2015年1月20日 (火) 掲載

◎江差の松村さん、戦争体験本を自費出版「悲惨さ語り継ぐ」

 【江差】季刊文芸誌「江さし草」の代表を務める、町内の松村隆さん(88)が、戦争やシベリア抑留などの実体験をつづった「軍隊一月(ひとつき)・捕虜二年の青春」をこのほど自費出版した。戦後70年の節目にあたり「戦争の悲惨さと平和の尊さを語り継ぐ責任を強く感じて執筆した」と思いを寄せる。

 松村さんは1945(昭和20)年7月に18歳で兵役に就き、翌月に樺太(サハリン)で終戦を迎えた。入隊は20歳からだったが戦争の拡大と兵力不足など「軍の都合で兵役年齢が勝手に繰り下げられていた。私もいずれ兵役に就くことは覚悟していたから男子として当然の勤めだと疑うことはなかった。『日本は絶対に負けない』と疑っていなかった」とし、「子どものころから教え込まれ、特攻隊を賛美していた。教育の力は怖いと知るのは後のこと」と強調する。

 47年1月に帰国するまでのシベリアでの捕虜生活を詳細に記録。「飢えと氷点下零下30〜40度の労働は過酷極まる。体力が衰え、朝目を覚ますと隣の仲間が死体となっていて明日は我が身かと恐怖の日々だった」と振り返る。改行 夕食後も空腹を満たせず眠りにつくとき「いつも思うのは故郷の暮らしだった」という。ある日収容所で尺八の音色を耳にした。望郷の念にかられ、家族や祖国を思う仲間とのやり取りが印象的だ。

 その中で「芸が身を助ける」と得意だった歌が仲間らに評価されて作業班から演芸班に抜擢された。労働から解き放たれ「歌によって救われるなど思いもしない出来事だった」と後押ししてくれた仲間への感謝を忘れない。そして復員船から見た舞鶴の景色に「日本はこんなに美しいのか。祖国を離れてみなければ知ることのできない感動だった」とする。

 松村さんは執筆にあたり、「最近の日本が戦争に向かい始めたあのころに雰囲気が似てきている感じがして心配だ。私の負の青春を伝えることで、平和を守るという意義を多くの人と共感できれば」としている。

 四六判153㌻。1000円。町内の万年屋書店のほか函館市の文教堂書店函館テーオー店などで販売している。

 また、出版記念の講演が20日午後6時半から江差町役場保健センターで行われる。平和を語るつどい実行委の主催。入場無料。(田中陽介)



◎函館豆記者、沖縄取材「戦争恐ろしさ実感」帰函報告

 昨年12月25日から4泊5日の日程で沖縄を訪問した函館豆記者取材班の小学生16人が19日、市総合保健センターで帰函報告を行った。一行は沖縄の戦争の歴史や函館との文化の違いを目の当たりにし、「とても充実した取材旅行だった」と振り返る。

 1976年から毎年行われている事業で、青少年交流や人材育成を目的に毎年開催。一行は昨年夏の根室取材に続き、2回目の取材旅行に旅立った。

 沖縄県庁では、安慶田光男副知事を表敬訪問し、若い世代に戦争の悲惨さをどう伝えていくのか。沖縄の方言を守るためにどんな取り組みを行っているのか質問した。

 ひめゆりの塔や旧海軍司令部壕を訪れた児童は「戦争の恐ろしさを実感した」「事前学習だけでは分からないことばかりだった」「新聞を通して今回の経験を多くの人に伝えたい」などと話していた。根室取材でともに行動した沖縄豆記者団と再会し、沖縄の伝統文化などを教えてもらったことも報告された。

 取材班班長を務めた河上怜佳さん(函館附属小5年)は「平和の尊さを痛感した。これからも戦争、米軍基地問題などに関心を持ち続けたい」と述べた。岡崎圭子市子ども未来部長は「この取材旅行を通して、実際に見たり聞いたりすることの大切さを実感したはず。これからの学校生活に生かしてもらえれば」とねぎらった。

