2015年3月21日 (土) 掲載

◎観光素材 掘り起こしの成果…JR北海道が着地型旅行商品

 JR北海道は、春から夏にかけての着地型旅行商品「日帰りぷらり旅」の販売を開始した。道南版は大沼や木古内、松前、江差などに向かうプランで、各地の魅力を満喫できるものにした。1年後に迫る北海道新幹線開業を見据えて地域の観光事業者や自治体と連携して取り組んできた観光素材の発掘、磨き上げの成果だ。同社営業部観光開発室は「地域には素晴らしい素材がまだまだある。コースを充実させていきたい」としている。

 プランの実施期間は4月1日〜6月30日の3カ月間。今回、道南では7コースを設定。新幹線開業を控えて内容をパワーアップさせた。

 大沼に向かうコースは、レストランやホテルでのランチと、遊覧船、モーターボートなどのアクティビティメニューを組み合わせた。ランチは大沼牛や王様しいたけ、乳製品など地元の食材をふんだんに使ったことが特徴。「新幹線の乗客のランチ需要は多くなることが予想されるので、レストランなどと新たなメニューの開発に取り組んだ」(観光開発室)という。

 木古内町のコースは、鉄道珍スポットと食に焦点を当てた。境内敷地内に廃線となった江差線の線路がある禅燈寺や、全国でも珍しい新幹線と在来線の分岐ポイント、木古内駅前商店街などをタクシーで回る。同町役場が考案したコースをそのまま採用した。町まちづくり新幹線課は「木古内、本道の魅力を伝えることができる内容に仕上がった」と手応えを語る。

 ほかに松前町や江差町でのまち歩きも地域との連携、協力を強化する中で生まれたコースだ。また、新幹線開業後の16年7月からはJRグループによる大型観光キャンペーン「青森県・函館デスティネーションキャンペーン」が行われることから、青森県大間町に送客するものも加えた。フェリーを使って大間に向かい、ガイド付きのまち歩きとマグロ料理を楽しんでもらう趣向だ。

 観光開発室の宮本貴奈さんは「観光客はもちろん、地元の人にも楽しんでもらえる内容。地域には今回コースに入れることができなかった魅力的な観光素材がまだたくさんある。新幹線開業に向けてコースを増やす中で、どんどん取り込んでいきたい」としている。(松宮一郎)



◎市電722号 解体一転、保存…竹田運輸が購入

 函館市企業局は2月に一般競争入札での売却を中止した市電の廃車車両「722号車」を、市内西桔梗町の竹田運輸(竹田敏美社長)に売却した。価格は鉄くずに準じた3万7000円(税抜き)で、20日に駒場車庫からの搬出を終えた。解体する見通しが一転、新たな地で〝余生〟を過ごすことが決まった。

 722号車は1959〜62年導入の「710形」の1両で、超低床電車「らっくる号」の3編成目導入に伴い、2013年度末で廃車となった。これまで廃車後は鉄くずとして売却していたが、同局は車体ごとの保存活用に潜在的な需要があるとみて、12年度から市内で5年間、静態保存することなどの条件を付けて入札を実施。過去2回の入札では1両の保存につながった。

 今回の入札は1月に公告したが、期日の2月9日までの申し込みがなかった。同社は、入札中止後に初めて車体売却の方針を知り、同局に購入を打診。ほかに購入者が見込めないことから、再公告はせず、入札時と同条件での随意契約での売却を決めた。

 同社は今後、仮置きしている場所から会社敷地内に車体を移設し、社員の休憩場所としての利用を想定している。同社は「解体されると知り、せっかくの函館の資産を残してたいという思いもあって購入した。昔の緑色の塗装に塗り替えることも考えている」としている。(今井正一)



◎大惨事の教訓 後世に…函館大火から81年 利波、松村さん体験語る

 1934(昭和9)年3月21日に函館市住吉町から出火し、当時の市街地の3分の1を焼き尽くした「函館大火」から今年で81年。歴史に残る大惨事だが、大火の様子を知る人は少なくなった。そんな中、利波ヨシエさん(93)、松村キヨエさん(96)はともに記憶をとどめており、防火の大切さを訴えている。

 「よく生き残ったものだ」と話すのは利波さん。豊川町でスルメやコンブなどを扱う海産問屋の長女として生まれた。

 午後7時ごろ、近所の人が利波さんの家に駆け付けて「谷地頭の方が煙で大変だ。反対側に逃げろ」と言われ、12歳だった利波さんはランドセルに勉強道具を詰め込み、住み込みで働いていた人に手をつながれ必死に逃げた。大量の煙の中、どこに逃げていいのか分からず右往左往する人たちを避けながら、弁天町の親戚の家にたどり着いた。

 翌日、むしろ1枚をかぶせられた遺体が大森浜から湯川方面まで、無造作に並べられていた光景は今でも忘れられないという。「これまでの人生で一番ひどい災害。またこのような災害を起こさないためにも、大火を教訓にして市民一人一人が火の用心を続けていくことが大切」と話す。

 「周りを見渡すと建物が焼失し、遠くまで見渡すことができた。函館のまちが狭く感じた」と話すのは松村さん。厚沢部町にある旅館の6人家族の末っ子として生まれた。小学校卒業後、父親の知り合いの豊川町にある海産問屋に奉公に出た。大火発生時は15歳。何も持たずに逃げ「暗闇の中、火の粉が飛び散り、強風で看板などが道路に落ちていて怖かった」。

 松村さんは奉公先の80歳すぎのおばあさんと一緒に、弁天町の知り合いの家に逃げ込んだ。住んでいた家も燃え、ぼうぜんとなったが「被災を逃れた店で服を買ってもらったことがうれしかった」と思い起こす。

 市によると、大火では死者2166人、行方不明者662人、負傷者は9485人に上った。(能代俊貴)


◎ご当地弁当や手作り行灯 桧山振興局が新幹線開業1年前イベント

 【江差】桧山振興局(立花謙二局長)で20日、北海道新幹線開業1年前イベントが行われた。ご当地弁当や手づくり行灯などをお披露目し、開業への機運を高めた。

 立花局長は「これからの売り込みとPRが大事で、一丸となったバックアップに努めたい」とあいさつ。青森のねぶた師の指導を受け、「江差いにしえ資源研究会」(室谷元男代表)がつくった新幹線車両が題材の行灯(長さ3・3㍍×高さ60㌢)がお披露目された。室谷代表は「桧山にもたくさんの人が来てもらえるよう大いにPRし、(行灯を)かわいがっていただければ」と呼び掛けた。

 管内の料理人らが官民挙げて2年間を掛け、7町の食材を盛り込んで完成した「檜山づくし弁当」も搭乗。江差のレストランなどで4月から販売し、振興局のホームページなどで詳細を伝える。

 また、振興局職員による「ねぶたはやぶさ隊」が初出動。小ぶりの行灯に握り棒を組み込んだ“新幹線”の小躍りで、来場者の笑顔を誘った。

 22日に函館市の五稜郭タワーで開かれる開業1年前イベントでも、江差追分のステージが行われる。開演は午前11時半と午後4時の予定。(田中陽介)