2015年3月26日 (木) 掲載

◎公式サイト 来月開設 青函圏・みなみ北海道連絡会議 構成自治体の増加も

 北海道新幹線開業を見据えた各地域間の情報共有を図る「青函圏・みなみ北海道連絡会議」(事務局・函館市)の第2回会議が25日、市役所で開かれた。公式サイト「みなみ北海道・青森イベントインフォメーション」を4月1日に正式に開設することを報告。函館、道南をはじめ、構成各地域の見どころやイベントに加えて周遊コースの紹介など、旅行者目線の情報を発信する。

 同会議は渡島、桧山、胆振、日高、青森県の自治体が参画する広域組織を軸に1月に発足。新たに後志管内の3町で構成するニセコ観光圏事務局のニセコ町、青森県から下北地域のむつ市、奥津軽いまべつ駅所在地の今別町が加わり、構成する自治体は10市36町1村となった。函館市観光振興課の竹崎太人課長は「すべてが一体となるのは難しいが、(自治体同士の)組み合わせで新しい方向性を生むのではないか」と期待感を示した。

 公式サイト(http://www.hokkaido-aomori.info/)は、観光情報サイト「はこぶら」を運営する「シンプルウェイ」(阪口あき子社長)が制作。函館、道南、日胆、ニセコ、青森の地域別情報、月ごとのイベント情報、交通機関の周遊チケット情報などを掲載。新幹線開業関連イベントに特化したカテゴリも設けた。開設後には実際に函館などを訪れた旅行者の体験記を募集する。

 会議では、自治体間の情報共有手段としてメーリングリストを活用することや、市内で9月に開催予定の「はこだてグルメサーカス」への相互参加の呼び掛けがあった。座長の片岡格副市長は「各地域間同士で積極的に連携を深めてもらいたい」と述べた。(今井正一)



◎飛鳥Ⅱ「80回目」の函館寄港 初代から通算

 郵船クルーズの豪華客船「飛鳥Ⅱ」(5万142㌧)が25日、函館港に寄港した。今シーズン1隻目のクルーズ船寄港で、港湾関係者らが歓迎。さまざまなオプショナルツアーが用意され、乗客らは同日夕方までの滞在中、市内近郊の観光を楽しんだ。

 同船は2006年の就航から10年目を迎え、函館寄港は通算33回目。初代「飛鳥」時代から数えて80回目の節目となった。9月にも函館寄港を予定している。

 JTBのチャータークルーズ「春の日本一周」として22日に名古屋、23日に横浜を出発。仙台を経由して函館入りし、京都、愛媛、宮崎に向かう。今回、函館から乗船可能な商品「函館市民クルーズ」が販売され、18人の申し込みがあったという。

 船内でのセレモニーで、函館地区クルーズ振興協議会長の勝木正裕函館運輸支局長は「函館の多くの観光資源、魅力を出港まで存分に楽しんで」と歓迎。函館側から節目の寄港を記念し、北島三郎さんの名曲「函館の女」のメロディーが鳴るオルゴールが贈られた。

 中村大輔船長は「初代『飛鳥』の時代から函館寄港時には船内でいか踊りを楽しみ、飛鳥名物になっている。短い寄港だが十分に楽しみたい」と応えた。

 寄港中、市民船内見学会が行われたほか、出港時には岸壁でいか踊りが披露された。(今井正一)



◎江差出身の佐藤さん搭乗か 父・幸男さん27日にも現地入り

 【江差】ドイツの格安航空会社ジャーマンウイングスのエアバスA320(乗客乗員計150人)がフランス南部で墜落した事故で、外務省は25日、搭乗者名簿に江差町出身の佐藤淳一さん(42)の名前が記載されていたと発表した。乗客乗員の生存は絶望視されており、同町在住の父、幸男さん(68)は「自慢の息子だった」と声を詰まらせた。幸男さんは27日にも現地を訪れる予定。

 幸男さんによると、淳一さんは江差高校卒業後、室蘭工大、同大大学院で応用科学を専攻した後、東京の機械商社「西華産業」に入社。5年ほど前からドイツ・デュッセルドルフの現地法人に出向し、現在は支配人代行を務めている。現地でプラント開発など総合的な業務に携わっていたという。