 一行は今年7月下旬〜8月に、内閣府や外務省を訪問するため東京に出発する。(蝦名達也)



◎ライトアップLED化 検討結果を公表 CO2削減量も掲載 北海道環境財団

 北海道環境財団は函館市内のライトアップ施設のLED(発光ダイオード)照明化を検討する「光の街はこだて 次世代あかりプロジェクト」の報告書をまとめた。市内5施設の照明をLED化した場合の想定CG画像を掲載。二酸化炭素(CO2)排出量削減効果や維持経費の違いをシミュレーションした結果を掲載している。

 対象施設は旧函館区公会堂、旧イギリス領事館、市水産物地方卸売市場、市役所本庁舎、青函連絡船記念館摩周丸。照明機器メーカー「東芝ライテック」が既存のライトアップ写真を基に、各施設の照明をLEDに交換した場合をシミュレーションし、CG画像を作成した。

 CO2排出量は、平均消費電力や年間点灯時間、CO2排出係数を基に算定。旧イギリス領事館では既存照明で年間4272㌔㌘を排出するのに対し、LED照明の場合は1587㌔㌘とほぼ3分の1にまで圧縮。維持経費(電気代、交換用ランプ代)は10年間で約170万円の節減になるとしている。他の4施設でも、CO2は約48〜81%、維持経費は150万〜260万円の節減になるとしている。

 同財団は31日午後3時から、FMいるか2階「ペルラ」(函館市元町18)でプロジェクトの報告会を兼ねたシンポジウムを開催。東京理科大の吉澤望准教授の基調講演と、東芝ライテックの渡部武さん、函館市地球温暖化対策地域推進協議会の赤石哲朗さんの報国がある。

 報告書はA4判フルカラー。神戸市、長崎市のLED化の事例を掲載した。函館市役所や各支所などで配布している。シンポジウムは参加無料、申し込みは市環境部環境総務課(電話0138・51・0758)へ。(今井正一)


◎市内ホテル宿泊料金どうなる 「新幹線開業効果」で上昇ムード

 北海道新幹線の開業を1年2カ月後に控え、函館市内のホテルや旅館は、来年3月以降の宿泊料金の検討に入った。開業を境に旅行者の大幅な増加が予想されるほか、大規模改装を行ったホテルなどは投資を回収するためにも料金の引き上げを視野に入れている。一方で客離れを懸念して様子見の構えを見せるところもあり、対応は分かれそうだ。

 1年後の料金はまだ決定していないが、引き上げを検討している事業者は多く、「開業効果」への期待は大きい。観光客に人気のホテルの支配人は「開業後の需要やマーケット次第になるが、料金を引き上げる予定」と明かす。「現在は外国人観光客の利用が好調で料金が上昇している。開業後もこの傾向は続くのではないか」と話す。大手旅行会社の商品造成の絡みもあり、料金が見えてくるのは9〜10月ごろだという。

 湯の川温泉のある旅館ホテルは1割程度引き上げる考え。「提供する客室は変わらないが、料理やサービスを充実させてお客の満足度を上げていくつもり。そうすることである程度は値上げも理解してもらえるはず」とする。また、トップシーズンとオフシーズンの価格差が縮まることにも期待する。

 別のホテルの支配人は「過当競争による現在の料金水準は適正なものとは言えない。開業後の需要増加は、適正な料金に戻す絶好の機会」と指摘。「単価、利益が上がることで雇用が増え、スタッフの給与アップにつながる。地域経済に好循環が生まれるきっかけになるのではないか」と期待を寄せる。

 一方で、料金引き上げを検討してるものの、客離れを懸念する事業者も。担当者は「ホテル同士の競争も激しくなるはず。値上げをしても小幅なものになるだろう」と話す。同じ理由で様子見の構えを見せるところも。関係者は「値ごろ感やを考えると据え置く可能性が高い。そう考える事業者は少なくないのでは」と語る。(松宮一郎)