2014年9月3日 (水) 掲載

◎道南郷土料理の「味」データベース構築へ 函短大が研究

 函館短大(上平幸好学長)は本年度、残していきたい郷土料理の味のデータベースを構築する研究を進めている。各家庭で味が違って作るのが難しい郷土料理を次世代へ伝承するため、初心者でも作るのに必要な材料や手順などベースになる記録を残す。2日には、第一弾として「くじら汁」の試作を同短大で行った。

 南北海道学術振興財団(函館)の本年度の助成金採択を受け、教員ら6人が「道南郷土料理の食味データベース構築にかかる研究事業」(代表・澤辺桃子准教授)に取り組む。味が再現できるようにレシピを作るほか、道総研食品加工研究センター(江別)にサンプルを持ち込んで味覚センサーで味を数値化、人の味覚による官能評価も行う。いずしやニシン漬け、イカの塩辛も研究対象に予定している。構築後は短大ホームページで広く公開する。

 2日の調理には教員、学生合わせて10人、市内の主婦2人が参加。イワシクジラのほか、共通具材と調味料を使い、30代、50代、60代がそれぞれのレシピでくじら汁を完成させた。

 試食した同短大の畑井朝子名誉教授は「年代が若いほど脂身の切り方が小さい。長期保存するので、薄味の方が食べやすい」と講評した。

 食物栄養学科2年の石崎華奈子さん(19)は「うちで食べるくじら汁はみそ汁に近い味付けなので、しょうゆベースは初めて知った。家庭によって、具材の種類や切り方が違うことが分かった」と話した。 (山崎大和)



◎合併10年 学生が意識調査 北海学園大旧4町村から聞き取り

 2004年の函館市と旧東部4町村の合併から12月1日で丸10年となるのを前に、北海学園大学(札幌)の学生30人が市内で住民の意識調査を実施している。2日は椴法華、南茅部地区を回り、行政サービスの対応、地域の一体感など、この10年間の変化や思いを聞き取った。

 同大学経済学部の西村宣彦准教授(40)=地方財政論=が指導する2〜4年生の地域研修で「都市と漁村の結合」がテーマ。合併5年目の09年にも南茅部で調査した。西村准教授は「合併10年で財政面では大きな節目を迎える。行政の抱える課題と住民の視点には違いがある。生の声を聞いて、地域づくりのヒントを得たい」と話す。

 一行は、1日に函館入りし、市役所で現況についての説明を受けたり、市国際水産・海洋総合研究センターなどを視察。2、3の両日で4地区を回る。

 南茅部では、合併時の町長で、07年まで特別職の支所長を務めた細井徹さん(71)=尾札部町=が学生の訪問を快く受け入れた。細井さんは「合併は正しかった」と評価。一方で、単独存続を選んだ自治体の状況をみると、交付税の落ち込みが想定とは違い「手厚いまま」と指摘。「日本全体としてはいいことなんだろうが、当時のスローガンからすると不満はある。合併しなくても存続できたのではと考えることはある」と話した。

 また、合併当時は反対派だったという自営業佐々木幸一郎さん(72)=同=は人口の流出を憂い、「町の予算も厳しかっただろうが、まだやってやろうという気持ちが強かった。漁師も商売人も覇気がなくなったね」とした。「4町村はいずれも漁業の町。漁業が良くならないと地域が良くならない」と一層の漁業振興策を望んだ。

 同大学2年の黒川翔哉さん(19)は「資料だけでは分からない話を住民から直接聞くことができて新鮮です」と話した。  (今井正一)



◎函館舞台「そこのみにて光輝く」 世界映画祭で監督賞

 函館出身の作家、佐藤泰志(1949〜90年)原作の映画「そこのみにて光輝く」(呉美保監督)が、カナダで開かれた第38回モントリオール世界映画祭(8月21日〜9月1日)で最優秀監督賞を受賞した。函館でロケが行われた作品で、関係者は喜びに沸いている。

 同映画祭は、1977年に始まり、北米では最大規模。ワールド・コンペティション部門に出品された同作は、夏の函館を舞台に、悲しみを背負った男と家族のために必死に働く女の姿を描いた物語。主演は綾野剛さん、ヒロインは池脇千鶴さんが務めた。

 2013年6月下旬から1カ月かけ、函館市と北斗市で撮影。地元の約400人の市民ボランティアが参加し、啄木小公園や穴澗海岸などがロケ地となった。シネマアイリスの菅原和博代表が企画、制作を手掛け、10年に映画化された佐藤泰志原作の「海炭市叙景」に続く函館発信の市民映画だ。

 受賞を受け、呉監督は「一人でとれるものではなく、みんなの力があってこそのもの。佐藤泰志さんは芥川賞候補に何度もノミネートしながら賞に恵まれず、不遇の死をとげた。この賞を獲得し佐藤さんが報われたかなと感じています」とコメントを発表。

 綾野さんは「風が吹いたなって感じです。佐藤泰志さんに届けられたかなと思います」、池脇さんは「がらにもなく興奮してしまいました。すごくうれしいです」とした。 (平尾美陽子)


◎児童福祉に521万円寄付 昨年解散函館助産師会が市に

 昨年11月に解散した函館助産師会の代表清算人の青島チヨさん(91)が2日、市役所を訪れ、清算後の財産521万2165円を児童福祉事業に役立ててほしいと市に寄付した。市は来年度予算の児童館整備にかかわる事業費に充てる方針。

 同会の前身組織は1917(大正6)年に設立し、65年に社団法人化。68年に「愛育助産所」(梁川町)を開設し、2007年に嘱託医師が亡くなるまで、助産施設として利用された。09年に施設を廃止した後、法人としての役割を終えたとして、解散を決め、建物の売却など財産を清算。児童福祉向上につなげてほしいと寄付を決めた。

 青島さんは看護師を経て52年から助産師を務めた。「お産の始まりからお母さんをこと細かに観察、指導するのが助産師の務め」と話し、これまでに5000人を超える出産に携わったという。法人解散について「残念ですが、少子高齢化は時の流れで致し方のないこと」とした。

 市長室で青島さんに感謝状を手渡した工藤寿樹市長は多額の寄付に感謝するとともに「昨年は1700人しか子どもが生まれず、少子化は厳しい。来年度は子育てや少子化対策に力を入れたい」と述べた。 (今井正一)