 関係者によると、25日午前8時すぎに、西華産業から江差の親族に連絡が入った。幸男さんは同日午後4時、江差土地改良区理事長としての用務で出張していた札幌から自宅に戻り、報道陣の取材に応じた。

 幸男さんは「自慢できる息子で一生懸命、一企業で頑張った。立派に育ってくれた。不慮の事故とはいえとにかく残念」と涙をぬぐった。淳一さんは今月7、8日に仕事で一時帰国した際に江差に戻り、昨年8月に67歳で他界した母トシさんの法事の準備をし、一人暮らしの幸男さんを気遣っていたという。

 幸男さんは「親思いの息子。本人は学者になりたかったようだ。息子には夢があった。(海外勤務を)もう1年頑張れと言われ、来年は戻って来られるからと聞いていた」と述べた。淳一さんの妻と子ども2人もドイツに滞在しており、幸男さんは「(来年帰国したら)長男の小学校入学に机を買ってあげようと楽しみにしていたところだった」と唇をかんだ。

 幸男さんの弟、佐藤澄世志さん(65)は「言葉が出ない」と肩を落とす。淳一さんと小・中学校の同級生の由利浩輝さんは「クラス会を開こうと名簿をつくっていたところだったので」と事故に遭ったのが信じられない様子。淳一さんを幼少から知る室井正行さんは「温厚で努力家。親思いでお母さんも本当に彼をかわいがっていた」と話した。


◎新幹線開業 下北・佐井村も熱視線

 【佐井】開業まであと1年となった北海道新幹線を好機ととらえ、観光客を呼び込もうという動きが青函両地域で活発化している。函館と青森、弘前、八戸の4都市は連携を強化し、誘客に力を入れ始めた。青森県の下北地域でも開業への期待は大きく、観光素材の掘り起こしや周遊ルートの開発を急いでいる。人口2300人余りの小さな村、佐井村も開業に熱い視線を送り、誘客に向けた挑戦を続けている。

 下北半島の西側に位置し、大間町に隣接する佐井村は、南北約30㌔に伸びる、漁業が基幹産業の小さな村だ。有名な景勝地の仏ヶ浦を抱えているが、観光資源は乏しく、訪れる観光客の数は年々減少している。

 「20年ほど前は年間約20万人の観光客が訪れたが、近年はその半分の状況が続いている。むつ市の恐山に行った後に立ち寄るパターンが多く、どうしても通過型の観光になる」。観光協会の鹿嶋年男さんは村の観光の現状をこう語る。2010年12月に東北新幹線新青森が開業したが、距離やアクセス、観光商品づくりなどの点で課題が多く、下北半島への誘客は進まなかった。

 そこで下北地域は、北海道新幹線開業で函館を訪れる観光客をターゲットとし、所要時間1時間30分のフェリー大間航路を使って足を運んでもらうという戦略を描く。道南へは新幹線、さらに船旅を組み合わせて売り込む狙いだ。「あとはどう魅力的な商品を造成するかだ」と同村役場産業建設課主幹の宮川洋平さんは話す。

 商品づくりに同村を組み込んでもらおうと、22、23の両日に道南や青森市などの運輸、観光関係者らを招いたモニターツアーを実施し、観光資源の発掘や検証を行った。

 参加者は福浦地区で約120年前から漁師が世襲で伝えてきた漁村歌舞伎の特別上演や、同じく矢越地区に伝わる歌舞伎を見学。ほかに仏ヶ浦を見たり、漁協の水産加工場などで加工体験をしたりするなど村が提案する観光メニューを体験していった。

 歌舞伎は地域の伝統を肌で感じることができるとあって参加者には好評。一方で「周辺自治体との広域連携で商品化すべき」という意見もあった。ツアーに参加したJR北海道観光開発室の宮本貴奈さんは「宿泊施設が少ないなどの課題はあるものの、観光素材の新しい発見があった。商品づくりに役立ちそう」と感想を語る。

 観光資源が少ない同村だが、明るい材料がないわけではない。昨年夏には村の主婦8人がまち歩きのガイドグループを結成。平均年齢は60歳を超えるが、地元住民目線の案内が評判を呼んでいる。宮川さんは「北海道新幹線開業は佐井村にとっても大きなチャンス。仏ヶ浦や特産のウニを目玉として売りつつ、新たな観光コンテツを増やしていきたい」と力を込める。(松宮一郎)