2014年4月3日 (木) 掲載

◎大間差し止め きょう提訴、寄付金1週間で500万円

 函館市の工藤寿樹市長は国と電源開発(東京)を相手取り、大間原子力発電所(青森県大間町)の建設差し止めと原子炉設置許可の無効確認を求める訴訟を、3日に東京地裁に提訴する。寄付金は受け付け開始から1週間が経過した2日現在で107件、503万4180円に上っており、自治体初となる原発差し止め訴訟への関心の高さと、全国からの応援の広がりがうかがえる。

 訴状要旨では、電源開発に対して福島第一原発事故を踏まえ、事故が起きると自治体崩壊の危険性があると指摘、地方自治体が崩壊を防ぐ権利を訴えの根拠とする考え。国に対しては、原発事故前の基準に基づいて大間原発の設置許可を出したことを理由に、許可の無効を主張する。

 工藤市長は2日に上京。3日午後3時に弁護団を伴って東京地裁に提訴、同4時に記者会見を予定している。ただ、南米チリ北部で発生した地震の影響で函館にも津波が到達する可能性があり、市長自らの提訴や会見出席は流動的。被害の状況によっては帰函して対応に当たる場合もある。

 一方、3月27日から行っている寄付金の受け付けは、開始から1週間が経過した2日で500万円以上に達した。内訳は口座振り込みが60件、205万1000円、市への持参が32件、286万7000円、郵便書留が15件、11万6180円で、市総務部は「短期間でこれほど集まるとは」と驚いている。

 大口の寄付者も多く、これまでに100万円が2件、50万円が1件あった。3月31日に100万円を寄付した市内深堀町の自営業、本間芳光さん(78)は「大間は隣町だが、事故が起きたら函館は壊滅的な被害を受ける。子や孫のため、将来に禍根を残すことはしたくない」と話すとともに「提訴は市長の英断。ぜひ勝ってほしい」と期待した。

 本年度補正予算では訴訟費用として391万円を計上したが、同部は寄付金を訴訟費用に充て、一般財源を使わない方針で、本年度分はすでに確保された形となった。三原克幸原発担当参事は「税金投入に反対する意見も寄せられている。寄付金が本年度に余った場合、来年度以降の財源に充てていく」と話している。(千葉卓陽)



◎日本海南部と津軽海峡の海水温、例年より低く

 今年2月以降の日本海南部と津軽海峡の海水温が例年より低かったことが2日、分かった。気象庁のデータによると、水温の平年差はマイナス3〜4度。1〜5月に松前沖で行われるヤリイカ漁が今季、不漁に陥っているのは、ヤリイカ分布の適水温とされる6〜18度に達していないことが原因とみられる。

 同庁のシミュレーションでは、2月下旬の水深50bの水温は日本海南部の沿岸で平年より3度低い4度以下。津軽海峡の北海道側で同4度も低い2〜4度。3月に入ってやや緩んだが、低水温の傾向が続いた。

 道総研函館水試(金森浩一場長)の佐藤政俊研究職員は「日本海南部と津軽海峡では、低水温の原因が異なると考えられる」と指摘。日本海南部(桧山沿岸)では、例年より気温が低かったことに加え、北西風が吹いたことによる沿岸湧昇(表層水が沖に運ばれ、下層から冷たい海水が押し上げられる現象)が発生したことが推測される。

 道総研水産研究本部の観測結果(20b深水温)では、津軽海峡は今年、親潮(寒流)の勢力が強く北海道太平洋側の広範囲で低水温に。その海水の一部が海峡内に流入したため、海峡道側の水温が低下したとみられる。

 青森県産業技術センター水産総合研究所(平内町)によると、1999〜2005年に松前沖でヤリイカが水揚げされた日の水温は6・5〜11・1度(平均8・3度)。4月が漁獲ピーク。青森でも水温が低い状況が続き、1〜2月のヤリイカ漁が振るわず、3月もまとまった量の水揚げがなかったという。

