2015年10月11日 (日) 掲載

◎「千の風になって」がJR大沼公園駅BGMに

 【七飯】JR大沼公園駅の特急列車発着時のBGMとして、町大沼在住の作家、新井満さん(69)が作詞作曲した「千の風になって」のメロディーが流れることになった。10日、同駅前で式典が開かれ、新井さんや中宮安一町長、JR北海道函館支社安藤健一支社長らが出席。町にゆかりのある名曲の発信を喜んだ。

 町が来年3月26日の北海道新幹線開業に向け、同曲が誕生した大沼の魅力を全国に発信しようと企画。新井さんとJR北海道の協力で実現した。

 流れる曲は、新井さんが6月ごろから東京のスタジオで新たに録音したもので、パンフルート、ピアノ、琴、オーケストラなどの10バージョンを制作。町とJR北海道に無償で提供した。特急列車到着前後の10分間にBGMとして使用される。

 式典で、中宮町長は「新幹線で訪れる多くの人の耳に、この名曲を届けられるのは大変に素晴らしいこと。曲とともに七飯町大沼を全国にPRしていきたい」とあいさつ。

 新井さんは「私が作った楽曲が、町おこしにつながるならばこれほどうれしいことはない。世界中の皆さんに、大沼で千の風を感じてもらいたい」と話した。

 同曲は、作者不明の米国の詩をベースに、新井さんが大沼の別荘で作詞作曲し2001年にCD化。その後、多くのアーティストがカバーし、07年には日本レコード大賞作曲賞を受賞した。(金子真人)



◎あこがれの運転士に、市電運転体験会

 函館市企業局交通部は10日、駒場車庫で市電運転体験会を開いた。午前、午後2回の開催に、道内のほか兵庫県などから集まった計20人が参加。初めての乗車から通算10回目の参加の〝ベテラン〟まで、構内で8000形車両を走らせ、運転士気分を満喫した。

 1872(明治5)年10月14日、新橋-横浜間に日本初の鉄道が開通したことを記念した「鉄道の日」の関連行事。市交通部は14日、市電全線200円均一で運行する。体験会は2007年度から通算15回目の人気イベント。

 運転体験は構内の100メートルの直線区間を使用。運転機器の取り扱いや操作方法を学んだ後に走行を実施。距離の目測や、衝動計を用いた制動試験など、実際の運転士向けの技能試験項目で評価も実施。車庫内施設の見学や、停車車両を利用して方向幕などの機器類操作体験も行われた。

 6回目の参加となった恵庭市の会社員滝沢貴之さん(34)は「これだけ大きい車両を動かせるのが魅力的で、毎回新鮮な発見がある。函館の市電沿線の街並みも変わっていくのも楽しみにしています」と話していた。今回が初参加の市内駒場町の会社員花村聡さん(43)は「普段、市電に乗ることがあって、運転したいと思って参加した。運転士さんの苦労がよく分かりました」と話していた。(今井正一)



◎都市景観賞に建物3件・1団体

 函館市は景観に配慮した優れた建築物や活動団体を表彰する第20回函館市都市景観賞を発表した。明治期の建物を再生した「港の庵」(大町8)、伝統様式を現代風にアレンジした新築物件「ochikochi」(元町7)、書店を中心とした複合商業施設「函館蔦屋書店」(石川町85)の3件の建築物と、活動開始10年となったNPO法人はこだて街なかプロジェクト(山内一男理事長)が選ばれた。

 同賞は1995年度に創設で、昨年度、選考スケジュールを見直したため、2年ぶりの選考。市民から延べ78件の応募があり、5年以内に新・改築などの条件を満たした33件を選考委員会(委員長・岡本誠公立はこだて未来大学教授)で審査した。8日に市役所で表彰式が行われ、工藤寿樹市長から各建築物の所有者、占有者、設計者、施工者、山内理事長に賞状と記念品が贈られた。

 「港の庵」は1902(明治35)年建築の木造2階建て。瓦ぶきの切り妻屋根、軒蛇腹など伝統的な建築様式を継承し、しっくいのレリーフや鋳鉄製の柱などは当時のものを残し、昨年7月に復元を終えた。占有者で元町マリンハウスの清水ゑみ子代表取締役は「函館の財産として大切に若い人につなげていきたい」と話した。

 「ochikochi」は昨年5月、観光客が多く行き交う港ケ丘通り沿いに新築。函館らしい歴史的建築様式を意識し、景観に配慮したデザインの建物となった。設計者のミズタニテツヒロ建築設計の水谷哲大代表は「歴史ある町並みの中で設計者として何ができるのかと、うれしさとプレッシャーがあった。過去から未来につなぎ、時間の移ろいを感じられる設計とした」と話した。

 「函館蔦屋書店」は2013年12月にオープン。郊外型の大型店でありながら、圧迫感がなく、木目調塗装の外壁など周辺住宅街との調和を評価。梓設計の一級建築士田村慶太さんは「(外壁の色は)函館の持つ色の変化を用いて優しい外観となった。市民の活動や営みといった無形のものが広がらないかを考えたプロジェクト」と話した。

 「はこだて街なかプロジェクト」は主に西部地区で空き家や空き地の利活用に関する取り組み、屋外広告物の調査など、歴史的な景観維持保全の活動を展開。山内理事長は「活動を始めたころ、まちづくりに民間が関わるケースが少なかったが、行動と意志を伝えることで地域が変わった。地道に続けて良かった」と話した。

 工藤市長は関係者の建物への思いや活動を評価し、「市民や観光客に心の底から魅力のある街だと思ってもらえるよう、努力していく。官民挙げて景観を守る方法を考えていきたい」と述べた。(今井正一)


◎「うまい酒に」、函館奉行醸造へ稲刈り

 函館の地酒「函館奉行」の原料となる酒造好適米「吟風」の稲刈りが10日、市内米原町の水田で行われた。醸造元や生産者ら12人が集まり、黄金色に実った稲を刈り取りながら、銘酒の醸造を願った。

 地酒は2年前から、亀尾地区の水田で実った吟風を原料に、小西酒造(兵庫県伊丹市)が純米吟醸酒を醸造。同社所有の酵母に加え、函館高専の小林淳哉教授の研究グループが開発した菜の花酵母を用いて、2種類の酒を作っている。

 今年の作付面積は、昨年の倍となる1万7500平方メートルに拡大。生産者の橋田孝一さん(67)によると、6月の田植え後は順調に生育し、7・2トンほど収穫する見通し。同酒造は1升瓶(1・8リットル)で6000~7000本の生産を見込んでいる。

 この日は同社の庄司明生営業本部長のほか、地酒生産を企画した道食品開発流通地興の谷沢広代表理事、市農林水産部の藤田光部長らが集まって神事を行った後、生産者から手ほどきを受けながら鎌を使って稲を刈り取った。

 谷沢代表は北海道新幹線開業直前の来年2月に新酒の発表会を行うとし、「シールなども含めて新幹線をデザインしたい」と意欲。「来年はさらに作付面積を増やし、別の酒米を使った新たな辛口の酒を作りたい」と話していた。(千葉卓陽)