2015年12月23日 (水) 掲載

◎旧函館支庁、鮮やかな緑色に

 函館市元町の道指定有形文化財「旧北海道庁函館支庁庁舎」(元町公園内)の改修工事が22日、完了した。建物外観の老朽個所を補修、全体を鮮やかな緑色に塗り直し、明治末の洋風建築技術を今に伝える美しい姿を取り戻した。

 建物は1907(明治40)年の大火で焼失した庁舎に代わり、10年に完成。木造2階建てで、古典様式を取り入れた玄関部分の装飾部分を支える4本の柱、縦長窓など、明治末の函館を代表する洋風建築物の一つ。戦後も渡島支庁庁舎など道や市の施設として活用され、85年には道有形文化財の指定を受けた。

 91年12月に発生した火災で内部を焼失したが、94年度に復元工事が完了。以降は元町観光案内所(1階)と写真歴史館(2階、来年3月末で閉鎖)として活用されている。

 市が歴史的建造物継承・活用推進事業として、10月下旬から工事を実施。塗装は94年の復元時に近い色の塗料を採用し、つややかな緑色が際立つようになった。腐朽が目立つ柱や窓枠、しっくいの壁、レリーフのひび割れなど、全体的な補修を加えた。市観光部観光企画課は「函館にとって貴重な観光資源。観光客や市民にも修復した姿をみてもらいたい」としている。(今井正一)



◎新幹線料金申請通り認可へ、運輸審議会が答申

 国土交通省運輸審議会は22日、来年3月26日に開業する北海道新幹線の特急料金について、石井啓一国交相にJR北海道の申請通り認可するよう答申した。新函館北斗―東京間の運賃と指定席特急料金を合わせた総額は、2万2690円となる見通し。石井国交相は早ければ24日にも認可する。(山田大輔)

 同社が申請した特急料金をめぐっては、同審議会が11月に函館市内で開いた公聴会で、3人の公述人全員が新函館北斗―新青森間(148・8キロ)の特急料金は、同程度の距離で比較すると全国の新幹線で最も割高だとするなど認可に反対を表明。同社は、青函トンネルの維持費や貨物列車との共用走行に伴う費用など、北海道新幹線固有のコストがあるとして理解を求めた。

 同審議会は10月の申請提出以降、全11回にわたって協議。今月10日には同社から料金設定の根拠などを聴取した。

 審議の中で、6人で構成する委員のうち一人は、提出された収支計算書で同社が共用走行にかかる費用を全額負担していることに異議を唱え「費用の一部はJR貨物が負担するもので、JR北海道の負担軽減分を料金の引き下げに用いるべきだ」としたが、同審議会は最終的に同社の厳しい経営状況などを考慮し、全国で最も割高となる特急料金の認可はやむを得ないと判断した。

 答申では国交相に対する要望事項として、各種割引切符などの設定や、在来線の特急と同じ140キロに速度が制限されている共用走行区間の高速走行の早期実現などに際し、必要に応じて助言することが盛り込まれている。

 全国で最も割高となることから注目が集まっていた北海道新幹線の特急料金は、開業3年間の平均で年48億円の赤字になるというJR北海道の厳しい財政状況に配慮し、認可される見通しとなった。JR北海道には割高の料金に十分見合う利便性の確保や割引料金の設定など、サービスの充実に向けた努力が一層求められる。

 北海道新幹線新函館北斗―新青森間(148・8キロ)の大部分を占める貨物列車との共用区間は、最高速度が在来線の特急と同じ140キロに制限される。一方で、JR北海道が設定した同区間の特急料金3930円は、同じ距離で比較すると全国で最も高い。こうした背景から国土交通省運輸審議委員会が11月に開いた公聴会では、3人の公述人全員が認可に反対する異例の事態となった。

 同審議会が申請から答申まで要した月日は2カ月。議論の回数11回は「鉄道料金の審議としてはあまり類がない」(同審議会)多さで、料金の妥当性をめぐって調整に難航したとみられる。