 佐藤さんは「例年通り気温が上昇して対馬暖流が沿岸に沿うようになれば、水温は例年並みまで回復するだろう。順調にいけば、水温的にはヤリイカの来遊が見込める状況になるのではないか」とみる。(山崎大和)



◎日銀支店3月、観光を上方修正「回復」

 

 日銀函館支店(中川忍支店長)は、各指標に基づく3月の道南地方の金融経済動向をまとめた。全体の判断は据え置いたものの、観光客の増加を反映して観光の判断を「回復している」に引き上げた。同支店は東日本大震災の影響で落ち込む前の水準には達したとみている。

 2月の統計と3月末までの企業ヒアリングをもとにまとめた。全体の判断は「着実に持ち直している」と据え置いたが、それに加えて、「消費税率引き上げ前の駆け込み需要に広がりがみられる」と評価した。

 主要7項目で判断を引き上げたのは「観光」のみ。これまでは「緩やかに回復している」が続いていたが、「回復している」に一段引き上げた。主要ホテル宿泊客数や函館空港乗降客数などが前年を上回る状況が続き、好調を維持していることが要因。ただ、全体を押し上げるまでには至らず、中川支店長は「単価の高い客を取り込めるかが今後の課題」とした。

 また、消費税増税後の観光について「外国人客に影響はなく、好調を維持する」とみる一方、「国内客は不透明。マインドの悪化も懸念している」とした。

 「個人消費」は横ばい圏内だが、駆け込み需要で家電と自動車販売が伸びたほか、身の回り品や日用品などにも広がった。先行きについては「基調としては持ち直しの動きが続くが、増税後の影響について注視する必要がある」とした。(松宮一郎)


◎チリ沖地震、津波の恐れ 道南緊張

 2日朝、南米チリ沖で発生したマグニチュード(M)8・2の大地震による津波が3日早朝に太平洋沿岸に到達する可能性があることを受けて、道南では2日、関係機関や沿岸部の企業などが対応に追われた。東日本大震災で浸水被害を受けた函館市末広町の金森赤レンガ倉庫では社員が土のうを積むなど、万が一に備えた。

 金森赤レンガ倉庫では2日午後6時ごろから、金森商船の従業員約15人が緊張した様子で入り口に土のうを積み、営業終了後の午後7時すぎにはすべての入り口を封鎖した。震災後に定めた津波対策のマニュアルに基づく対応で、柳谷一美取締役営業部長は「津波到達まで時間があったので余裕を持って対応できた。被害がなければよいが」と不安そうに話した。

 函館市総務部では深夜、未明に注意報などが発表される場合に備え、防災担当職員や東部4支所管内の担当職員が待機する態勢を整え、広報を担う職員を招集するなどの津波避難計画に基づく方針を改めて各部局に伝えた。同部は「注意報発令時には、深夜でも防災行政無線や広報車などで一斉に周知する」とした。市港湾空港部は同日午後3時半までに、入舟町地区にある「陸こう」と呼ばれる幅14〜22b、高さ1bのゲートを閉めた。

 市消防本部は、情報収集のための連絡要員を配置。未明から段階的に増員、増車するほか、消防団員も自宅待機とし、注意報発令時には沿岸地域を車両で広報するほか、消防車両を増強して救急支援などにあたる。

 鹿部町総務・防災課は、午後5時20分ごろ、全戸約1800戸に防災行政無線で注意を呼び掛けた。森町でも、砂原地区全戸の防災無線や町内の屋外拡声器を通じて、注意報発令時には情報を流す。状況に応じて町内のパトロールや広報車で注意を呼び掛ける。

 道警函館方面本部警備課では、連絡要員5人を配置。津波の予想規模によっては対策室の設置を検討し、沿岸を中心に警戒する。函館海上保安部も気象庁の発表に基づき、船舶に向けての注意喚起など対応する方針。