2015年3月11日 (水) 掲載

◎函館市、迅速な避難所開設へ 地域協力員制度を導入

 函館市は、大規模地震・津波をはじめとした自然災害時にいち早く避難所を開設するため、町会や自主防災組織の役員が避難所の鍵を管理し、解錠する「避難所地域協力員制度」を1月から導入した。夜間や休日など施設が施錠されている場合でも、近くに住む協力員が速やかに避難所を開き、住民の安全を確保する。市は先行して市所有の77施設(うち1施設が実施済み)への導入を目指す。

 避難所は通常、市職員や施設管理者が開設するが、本人が被災したり、避難所に到着するまでに時間が掛かったりするケースも。そこで避難所の迅速な開設に向け、市と地域で解錠手段を〝多重化〟する。市は「市が解錠を地域に押し付けるものではない。市と地域住民が連携して一人でも多くの命を守りたい」(総務部)と強調する。

 覚書を交わした上で、町会や自主防災組織が指定する協力員に鍵を引き渡す。封筒には鍵のほか、解除方法などを書いた紙も入れて封印。鍵は1施設あたり最大3本用意する。協力者は避難所を解錠するときしか開封せず、家の中で厳重に管理。役員改選や高齢などで管理できなくなり、協力員を交代する場合は手続きを取る。

 1月下旬に町会役員らを集めて説明会を開き、制度の概要を説明。現在30町会から協力の申し出があるという。

 避難所の解錠は、市が定める基準に基づいて協力者自ら判断する。市内には186町会、80の自主防災組織がある。市は第一弾として市立の小・中学校、幼稚園、高校、津波避難ビルなどから導入したい考えで「制度の趣旨を理解してもらい、民間や道立の施設にも輪が広がってくれれば」(市総務部)と期待する。

 制度を導入したある町会長(74)は「制度によって避難所に速やかに入れるようになり、寒空で長時間待たなくてもよくなると思う。『3・11』の教訓を生かすため、各町会が話し合い、制度の利用を進めて共助による防災対策に取り組んでほしい」と話す。

 協力員に選ばれた女性(71)は「解錠用封筒を託された責任も感じるが、避難誘導などの役割分担を決めておくことも重要。災害時は自分も避難する身になると思うので、自分の安全を確保した上で、避難所を開設する力になれれば」としている。

 道は「近所の人に集会所などの鍵を預ける例は聞いたことがあるが、有事に備えて制度化するのは珍しいのではないか」(危機対策課)とする。(山崎大和、能代俊貴)



◎震災4年 被災地の現状 語り継ぐ 湯川寺副住職の筒井さん

 東日本大震災で甚大な被害があった岩手県大槌町で進められている「菜の花プロジェクト」。函館でもボランティア団体「函館大槌応援プロジェクト(HOOP)」を立ち上げて復興支援に尽力している人がいる。湯川寺(湯川町3)副住職の筒井章順さん(28)だ。震災から4年を迎えボランティア作業は減っているものの、僧侶という職業を生かし「被災地の現状を多くの人に語り継ぎたい」と力を込める。

 菜の花プロジェクトは「供養と希望」の思いが込められた復興のシンボルである菜の花を、大槌川沿いの河川敷いっぱいに咲かせる取り組み。

 筒井さんは2011年7月、被災地の復興を支援しようと災害ボランティアツアーに参加。大槌町を訪れた際、菜の花プロジェクトを始めた金山文造さんに出会い、構想に賛同した。帰函後に「継続して何かできることはないか」と模索。12年春、ツアー参加者とともにHOOPを発足させた。

 大槌でもらった菜の花の種を寺の花壇にまいたところ、毎年花を咲かせている。HOOPは、菜の花を植える環境整備やがれきの撤去作業などに取り組んできたが、近年は復興が進みボランティアの作業が減少。このため、14年5月にHOOPのメンバーとともに大槌を訪れた際は満開に咲く菜の花を見るだけだった。それでも「河川敷に広がる黄色の光景に感動した」と話す。