 北海道新幹線は積雪寒冷地や高温多湿の青函トンネル内を走るほか、貨物列車との共用走行区間があるという全国初の特徴を持つ。とはいえ、安全輸送や定時運行は最低限のサービスだ。特に冬場の安定した運行は航空機と差別化を図る上で必須条件となる。

 国交相に対する要望事項の中には、割引切符の設定に関する助言が盛り込まれた。航空各社はJRの動向次第で東京便の料金値下げを検討するとしており、価格競争での優位さをどれだけ打ち出せかが、利用拡大のカギを握っている。(山田大輔)



◎レール検査データ改ざんでJR北海道と役員ら書類送検

 2013年9月にJR函館線大沼駅(七飯町)で起きた貨物列車の脱線事故を発端に、レール幅の異常放置や検査データの改ざんなどが明るみになった事件で、道警は22日、法人としてのJR北海道と保線業務を担当する同社幹部ら19人を、運輸安全委員会設置法違反(虚偽報告)と鉄道事業法違反(虚偽報告、検査忌避、虚偽陳述)の疑いで札幌地検に書類送検した。また同日、事故当時、大沼保線管理室の担当者だった男性1人を業務上過失往来危険の疑いで函館地検に書類送検した。

 法人と幹部ら19人に対する送検容疑は、国土交通省監査員が行う函館保線管理室に対する立ち入り検査などの際、「軌道狂い検査表」などのデータを改ざん・ねつ造して検査を妨害、監査員にも虚偽の陳述をするなどした疑い。

 大沼保線管理室の元担当者に対する送検容疑は、脱線する可能性があったのにもかかわらず、レールの改修作業を怠って脱線事故を招き、列車運行に危険をもたらした疑い。

 業務上過失往来危険容疑について、函館方面本部と函館中央署は専従署員を18人配置、数十人を取り調べるなどしてきた。押収した膨大な証拠品の分析に時間を要したほか、「(脱線直後のデータ改ざんなどが)捜査上ネックになった」と同社の隠ぺい体質が事件解明に向けて大きな障害になっていた。

 事故は、18両編成の貨物列車が大沼駅構内で、6両目の左車輪が落ち、7~9両目が脱線。同省の事故調査報告書によると、現場付近のレール幅の超過は社内基準の2倍以上で、記録では少なくとも3年間、レール整備が行われていなかったことが分かっている。

 関係者の書類送検を受けてJR北海道は同日、「極めて厳粛に受け止めている。今後、検察の捜査に最大限協力するとともに、事故後に講じた対策を確実に実施し、日々の輸送の安全を確保して鉄道の再生に取り組みたい」とコメントを発表した。


◎函教大前交差点、改良工事が完了

 昨年6月に死亡事故が発生した函館市八幡町の道教育大函館校前の交差点で、歩道の新設や拡幅を行っていた改良工事が23日未明に完了した。歩行者の安全性が向上した。

 市土木部道路建設課によると、工事は7月30日に着手され、施工延長は127メートル、総事業費は約6000万円。工事では歩道の新設や拡幅が行われ、事故があった横断歩道を廃止し、横断歩道を2カ所から1カ所に集約。さらに車両の交差点進入速度の抑制や、八幡通り側の横断歩道の横断距離を短くした。同校の交差点出入り口正面には、赤色に点滅する信号機「フリッカー」を設置し、歩行者の安全性を高めた。

 一方、同大は車両の出入り口を分散させ、歩行者の安全と車の渋滞緩和につなげようと田家4号線側に幅約7メートルの新出入り口を設置。11月2日から使用されており、同大は「11月以降に同大で多くの人が出入りするイベントがあったが、従来と比べると車の流れがよくなったという声もあり一定の成果があった」と話す。

 同大の星野立子キャンパス長は「事故の原因でもあった2重の横断歩道が解消されたことや、歩道が延長され、歩行者にとってより安全に通行できる状況になった。今後は、これまで以上に学生や地域の方々と一緒に交通安全に努めていきたい」としている。

 函館西署は24日、同校前で街頭啓発「旗の波」活動を行う。事故は昨年6月19日午後5時45分ごろ、同校前の交差点で、同校の女子学生が乗用車にはねられ、10日後に亡くなった。(能代俊貴)