2015年11月15日 (日) 掲載

◎「元気いっぱい商店街等支援交付金」の利用順調

 函館市が商店街の催しや集客イベントに助成する「元気いっぱい商店街等支援交付金」の利用が順調に推移している。本年度は13日現在で15団体が延べ34事業、3350万円を申請。市内商店街からは、交付金によってこれまで手が出なかった事業に取り組めるなどの声が上がっており、集客力の向上やにぎわい創出に寄与している。

 交付金制度は、商店街の魅力の再認識や活性化を意識づけてもらう意味合いを込め、2011年度に開始した。

 歳末大売り出しなどの販売促進や季節ごとの祭り、遊休施設の活用などに対して事業費の全額を交付。対象は商店街振興組合や小売市場、商工会などで、商店街地域で複数の団体が活動する場合、1つの指定団体とみなす。1団体当たりの参加店数に応じ、年間30~300万円を配分する。

 11年度は16団体が2819万円を利用し、執行率は70%にとどまったものの、年々定着化し、14年度は17団体が3461万円を活用。執行率92・8%と、過去最高を記録した。本年度は19団体を対象に当初予算で3730万円を計上。現在申請額ベースで90%近い利用があり、市商業振興課によると、今後は残る4団体からも申請が寄せられる予定という。

 交付金は既存事業の充実のほか、団体ごとに情報誌の発行や住民同士が交流できる講座を開催するなど、地域の特性に合った個性的な事業も展開されている。

 このうち、湯川商店街振興組合と湯川温泉商工親和会は本年度、飲食店や温泉などの場所を記した「湯の川ガイドマップ」を発行。日本語1万部、英語・中国語訳版を各5000部制作し、加盟店舗や宿泊施設などに置いた。10月に函館アリーナで開かれた全国自治体病院学会では参加者約3000人に配布し、同会の加藤隆司会長は「夜は飲食店がにぎわった」と振り返る。

 このほか、役員の高齢化や後継者不足などによるマンパワー不足を補おうと、加盟店のPR冊子なども発行している。加藤会長は「(交付金は)商店街の活性化の一助となっている。温泉街という地域性を生かし、工夫しながら事業を続けていきたい」と話している。(蝦名達也)



◎道立函館美術館で「瀬戸英樹展」開幕

 函館の画家、瀬戸英樹さんの近作を中心に紹介する道立函館美術館の特別展「瀬戸英樹展 失われゆくものへのオマージュ」が14日、同館で開幕した。緑を中心とした色調で、細密な描写で描いた道南の風景など76点を展示している。来年1月24日まで。

 瀬戸さんは1940年、満州生まれ。戦後に両親の古里である函館に引き上げた。18歳のころから岩船修三氏に師事し本格的に油彩を学んだ。当初は人形などをモチーフに不安な雰囲気を醸し出す幻想的な作風だったが、74~76年などにドイツへ渡り、ヨーロッパの古典的な作品や広大な風景との触れ合いを機に、現実の事物を強く意識して内面性や批判精神を重ねる作風となる一方、道南地方の農村や漁村を主題に、細密な描写による作品を生み出してきた。

 新作「海峡からの潮風(かぜ)」は、2013年から取り組み始めた函館市の住吉漁港から恵山にかけての海岸線を描く連作。長年描いてきたスケッチから選び、「造船所」「昆布干し場」「陸(おか)に上がった船」「老朽船」など17点で構成。キャンバスが並ぶと長さは30メートルを超える大作。活気に満ち、平和だったころの浜の様子は郷愁を感じさせている。

 1991年の「番屋、廃船… 漁村をえがく」は約10メートルのパノラマ。冬の強風が吹き付ける江差の砂浜に小屋や漁船などを配した。2001年発表の「セピア色の画帳」は、0~30号のキャンパスに、明治から昭和初期に函館周辺に建てられたモダンな建築物の40点を紹介。写実的ながら幻想的な雰囲気が漂っている。

 瀬戸さんは「美術館で作品を発表するのは画家誰しもの夢であり、60年間描いてきて実現でき感謝でいっぱい。アトリエに眠っていた作品が皆さんに見てもらえることを喜んでいると思う。道南の風景を楽しんでもらえれば」と話し、来場を呼び掛けている。

 観覧料は一般610円、高校大学生410円、小中学生200円。休館日は月曜(23日、1月11日は開館)および、24日、12月29日~1月3日、1月12日。問い合わせは同館(☎0138・56・6311)へ。 (山崎純一)



◎函館で先端科学移動大学、北大教授に最新研究学ぶ

 北大の教授が科学技術に関する最先端の研究内容を講義する「第24回先端科学移動大学2015」(北海道青少年科学文化財団、函館市教委共催)が14日、函館市中央図書館で開かれた。画像処理や鳥類の求愛行動などの研究者5人が登壇、学生や社会人などが熱心に耳を傾けた。

 「ヒトは何歳まで生きられるか~寿命と再生をめぐる生物学」と題して講義した北大北方生物圏フィールド科学センターの栃内新特任教授は、体に新しい細胞を供給する幹細胞の若返りによる不老不死医療について「今でも飢餓が起こっているし、もし死がなかったら、地球上に食料がなくなり、生きていけなくなる。不老不死医療の不自然さを認識すべき」と指摘した。

 その上で、失った手や足などを再生させる再生医療に言及。昨年、栃内教授の教え子が「ヒトでも爪が残っていれば、骨を含めた指先が再生する」との論文を発表しているほか、従来できないと思われていたES細胞やiPS細胞による試験管内の器官形成に世界中の研究室が工夫しながら成功しており、「クローンのマウスやヒトができるのも時間の問題。決して夢物語ではない」と危機感をあらわにした。

 終了後、5講座全てを受講した37人に修了証が手渡された。

 同大学は釧路、旭川、函館の3都市を巡回しており、函館での開催は8回目。13日には5人が市内の高校5校をそれぞれ訪問して授業を行った。 (稲船優香)


◎道南スギ利用促進交流会

 【木古内】道南地域の主要な森林資源となっているスギへの関心を高める「北海道新幹線木古内駅開業記念 道南スギ利用促進交流会」(道南スギ産地形成推進協議会など主催)が14日、町内で開かれた。近隣の2市7町から134人が参加、道内における道南スギの利用状況を学ぶとともに、北海道新幹線木古内駅と町観光交流センター「みそぎの郷きこない」を見学した。

 建築物や住宅材などへの利用促進と「地材地消」に向けた意識の醸成を図ろうと開催した。

 町まちづくり新幹線課の福田伸一課長は、木古内駅周辺整備の概要を説明。道内における道南スギの利用状況について、渡島総合振興局西部森林室普及課の増本照夫さんが「渡島西部4町の一般民有林でスギは78%と一番多い」と話し、道南スギを使った渡島・桧山管内の学校や公共施設を紹介した。

 その後、開業前のため関係者以外は入ることができない同センターと新駅舎を見学。参加者はスギ材特有の香りとぬくもりを実感しながら、楽しく見て回った。駅舎では偶然、試験走行中の新幹線が停車している一幕もあり、開業への期待感をより一層高めていた。

 町内の主婦、二戸美姫子さん(72)は「(両施設ともに)スギがたくさん使われた立派な内装でびっくり。木古内町民として、今後の新幹線効果に期待したい」と話していた。(斎藤彩伽)