2014年4月4日 (金) 掲載

◎大間原発建設中止求め提訴、函館市が自治体初

 【東京】函館市の工藤寿樹市長は3日、国と電源開発(東京)を相手取り、青森県大間町で建設中の大間原発の建設差し止めを求める訴訟を東京地裁に起こした。自治体が国を相手に起こす原発訴訟は全国で初めて。原発建設の同意手続きが立地自治体に限定され、原発から最短23`の函館市に権限が与えられていない不合理性などを、司法の場に問う。

 工藤市長は午後3時、河合弘之弁護士(東京)ら弁護団のほか、松尾正寿市議会議長、各会派の代表者らとともに同地裁を訪れて訴状を提出した。

 訴状では国に対し、福島第一原発事故の被害が原発から30`圏内を超えたことを踏まえ、原子炉設置許可の無効を求める。原子力規制委員会が昨年7月に策定した新規制基準での安全指針の不備を指摘し、建設停止を求める。

 さらに、UPZ(緊急防護準備区域)の30`圏内に原子力防災計画策定を義務付けた一方で「同意手続きを立地自治体に限定することは、立地自治体と周辺自治体を不公平に扱うことになる」と指摘。市が同意するまで建設停止を命ずるよう主張する。

 電源開発に対しては、重大事故が起きた場合「地方公共団体の存立自体が危険にさらされる」と結論付け、憲法で保障される地方自治体の存立を維持する権利に基づいて建設差し止めを求める。

 訴状ではまた、同原発がウランとプルトニウムを混合したMOX燃料を世界で初めて全炉心で使用する設計となっていることから、プルトニウムの毒性の強さを指摘し「重大事故が起きた場合、短時間に壊滅的被害に遭う」と主張。住民が避難する場合の避難路の脆弱さや、観光や水産など基幹産業への風評被害の可能性、テロに対する対策の不十分さなども盛り込んだ。

 工藤市長らは同日午後4時から司法記者クラブで会見し、「国や電源開発に対して再三要請してきたが何もしていただけず、市民の安心・安全を守るため、やむを得ず提訴に至った。大間原発の進め方の乱暴さや地域の思いを訴え、理解を得ていきたい」と意気込みを語った。

 また、河合弁護士は判決までの時期について「3年で判決をもらいたい。稼働して事故を起こしてからでは遅い」と話した。

 提訴を受けて電源開発は「これまでホームページでの情報公開のほか、函館市行政当局へ適宜、情報提供や説明をしてきた中で訴訟の提起は誠に残念。訴状が届いていないので具体的なコメントは差し控える」とした。

 その上で「今後の裁判を通じ、大間計画の意義や安全対策など当社の考えを主張していく。原子力規制委の安全基準、最新の知見を踏まえながら必要な安全対策を着実に実施することで安全な発電所づくりに取り組む。函館市にも丁寧に情報提供や説明をしながら計画を推進していく」とコメントした。(千葉卓陽)



◎大沼でモーターボート下架作業

 【七飯】観光遊覧船を運航する大沼合同遊船(小泉真社長)は3日、今シーズンのクルージング営業の開始に向け、モーターボートを湖に下ろした。

 今期は3月に晴れた暖かい日が続き、湖の解氷が順調に進んだため、平年通りの時期に下架作業となった。

 この日は午前8時半から作業を開始。作業員は陸揚げされていた12人乗りのモーターボートをフォークリフトで湖畔まで移動させた後、大型クレーン車でつり上げて湖に降ろしていき、8隻分の作業を完了させた。

 モーターボートは昨年、約4万7000人の観光客が利用し、クルージングで見る石割桜が人気を集めた。今季は5日から営業を開始する。

 営業担当の川村晃也さんは「ゴールデンウイークは道南の桜の開花時期と重なりそうなので、札幌や関東からの利用客増加に期待したい」と話している。

 遊覧船の下架作業は14日に行う予定。(柏渕祐二)



◎松前で春告げるフユザクラ開花

 

 【松前】サクラの名所である松前公園で、フユザクラが開花した。暖かな日差しに照らされた淡いピンク色の花びらが春の訪れを告げている。

 フユザクラは松前城周辺に十数本あり、公園内にある250種のサクラの中で最も早く咲く。松前町によると、昨年に比べ2週間ほど早い開花だという。

 3日現在、松前神社そばにある2本のフユザクラに5輪ほどの花が開いていて、散歩で訪れた人たちが、かれんな花を見上げている。

 同町の予想では、開花日を決定する標準木のソメイヨシノが5月1日、公園内で最も多いナデンが同2日としている。(金子真人)


◎チリ沖地震の津波、函館と森で最大20a観測

 チリ沖で2日に発生した大地震に伴う津波が3日、道内の太平洋沿岸にも到達し、道南では函館港と森港でそれぞれ最大20aを観測した。気象庁は同日午前3時に道南を含む太平洋側に津波注意報を発令、午後6時に解除した。函館市内では、消防車や市の広報車が市民に海岸に近づかないよう注意を促し、一時緊迫した。

 同市では2日夜、市役所本庁舎に防災担当職員を待機させたほか、津波警報発令時に対策本部を開設することになっている市総合保健センターでも職員が準備を進めた。同庁の注意報発表と同時に、市内の携帯電話のメールに一斉に届く「緊急速報メール」を配信したほか、「ANSINメール」などでも周知。最大23台体制で広報車を走らせて注意を呼び掛けた。

 函館港に面した市水産物地方卸売市場(豊川町)では、当初の津波の予想到達時刻が、競り開始時刻の午前6時と重なったため、競りの開始を30分遅らせた。

 市消防本部では、恵山や椴法華などの東部地区で3人ずつ増隊して非常時に備え、1時間ごとに車両で広報した。

 北斗市は3日午前2時すぎから、防災担当の総務課職員が先行待機。非常配備体制を取り、主査以上の職員約50人が出勤し、課ごとに警戒に当たった。自主避難勧告はしていないが、同5時から沿岸の住民センター9カ所に避難所を開設。このうち久根別住民センターに17人が自主避難した。

 道警函館方面本部警備課は警備災害対策室を立ち上げ、本部管内9署のうち、6署にも対策室を設置。約160人体制で、自治体と連携して情報収集や沿岸パトロールを行った。同課は「混乱はなく、けがや損壊の情報はなかった」とした。(小林省悟、今井正一、鈴木潤、虎谷綾子)