設差し止めと原子炉設置許可の無効確認を求め、国と電源開発を相手取り東京地裁に提訴。6月の定例市議会終了後に口頭弁論を行う方向で調整している。

 同市長は初弁論の際に、弁護団から1時間程度の意見陳述を求められているとし「具体的なものも加えながら、大間原発の進め方の問題点を訴えたい。周辺自治体の意見が反映されない理不尽さを訴えることが一番」と強調。さらに「事故の時にどう対処するかがあいまいで、個々の自治体に丸投げされている。ハード面だけ強化することは第2の安全神話に過ぎない」と指摘した。

 また、静岡県が中部電力浜岡原発で重大事故が起きた場合、原発から半径31`圏の86万人の避難が完了するまでに30時間超かかるとするシミュレーションを公表したことに関し、同市長は「函館の場合も大混乱になるのは目に見えている。確定的には言えないが、30時間では不可能ではないか」との見解を示した。

 訴訟への寄付金は23日午後4時現在で467件、1684万2933円に上っており、同市長は「1カ月たたない中で市民や全国から賛同、応援をいただき心強い。市内の各団体が寄付の意向を示しており、5月の総会シーズンが終わればさらに増えてくるのでは」と話した。 (千葉卓陽)