2014年9月9日 (火) 掲載

◎世界遺産登録へ助言 ユネスコ関係者ら視察

 「北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群」の登録推進本部が行う国際的合意形成促進事業の一環として、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の関係者らが8日、同遺跡群の構成資産となっている函館市の垣ノ島遺跡、森町の鷲ノ木遺跡を視察した。担当者に熱心に質問し、登録に向けてアドバイスを送った。

 縄文遺跡の価値について国際的な視点から助言をもらうとともに、国内外への浸透を図ることが目的。同事業では2012年9月にも国際記念物遺跡会議(ICOMOS=イコモス)の考古学遺産管理委員会の委員らが訪れており、今回はユネスコメキシコ事務所長のヌリア・サンズ氏が訪れた。

 このうち、垣ノ島遺跡は市縄文文化交流センターの阿部千春館長が説明。長さ約150bに及ぶ盛土遺構を視察するとともに、同センターで展示している道内唯一の国宝「中空土偶」などを見て回った。サンズ氏は阿部館長に「海底の調査はしたのか」「土地の所有権はどうなっているのか」などと次々と質問、「25〜30aと浅い場所から出土していることに驚いた」と話していた。

 一行は10日までに4道県(北海道、青森、秋田、岩手)の構成資産を視察、13日には秋田市内で国際会議とシンポジウムを行う。  (千葉卓陽)



◎レールつながる 道新幹線開業へ工事あと1割 

 2016年3月開業予定の北海道新幹線新青森―新函館北斗間の全長約149`のレールがこのほど、すべてつながった。鉄道運輸機構北海道新幹線建設局は現在、レールの最終的な整備、調整作業を行っており、近く敷設工事が終了する。この秋には新幹線車両が道内に運び込まれ、12月にはJR北海道が試験運転を開始する予定だ。

 新青森―新函館北斗間のレールの敷設は2012年3月に開始し、路盤や高架上に敷設した。同機構によると、8月末にすべてのレールを接続したという。

 青函トンネルなど在来線との共用区間約82`のレール工事はJR北海道に委託。新幹線と貨物列車が走行できるように、「三線軌条」方式を採用。レール3本を敷き、新幹線と貨物の両方を走らせる。

 同機構によると、新幹線工事の進ちょく率は事業費ベースで約90%。新幹線関連工事は開業に向けて最終盤となっている。 (松宮一郎)



◎カーシェア実証実験開始 1人乗り小型EV活用

 日本ユニシス(東京都江東区)など4社は8日、函館市内で小型電気自動車(EV)を活用した「カーシェアローミングサービス」の実証実験を開始した。会員同士で自動車を共同利用するカーシェアリングは近年、大都市圏を中心に普及が進み、地方都市での事業展開の可能性を探る取り組み。1人乗りの小型EVを5台用意し、本町地区、函館駅前、西部地区の3カ所に貸し出し・返却用ポートを設置。10月からは乗用車タイプのEV2台を導入し、函館駅前と函館空港間での実験を行う。

 実証実験は、同社と、ジョルダン(新宿区)、日産カーレンタルソリューション(神奈川県)、ユビテック(品川区)の共同事業。カーシェア全体のシステムサービスの提供、車両を遠隔管理する車載装置の開発などを担っている。地方都市の小規模事業者による事業展開や事業者間連携、交通システム構築の可能性を探るのが主な目的。環境省の「CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」の採択を受け、昨年度から取り組んでいる。

 函館を選定した理由について、日本ユニシス次世代ビジネス部の鈴木康史さん(39)は「観光名所を回る場合、徒歩での移動は少し大変だが、レンタカーとは別の選択として、乗り捨て型カーシェアにニーズがあるのではないか」と話す。

 使用する1人乗りのミニカー「トヨタ車体コムス」最高時速60`、フル充電で約50`の走行が可能。利用にはホテルネッツ函館(本町26)での会員登録が必要で、登録したICカードで車からキーを取り出すことができる仕組み。使用後は同ホテル、函館駅前、元町観光バス駐車場の3カ所のいずれかに返却する。

 また、五稜郭タワーとJR函館駅にはジョルダンが提供する函館市の大型情報端末「函館インフォメーション」で、通常の公共交通機関などのルート検索に加え、カーシェアの利用を交えた表示も開始した。

 11月29日までの午前10時半から午後4時半まで。10月末までは無料で実施し、11月は有料化して実験を継続する。10月には乗用車タイプのEV「日産リーフ」2台を導入し、函館駅と函館空港間の移動用に貸し出す。問合わせはホテルネッツ函館内事務局(TEL090・7060・1094)へ。 (今井正一)


◎大間からの風船発見 厚沢部の吉田さん「放射能飛ばさないで」

 【厚沢部】大間原発(青森県大間町)で過酷事故が起きたら、放射性物質が厚沢部町まで達することが証明された。7月20日に大間から空に放たれた放射性物質に見立てた風船500個のうち、1個を同町当路の農業吉田藍さん(34)が畑で見つけた。吉田さんは「津軽海峡を超えてこんなところまで来るとは…」と驚きを隠さない。

 第7回反対現地集会(実行委主催)では、原発敷地に隣接する共有地から500個の風船を飛ばした。放射性物質がどこまで拡散するか調査するため、拾った人が添付はがきを送り返す仕組み。

 吉田さんは7月下旬、南館町の小豆畑で草取り作業中に偶然、畑のふちにあった赤い風船を発見。風船は少し空気が抜けていたが、割れておらず、健在≠セった。大間から届いたことを知り、2、3日後にはがきを実行委事務局宛てに送った。

 畑は山奥にあり、吉田さんは「こんなところまで風船が届くなんて本当に驚いた。今まで大間についてあまり気にしていなかったけれど、放射能が届くのは嫌」と話す。福島第一原発事故を引き合いに「土壌や作物が汚染され、農業が成り立たなくなる。厚沢部は自然豊かな町なので、放射能が飛んでほしくない」ともいう。

 被害が函館にとどまらないことを裏付けた格好で、吉田さんは「風船を見つけて大間のことを身近に感じるようになった。こうした活動を地道に続けていってほしい」と願う。

 青森地方気象台によると、風船を飛ばした午後1時20分ごろの大間の風向きは東の風が5・1b。オホーツク海に中心を持つ高気圧が北日本に張り出すと、青森県太平洋側では東寄りの風が吹きやすいという。厚沢部は大間の北西50〜60`圏にある。