 津波で家が流失した町民の言葉が胸に突き刺さり、法話では「当たり前だと思っていた生活が当たり前ではなくなる。毎日の生活を大事にしてください」と伝えている。筒井さんは「今後、個人としてできることは『伝える』ことだと思う。震災を忘れず、被災地のことを多くの人に伝えていきたい」と心に誓っている。(斎藤彩伽)



◎函館・北斗 減災対策へ 道が大地震で半壊5100棟、死傷者658人想定

 道が2月下旬に公表した内陸型の大規模地震発生時の被害想定調査によると、渡島管内は函館市、北斗市を中心に建物5100棟が全半壊し、死傷者計658人との結果が出た。函館、北斗両市が独自で想定した被害状況よりも少ない数値となったが、両市とも今後さらに結果を分析しながら、減災対策を進める。

   調査結果は先月23日に開かれた道防災会議で示された。管内別に実在する活断層に基づいて被害予測を調査。昨年3月の十勝、釧路、根室管内の公表に続き、今回渡島と胆振、日高管内分をまとめた。

 渡島管内は北斗市を南北に貫く「函館平野西縁断層帯」をモデルにマグニチュード(M)6・6の地震を想定。震度7の揺れに襲われる可能性があるとし、死者は北斗市26人、函館市6人など計34人に上るとした。重軽傷624人、避難者数1万3548人とした。

 同断層帯は長さ24㌔で、2001年に公表された時点で、今後30年以内に地震発生確率は0〜1%となっている。

 函館、北斗両市とも同じ断層による直下型地震の被害状況を独自で想定。函館市が1997年時点に定めた想定被害は、M6・6の内陸直下型で震度6強の揺れが生じ、建物の倒壊や火災による人的被害としては夏に156人、冬で510人が死亡すると予測。負傷者は夏・冬ともに8878人、避難者は夏で2万7451人、冬で3万2814人とした。

 現在は人口減少などを加味し、地域防災計画では死者、負傷者の数を変えずに、避難者を2万9000人と想定。これを基準として避難所や避難地の指定、食料や生活必需品の備蓄量などを定めた経緯がある。

 北斗市は合併時の2006年前後に想定。屋内にいることの多い夜間の場合、人的被害を死者70人を含む1500人以上と予測している。

 函館市の羽二生智総務部防災担当参事は20日に予定される道からの説明会を注視する考えで、「市の想定の方が被害が大きく、道の想定と差がある。説明会を聞き、内容を分析してから本格的に取り組みたい」とする。

 北斗市の工藤実総務課長は「どちらも大規模災害になりうることを想定しており、日頃から災害発生時の初動の周知・啓発や情報伝達体制の充実化を図り、減災対策を進めたい」と話している。(鈴木 潤、千葉卓陽)


◎函館八幡宮外苑球場 本年度で廃止

 函館市教委は、谷地頭町の函館八幡宮外苑球場を本年度限りで廃止することを決めた。主に軟式野球やソフトボールの試合、練習に活用され、市教委は開設から60年間民有地を借りて運営を続けてきたが、維持管理費が高く、利用者数も減少していることから運営を終了する。新年度予算案では廃止にかかわる施設撤去費用を盛り込んだ。

 同球場は約8800平方㍍の市有地と約4200平方㍍の民有地にまたがって整備。1954年(昭和29)年に旧市民球場(青柳町)の代替施設として設けられ、当初は民有地を無償で借りていたが、58(同33)年からは土地所有者と1年更新の有償賃貸契約を結び、市教委は年間300万円余りを支払っていた。維持管理費が市内他球場よりも高額なため、2012年度の事業仕分けでは「廃止すべき」と判定された。

 単年度契約のため施設の設置条例はなく、利用者にも無料で貸し出していたが、昨年度の利用者は約5600人と、ピーク時の4分の1まで減少。市教委はこれらを受けて利用者団体や土地所有者と廃止を協議し、本年度で土地の賃借契約を終えることで合意した。利用者団体にも2月中に説明を済ませたとしている。

 市教委生涯学習部は「法改正で10年を超える契約があれば公の施設として使用料徴収も可能だが、単年度契約のため徴収ができず、経費も突出していた」とする。新年度予算案では約880万円をかけてフェンスの撤去や民有地との境界確定に向けた測量を行う予定。(千葉卓陽)